第150話 囚われのリヒター修道僧

北アフリカのチュニス

其処は古代ローマに滅ぼされたハンニバルのカルタゴのあった地の近隣

金銀だけでなくコーヒーなどの珍しい物品に


今はイスラムの海賊たちなどもがたむろして、奴隷販売なども扱う港町でもあった。

人種を問わずにいる哀れな奴隷たち


「金が足らないな ご希望の半分の人数以下か」冷たく奴隷商人が言うのであった。


「そんな」「約束が違う!彼等を解放してください」

修道会の者たちが悲鳴のような声を上げる。


囚われた者たちを解放する為の集めた寄付金だったが

奴隷商人は残酷にも値段を釣り上げてきたのだ。


「ならば、また金を集めてくればいい ひとまず、人数分を選べ」

にやにや笑いながら奴隷商人の言葉だった。


「すまない必ず助けに来るから」そう言葉をかけて

手当の必要な者にそこで可能な治療

食料などを手渡す。


「お願いです 私はいいから弟を‥」「だめだよ姉さん」

「弟は病があるのです だから」

「だめだ 此処にいれば姉さんがどんな目にあわされるか」

まだ十代の幼さの残る姉弟たち


息を飲み込み、修道僧の中にいた一人、リヒター修道僧はひと時、目を閉じた後で

決心した。


「私が残ります 二人とも連れて行ってやってください」

「リヒター様」「リヒター修道僧 いけません」修道僧たちが慌てて口々に話す。


「身代金 いえ、見受け金を残りの彼等と共に待ってます」

リヒター修道僧は微笑する。


そうして奴隷とされた哀れな貧者に攫われた《さらわれた》者たち

彼等と共にリヒター修道僧は残ったのだった。


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