第146話 第二章 グランドマスター ヴァレッタ総長

「砦の一つがついに墜ちてしまったか」

三つの砦、マルタ包囲戦の中で崩れゆく聖エルモ砦が落城する様を見ながら

ヴァレッタ総長 グランドマスターが絞り出すような声で呟いた。

砲撃は鳴りやまず 

膨大な数 大砲の砲撃で丘あるいは低い山は平地となった処さえもある。



そうして

話は少し前へと戻る。



海戦から長い月日がたち‥それから 


激戦となるマルタ包囲戦 

その時に新たに総長グランドマスターとなったのは‥


「前の総長から引き継ぎとなった これからよろしく頼む」

語学が堪能なヴァレッタ総長は 

スペイン、イタリア、フランス各地から集まった騎士たちにそれぞれの言語で

挨拶をする。

「前の総長 スペイン人から次はまたフランス人の総長」誰かが呟く

「ヴァレッタ様なら安心だ」


挨拶がひとまず終わり、席につくヴァレッタ総長

そこに‥

「飲み物をどうぞ グランドマスター おめでとうございます」

ワイングラスが置かれる。

目の前には少年 下働きの者らしきもの

長い黒髪を一つに束ね 青い瞳で微笑んだ。

「君は‥?」「シオンですよ お忘れですか? ふふ」



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