第146話 リュートと船室のリラダン総長とヴァレッタ隊長


それは数日後の事だった‥。

「間もなくマルタ島」ヴァレッタ隊長が呟くように言う。


船室 そこには大きな怪我を負ったリラダン総長がベットの中にいる。


ベットの上で横になっているリラダン総長の傍、椅子に座って

見舞いに来たヴァレッタ隊長 ジャン・ド・ラ・ヴァレッタ

そうして二人は会話をしていた。


「ああ、そうだな隊長‥ジャン」

「リラダン総長‥フィリップ 君の身体の方は大丈夫か?」

ヴァレッタ隊長の心配そうな問いにリラダン総長は‥


「あまり良くないな やはり長くは持たない気がする」

青白い顔色の悪いリラダン総長は微笑んでそう答えた。


「そんな悲しそうな顔をするなジャン」

「海戦でのその後の話を教えてくれて有難うヴァレッタ‥いや、ジャン」


「地中海で残ったのはキプロス島にクレタ島と我々のマルタ島などの一部だけだ」

「何としてもマルタ島を守らねば マルタ島の位置は中間点 あれは防波堤だ

マルタ島が墜ちれば次はイタリア本土か それとも‥」


「グランドマスター」

「大丈夫だ ジャン・ド・ラ・ヴァレッタ隊長 君たちがいれば必ず乗り切れる」

そっと震える手でヴァレッタ隊長の手に頬に触れる。


「ところで‥シオンはあの吟遊詩人の魔物は?

確か あの海戦でも姿を現したのだろう?」ヴァレッタ総長


「吟遊詩人?シオン?誰だ」不思議そうな顔をするヴァレッタ隊長


ハッとした表情を浮かべた後で黙り込むリラダン総長 彼は小声でつぶやく

「また記憶を消したのかシオン 覚えているのは私だけか?」


「ん、何か言ったか?総長」「なんでもないよジャン」


「そういえば 奇妙な事に私の船室にリュートがあるのだ

あれは楽師か吟遊詩人などの持ち物だな」ヴァレッタ隊長


「そうか‥ふふっ」「フイリップ?」


「ジャン、ヴァレッタ君 

それは大事に持っているといい あれは幸運を呼ぶ 魔物の持ち物だが」


「えっ?魔物?」「大事に持っておけ ジャン」

「それからお茶を頼んでもいいかジャン」「あ、ああ」


そうして二人は束の間の休息の時を過ごしたのだった。





第一章 了


※第二部の合間に短編・外伝が入ります


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る