第133話 スレイマン大帝 ソロモン王と同じ名の皇帝

リラダン総長の意識が何処ともなく飛んで行く


其処はオスマン帝国 

ボスポラス海峡の海 東西を分ける海峡の地

イスラムの覇者となった帝国


アラベスク文様で彩られた美しい王宮の一角


「海戦ではこちらの勝利は間違いないようだな」

軽く笑みを浮かべるスレイマン大帝


「はい、偉大なる大帝 スレイマン様 

ソロモン王と同じ意味の名を持つ大帝様」使えるものの一人 


「海戦にはヴェネチアだけでなく

教皇にスペイン王、ハプスブルクの皇帝も参戦しているらしいが

我らの敵ではない」スレイマン大帝は満足そうに笑い、飲み物を口にする。


「最近、気になることが‥」傍近くにいた妃のヒュレカム


ヒュレカムが目で合図して傍付きの者たち、召使たちが席を外す。


「そなたの心配はわかるヒュレカム 

大宰相アブラハム、私の幼き時代からの友でもあるが 

最近は増長がとてもひどくなっている それから‥」


「ええ、軍を掌握しているムスタファ皇子ですけど」

そうして言葉をはさむヒュレカム


「反乱でも起こすと‥?」スレイマン大帝


「わかりません」ヒュレカム


しばしの沈黙、スレイマン大帝は妃のヒュレカムに

「少し、一人になって考えたいが」「わかりましたスレイマン様」


私は皇帝になる為の定められた『兄弟殺しの法』をせずに済んだ

だが、もし反乱が起これば?

我が子を殺すのか? 戦では沢山殺した それは皇帝の務めでもあるが‥


「スレイマン大帝 我が子殺しをするとはな

ロドス島包囲戦で会った時の寛大さは何処に行った 

講和条約で寛大さを示した皇帝は?」


「皇帝、若い皇帝だった時

あの頃は敵である騎士団に島民への寛大さがあったが 

年を取り手を血に染めて残酷になったか?」


何処からともなく聞こえた声にハッとするスレイマン大帝


少し離れていた処に立っていた男を驚き見つめるスレイマン大帝

「お前はあの時の‥ロドス島で出会ったリラダン! 騎士団のグランドマスター」


「いや、生きている人間ではない、以前にも近い事がった

怨念に囚われた死人だ お前は死んだのだな!」 


「お前を見て感じる‥この悪寒!死人の顔色」


近くにあった円月剣で切りつけるが

剣はリラダン総長の身体をすり抜け、総長は薄くなって消え去った





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