第87話 食事と忘れられたワイン

はぐはぐはぐ・・ぱくぱくぱくん

見事なまでの食べっぷりであった とある二人の魔物

見た目は綺麗な少年と少女の二人


何も言えずに見つめるヴァレッタ隊長と

改宗ユダヤ人で 今は看護師マーニャ 

ちなみに此処はマルタ島の騎士団の病院で総長や隊長達の個室


「あ、すいません お茶のお代わりいいかしら?それに果実のジュース

ああ、白パン、美味しい美味しいな白パン 鶏肉か兎肉と野菜包みのパイもいいな~魚のスープも」チラリと見ながらおねだりするかのように

ねちっこい感じの笑顔なサラが 寄越さねば悪さをしてやるとばかりに

気弱そうな看護師のマーニャを見る

「う・・は、はい」身体を引きながらも返事してしまう正直で優しいマーニャ


「すいませんマーニャさん 僕にも良いでしょうか?」ニコニコ笑顔のシオン


「はい、ただいま持って参りますね」そう言って部屋を飛び去す看護師マーニャ


「お前たち 久しぶりに会ったと思ったら食事のおねだりとは‥

此処は普通の人間の為の施設なのだが」

やれやれという表情のヴァレッタ隊長


「僕らもお腹がすいて大変なんです 人間を食べてもいいですが」シオン

「……」「あきれた顔で睨まないでください」そう言いながら 

立ち上がり本棚の奥にあったワインを取り出して3つのカップにコポコポと注ぐ

年月が醸し出した芳醇の赤ワインの香り

「どうぞ」「む・・」

つい手を出してゴクリと飲んでしまうヴァレッタ隊長


「これはまるでリスが隠した木の実を忘れてしまったままのような

リラダン総長グランドマスターのワインですね」

「………・」「どうしました?」

青くなっているヴァレッタ隊長


「大丈夫ですよ 完全にリラダン総長は忘れてますから」「本当か?」「ええ」

「嘘ではないな」「はい」その言葉に安心したようにワインを飲む

「チーズや果実も欲しい処だな」「そうですね」にんまり笑い合う


「僕らも飲もうね」「うん、シオンちゃん」


忘れられた高価なワイン


細やかな宴なのかも知れない



22・6・14 満月 前後より~~


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