第23話 奪われた食事と魔物の少女

オスマン帝国のトプカプ宮殿


海戦の時に出会った 魔物 青い目の魔物(ジン)

そんな彼女と目があった


「こんにちは」そう言ってにっこりと女官姿の少女は笑う

「また お逢い出来るでしょう うふふ」


「お前は一体?」「え、ご存じでしょう 此処では女官に過ぎませんわ」

「サラです 私の名前は 今はサラ」


風が吹くと彼女の姿はない


「幻影なのか?」戸惑いながら 宮殿で滞在中の部屋に入ると


先程の魔物の少女がいるではないか!


「うふ 貴方様のお部屋ですのね あ、美味しいです この料理」


当たり前の顔をして 彼の為に用意されていた食事を食べている


「お、お、お前は 私達のガレー船 小型軍艦に穴を開けて

更には 何故、私の食事を召し上がっているのだ!答えろ魔物(ジン)」

少し混乱気味である 当然だが


「海戦では そんな事もありましたわね」

うんうんと頷きながら 当たり前のように食べていた


「・・・・・・」後は絶句する若い男


「で、 とっても美味しいです 料理」

もぐもぐ パクパクとそれは嬉しそうに召し上がっている 少女サラ


何気に 胸元を強調するような衣装に着替えていた 小ぶりだが胸の谷間が見える

あざとい・・作戦かも知れない


「・・まあまあ、海戦の時は助けてあげたじゃないですか」


「確かに 海に落ちた時に 身体が浮かび、味方の船に・・」


「でしょ、でしょう うふん」


「あ~美味しかった」そう言いながら 

今度はトルココーヒーやらチャイやら飲んでいる

目の前には ほとんど食べつくされた豪華な料理だった残骸


「また 遊びに来ますね では~」嬉しそうに微笑む


「おい!!」「ではまた 未来の大提督 ウルグ・アリさま」


「え・・今 なんと?」


彼女の青い瞳が異様な光を放つ

「・・イタリアの海沿いの村で浚われて ガレー船の漕ぎ手の奴隷だった少年」


「でも 貴方には 輝かしい未来があるから うふふ」


「ご馳走さまでした うふ」

小悪魔のような笑顔を見せて 消え去る少女


「わ・・私の食事を返せ!」若い男は怒鳴った



※イタリア生まれで神父になるつもりだった少年は

浚われてガレー船の漕ぎ手となりますが 才覚を見せて

船の船長に気に入られて やがて船長の娘を娶り 軍人、海賊として

大出世を遂げる事になり マルタ島の激戦でも 司令官の一人でしたが

無事に生き延びる事になります






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