1月24日 白井冬至朗の日記

 やはりミドリカワの様子が変だ。ケータイの充電が切れている間に着信があった。それも一度ではない。二度でもない。着信履歴が埋まるほどで、よく見るとひどいときは一分おきに電話してきていた。かなりまずいことが起きたに違いないとビクビクしながらかけ直すと「なんでもない」ときた。そんなわけないだろ、だったらなんでそんな泣きそうな声なんだと言ったら、たぶん、そこで壊れてしまっただろう。かといって、うまい言葉も見つからなかった。アオの話じゃ、会ったときには別に普通だったというけれど、信用できない。アイツは鈍感野郎だ。もしかしたら、アオがなにかしたか言ったかしたんじゃないのか。心当たりがあるから隠しているとまでは思わないけど。ただ単純にアオと話した後でミドリカワになにかあったと考えたい。まぁ実際そうなんだろう。アオとミドリカワはそんなに親密じゃない。ミドリカワのほうは距離を縮めたいのだろうけど。そうか、それなのにミドリカワのほうからアオに話しかけに来たというのは、やっぱり、アオに会う前になにかあったんだろう。まずオレに救いを求めに来たが、電話がつながらなかったからアオを頼ったんだ。アオを頼るとは、よほどのことだろう。酔わせて口を割らせるか。それも卑怯だ。下心があるとでも思われてみろ。大変なことになるぞ。それは避けろ。やっちゃいけない。なんとなくだが、予知夢の実現を阻むのはミドリカワがカギな気がする。というか、ミドリカワの行動が今、モモノがアオを刺すという事態を呼び込んでいる気がする。マークするのはアイツか。またやったと噂の猫事件の犯人か。それとも別のところから急に飛んでくるのか。あと一週間だ。結局、この三週間でなにもできてないオレになにができるんだろう。警察に保護を求める? いや、夢の話だぞ。信じるわけがない。たとえ真に受けてくれたとしても、民事不介入だ。絶対に警察は動かない。

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