1月13日 白井冬至朗の日記

 今さらオレには関係ないが、そういや成人式だったんだな。若い奴らがうらやましいようなそうでもないような。おととい見かけたバカみたいなのも考えものだが。今日はアオを呼び出す。なんか資格でも取るのか勉強してるらしい。なかなか出てこようとせず、ついにやむをえず嘘ついて呼び出す。まさか借金を口実にするとは。そうでもしないと来なかっただろう、やつは。ちょっと罪悪感。ちょっとだけ。就職に不安を持ってるんだろうな、きっと。こんな世界だし。人のこと言ってられないけど。こっちは婚活にたとえりゃバツイチどころか、バッテン二つついてるようなもんだ。浪人に留年なんだから。にしても、あいつなんの資格とろうってんだ。宅建か、FPか。公認会計士とか社労士とかじゃないだろうな。司法試験だったら無謀だからやめろと忠告してやろう。いや、本当にやる気なら生きてるならやらせてやるか。なんか人生賭けてるみたいだし。そのためにも生きてもらわないと。呼び出しの目的は探りを入れることだったけど、失敗。ミドリカワが割り込んでこなけりゃな。あいつ、最近、妙に積極的だ。あいつに夢のことを話したのはやっぱり間違いだった。あいつをあおって強引に仕掛けさせてアオに嫌われるように、無意識だけどオレは罠を仕掛けたんだろうか。オレはオレのこともわからない。オレのくせに。


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