1月9日 白井冬至朗の日記

 オヤジに電話して、それとなくおばのことを聞く。おふくろが出たら適当なことを言って切るつもりだったけど、運がよかった。おふくろは妙に勘が鋭い。いきなり、おばの話をしたらあやしく思われる。心配して騒ぎ出されるとめんどくさい。一応、病院だか老人ホームだかそういう施設で生きているらしいが、痴ほう症がひどいらしい。会いに行くという選択肢はこれで消えた。まともに話もできないなら会う意味がない。オレならばひょっとするとおかしな能力を持つもの同士で話ができるんじゃないかなんて甘い考えもよぎったけど、現実には厳しいだろう。ドラマじゃないんだ。テレパシーでおばがメッセージを送ってくるとか、オレが相談に来ることはもうおばは予知しているとか、妄想していたぶんざいでドラマじゃないんだなんておかしいけど。アオを守らないと、そうしないとやつが悲しむ。それは厭だ。別にアオが死んでもいいということじゃないけど、白状すればオレはアオのことはそんなに大事に思っていないのかもしれない。誰にも読まれない日記だから書いた。こすると消えるボールペンで日記を書いてはいけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る