第40話 どんなに大きな数字を掛け合っても、0を掛けちゃ合計は0なんですよ!

 前回までのあらすじ


 発狂、失踪後に路上で絵を描いている時に”詩人A!と偶然出会ったGhost。なにやら胡散臭い雰囲気がプンプンな男でしたが、来るもの拒まず精神で受け入れてしまった結果、面倒ごとが増える事に……。




〇Ghost。新作詩集を売るためのイベントの企画を打診される。


 詩人Aとの出会いの数日後のこと。

 いつものように路上に出て絵を描いていると、再び詩人Aがやってきました。その日は彼一人ではなく、彼の奥さんと、まだ2、3歳の息子さんと一緒でした。




《プロフィールから抜粋》

○詩人Aの奥さん


 美人でしっかり者な人。詩人Aからはモラハラや精神的DVを受け続けていた。

 正直、見ていて辛いヤツ。胸糞悪し。


 さて、この日やって来た詩人Aには目的がありました。自身の新作詩集の発売に伴って大きなイベントを一つ企画したいのですが、その手助けをしてくれる人を探していたようです。

 で、その標的にされたのが僕……と路上アート集団Aだったというわけです。

 だが、しかーし。さすがの僕も、ちょっと胡散くせぇんだよなぁ、この人。と思っていたので、協力するにしても路上アート集団Aの面々を参加させるのは信用できると確証が持ててからにしよう、と腹の中では考えていたのでした。

 ”ウチの若いもんに煮え湯を飲ませるようなことは出来ん!!”と思ったわけです(/・ω・)/


 ま、結果だけ言ってしまえば僕個人と、他数名の作家が詩人Aの企画に関わりましたが、路上アート集団Aは関わらなかったです。つまり、最初から最後まで胡散臭いの、この人!


 とにもかくにも、どんな企画を構想しているのか聞いてみない事には話は始まりません。


Ghost

「それで、どんな企画考えてるんですか?」


詩人A

「ヤ〇ダ電機の本社ビルにある大ホールを貸切って、詩の朗読会とかワークショップとかをやりたいんだけど……」


Ghost

(いきなり、スゲー場所に乗り込もうとしてんな……)


詩人A

「前にも、同じ場所で企画をやろうとしてね、役員会議さえ通ればイベントが出来たんだけど、その時は上手く行かなくてさ。けど、当時の店長さんとコネが出来たお陰で話しも通してあるから、今回は上手く行くと思うよ」


Ghost

「あー、段取りは出来てる状態なんですねー」


詩人A

「そうそう、そうなんだよ」


Ghost

(ほ、ほんとかー?)


 さて、詩人Aからの相談を完全に信用したわけではありませんが、企画の内容からしてどう考えても僕一人ではキャパオーバーです。なんたって詩の世界は門外漢。

 演劇や音楽ならまだしも、これから企画書を書いてヤ〇ダ電機本社でプレゼンをしなくてはいけません。うーむ。知らない事ばかり。


 さて、この日は詩人Aの話は持ち帰る事にしたのですが、何故だかこの話しを知っていた役者Aから夜に電話があります。

 その口ぶりからして、役者Aはあまり乗り気ではないようでした。けれども、様子を見て参加するか否かを見定めたいそうです。うーん、相変わらず打算的な男である。


 これでは埒が明かないと思い相談したのが小説家Aさん。

 当時、小説家Aさんは電子書籍の出版社を立ち上げ、それと同時に海外のメタルバンド(その界隈では結構有名なネオクラ)のCDを国内流通を請け負っていたり、ミュージシャンBが所属したりと幅広く活動していました。ま、ミュージシャンBは不良債権押し付けられた感はありますが(/・ω・)/


 さて、小説家Aさんに相談したところ、


小説家A

「へぇ、面白そうですね。一枚かませてくださいよ」


 と思いのほか好印象……というか、まだ詩人Aに会っていないから純粋に面白そうだと思えたんだろうなぁ(/・ω・)/




〇そして集まってきた変態たち。


 某日、某駅にてGhostと、小説家Aさん、役者A、詩人Aとその奥さんが集まり、近くの喫茶店で打ち合わせをする事になりました。

 ま、いつも通り役者Aは遅刻してきたのですが(/・ω・)/


 そこで詩人Aが計画しているイベントの内容を具体化していく事となりました。ザックリとした内容は、

・詩の朗読会(詩人Aによる)

・詩と絵本のワークショップ(路上アート集団Aによる)

・詩と現代舞踊のコラボ(詩人Aと役者Aによる……現代舞踊?)

・演劇(役者AとGhost&小説家Aさんによる脚本)


 といった感じ。

 なんだか詩と関係ない物も多く混ざってんなぁと感じたのですが、詩人Aの奥さん曰く、


詩人Aの奥さん

「詩の朗読って、本っっ当に退屈なんで! いろんな方の協力がないと、お客さんが寝てしまうんですよ」


 こう言っちゃなんだけど、それは僕もそう思う(笑)


 それにしても僕の印象としては、国内最大手の電気量販店でやるイベントにしてはという感じがしていました。

 正直お固すぎて敷居が高いし、かといってキャッチーな方向に転換できるような内容でもない。

 ぶっちゃけ、詩人Aの書く現代詩は、よく言えば前衛的すぎて。悪く言えば詩だったので(/・ω・)/


 これの何が問題と言えばという事。

 僕の懸念は小説家Aさんも感じていたようでしたが、当の詩人Aは、


詩人A

「大丈夫、大丈夫。前の店長さんが話し通してくれてるらしいから。コネって大切だねぇ」


 といった感じ。うーん。ここ一番重要なとこじゃないの?(/・ω・)/




 この後、小説家Aさんが企画書を制作する運びとなりまして、僕はイベント時に使う脚本の草稿を練る事に。役者Aは準備段階では特にやる事はなく、そしてなぜか話しの中心にいる筈の詩人Aも何もしない。今思うと、お前が企画書書けよ!


 余談ですが打ちあわせ終了後、僕たちは文学談議をしていました。ここで詩人Aが話していたことが、今でも記憶に残っています。

 詩人Aは何かのきっかけで某ノーベル文学賞作家さんと知り合いになったそうな。詩壇? 文壇? ペンクラブ? 的な団体でそれなりに親しく? していたそうですが、


詩人A

「ここだけの話しなんだけど」


 と前置きを置いてから詩人Aは某ノーベル文学賞作家さんについて話し始めました。


詩人A

「○○先生、実は御病気で余命僅からしいんだよね」


Ghost

「えー、マジかよ!」


 結構その作家さんの癖の強い文体が好きな僕としてはショックを受けた事を記憶しています……それから月日は流れて……。


 十数年後の現在。


Ghost

「○○先生、まだ生きてんじゃん!!」


 はい。例の如くガセネタ掴まされたのでした(/・ω・)/

 なんか今思うと、別に詩人Aは某ノーベル文学賞作家さんと知り合いでも何でもなくて、ちょっとすれ違ったとか、同じ会場に居たとか、その程度の関係だったんじゃないかなぁ。


 他にも、


詩人A

「この間、Twitterで呟いたらソフトバンクの孫さんが押してくれた。これで孫さんが味方についたようなもんだね」


Ghost&小説家A

(は?)


詩人A

「この間、宇多田ヒカルさんにTwitterでされたんだよね。あー、ボクもヒッキーとコラボしたいなぁ」


Ghost&小説家A

(うん。純粋にきもちわるい)


 などなど四十歳を過ぎたオッサンとは思えない、頭の中お花畑な発言を連発。

 つーか、嫁を働かせて、子供の世話も押し付けて、自宅に籠りっぱなしのお前がヒッキーやんけ(/・ω・)/


 何やら雲行きが怪しくなって参りました。

 ボクも小説家Aさんも内心では(大丈夫か、これ?)と頭に過ったのですが、これは乗り掛かった舟……そして詩人Aの


詩人A

「前の店長さんが話し通してくれてるらしいから」


 と言う言葉が本当であることに期待して、プレゼンの準備を進めるのでした。




〇いざ、営業へ。


 さて、この後、ヤ〇ダ電機本社でプレゼンを行わないといけないわけですが、相手さんはまともな企業。そこで働く方々も真っ当な社会人。そこへ営業に行くわけですから、郷に倣わば郷に従え。スーツ着用、清潔な格好で赴くというのがスジという物です。


 まぁ、こういった身だしなみは時代によって変化するもの。最近はそれほどうるさくないので髪染めてたり、ラフな服装であったりしても結果を出せる人間なら良いんじゃないかなと思いますが、十数年前の地方都市では、まだまだタブーだったのですよ(/・ω・)/

 脱線するけど、何で胡散臭いビジネスマンのオッサンってみんなオダギリジョーのコスプレしてんの?


 というわけで、僕は役者Aに釘を刺しておりました。


Ghost

「プレゼンの時、絶対スーツで来いよ。向こうさんは仕事で俺たちと会うんだから」


役者A

「いやでも、俺役者だから……ごにょごにょ」


Ghost

「あぁん(# ゚Д゚) それは、お前のルールだろ? 俺らは、お客さんじゃねぇんだから、お前のルールを相手に押し付けんな!」


 役者A,一応保険会社で営業の仕事をしていた経験があるとか言ってましたが、ホントかよ(/・ω・)/ まぁ、どうせ入社して数か月で辞めたとか、そんな感じだろうけど。




 といった感じでプレゼン当日、みんなスーツで集合しましたよ。けれども役者A…… どこまでアホなんだコイツ(# ゚Д゚)


 さて、そんなこんなでヤ〇ダ電機本社にあるバカでかい会議室にいざなわれた僕たちは、本社の店長さんにプレゼンを始めるわけですが、ま、最初に落ちを言ってしまえば結果でございました。あふん。


 そもそもですね、詩人Aが言っていた、


詩人A

「前の店長さんが話し通してくれてるらしいから」


 と言う話について店長さんは


店長

「そんな話しは聞いてないです」


 でお終い。顔がポカーンてなる詩人A……というか、僕らもポカーンですよ(笑)


 僕らが提出したイベントの中身、コンテンツについては特別ダメ出しはなかったのですが、


店長

「集客は出来ますか? 正直、集客さえできれば、よほどの内容じゃない限り大丈夫なんですけれど……」


小説家A

(だよねー)

Ghost

(ですよねー)


 詩人Aの思惑が外れ、そして僕と小説家Aさんの懸念がクリティカルヒット!

 劇団A組の集客数はそれなりに増えてきていたのですが、そこでの集客を踏まえても大手家電量販店本社のイベント会場のキャパは大きすぎる!!


 このプレゼンの日から十数年後、小説家Aさんとこの日の事について話しをする機会がありました。


小説家A

「あの時のプレゼン、勉強にはなったけれど、もうちょっとどうにかなんなかったかなぁって思うんですよね」


Ghost

「そーなんですよね。段取り自体は悪くなかったと思うんですけど、正直、誤情報が多すぎてプランが何にも役に立たなかったですからね。そもそも詩人Aの詩というコンテンツが良くない」


小説家A

「根本的問題! でも、たしかにあれじゃ集客できませんね(笑)」




 さて、こんな感じでプレゼンは絶望的状態。とは言え、相手の店長さんは立派な社会人です。こんな世間知らずの若造とオッサン連中なんて門前払いで、おまけに塩撒いても良いような物なのに、ビジネススマイルを携えて、綺麗にプレゼンを終わらせようとしてくれてます。お、大人やぁ……。


 僕と小説家Aさんは

(今回は無理かな?)

(ま、次に生かせるとは思いますよ。問題点と改善点はわかりましたから)

 といった感じにやり取りしてたのですが、こう言うところで空気を読めないのがブラック・アーティスト詩人A。


詩人A

「あのですね。先日、ソフトバンクの孫さんが僕のツイートに『いいね』してくれたんですよ。孫さんが動いてくれれば状況は変わると思うんですよね」


 この悪あがきには店長さんも失笑。そりゃ、そーだ。


小説家Aさん

(いやいや、Twitterで『いいね』押しただけで、そこまで手伝ってくれるわけねーだろ。黙ってろよ!)

Ghost

(オワタ/(^o^)\)


 といった感じでプレゼンはお開き。

 オワタ/(^o^)\




 さて、この後に某駅内にあるフードコートで昼飯を喰いながら反省会をしたのですが、ここでの役者Aの態度に僕ブチギレ。フードコート内で怒号を響かせるくらいにブチギレ。ちなみに声を荒げてキレるのはいつ以来かわからないくらい久しぶり(/・ω・)/

 けれど元デスメタルバンドでボーカルをやってた物ですから、何分怒鳴り続けても声が枯れない。延々と怒鳴れる。こんな所で過去の経験が役に立つとは(/・ω・)/


 ……それにしても、あの日は何にキレたんだったっけなー(笑)

 たしかプレゼン中も相手の店長さんに対して食って掛かるような態度を取ってた役者Aに腹が立ったんだと思うけれど(『社会人経験ねーだろ、お前!? おぉん!?』みたいなこと言ってた気がするー)、役者Aのクズ&アホっぷりは置いておいて、どちらにせよ当時の僕の心理状態が正気でなかったことが垣間見えます。


 今ならね、わかるけれど、イライラしてキレるとかコスパ悪いじゃん(/・ω・)/

 イライラさせられる相手からは光の速さでトンズラして、空いた時間でボランティアかバルーンアートでもしてた方が(つまり、誰かを楽しませる、喜ばせる)人生楽しいよ、と今の僕は当時の僕に伝えたい(/・ω・)/




 まぁ、なんやかんやありまして大手家電量販店さんでのイベントは役員会議の議題にまでは上がったそうですが(詩人Aから聞いた話しだから眉唾だよ(/・ω・)/)結局は完全に企画倒れ。プレゼンについてもリベンジする事もなく、この話しは完全に消滅します。


 この一件で詩人Aとの関係も途切れてくれればよかったのですが、悪縁とはなかなか切れないから悪縁というもの。

 詩人Aはしばらく僕に……というか主に小説家Aさんに寄生することになります。

 まだまだ濃厚に絡んで来るヤバいアーティストのお話はまた次回。


 to be continued(/・ω・)/

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る