第5話 いきなりの展開

「これ…なんですか?」


橋渡が机の下を不思議そうに見て言った。


「何かあるの?」


風が聞くも、橋渡は黙ったままそこを見ている。


さっきまでのわちゃわちゃとした空気はどこへいったのか。いきなりの発言に室内は静まり、全員に緊張がはしる。


「な、何があるんだよ…何とか言えよ。」


天晴が席を立ち恐る恐る橋渡の席、机の下へと近づいていく。


そして見る。


「んぎゃぁあああ!!」


あまりの悲鳴の大きさに窓がカタカタと音を立てる。


「無理無理無理無理!俺ああいうの無理なんだってば!」


真横で受けた悲鳴の衝撃により椅子ごと転けた橋渡の事などお構い無しに、早くも天晴は部屋の隅で小さく固まっていた。


「星陽君!?大丈夫?」


宇乃が転けたままの橋渡に近寄る。


そしてついでに見る。


「わ、びっくりした!」


悲鳴をあげた天晴の反応には全く届かないほど薄い反応だった。


「…なんでそんな…冷静でいられるんだよ。」


「天ちゃんがビビりなだけでしょ。で、結局下に何があるの?」


宇乃はそれを手で掴み、橋渡を除いたあとの5人に見せる。


「ひっ!や、やめろ…見せるなぁぁあ!」


「なーんだただのゴキブリじゃん。天ちゃん虫苦手すぎでしょ!」


「ていうかこれ、おもちゃですよ。」


机の下にいたのはただのおもちゃのゴキブリだった。


「は!? 偽物!?」


ずっと隅で固まっていた天晴の力がようやく抜ける。


「あ、これ何か紙がついてますよ!」


宇乃が気づいたのはおもちゃについていた手紙だった。

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