第71話 地下牢
ジークが3人を引きずって、地下室まで向かう。ノアールは、その上にソリのように乗っている……
『ニャ~ン(これ、楽しいね~)』
立ち塞がる兵士達を、王子が必死に止める。が、兵士達は声が聞こえているはずなのに攻撃して来る。そして、ルシーに魔法でなぎ払われる。
「王子の言うことって、聞かないものなのね」
それを見て、思ったことを口に出してしまった。
「ううっ……」
ルーカス王子は俯く。あっ、気にしていた? 少し、心を折ってしまったかな?ごめんね~、男の子って繊細だったりするのよね……
「ミーチェ、兵士達が手柄を上げたいと思うのはしかたないよ。腕に自信があれば尚更だよ」
「そうなのね。腕に自信がある人が、言うことを聞かないのね」
「腕に自信がある者は、私が相手をしてやる。問題ないぞ」
『ミャ~オ!(主~、楽しそう~。僕も相手をするよ~!)』
2人は、意気揚々と兵士達の相手をする。
「聞いても……良いか?」
王子は、遠慮がちに聞いてくる。
「なんだい? 僕に聞いて。僕に答えられないことは、僕がミーチェに聞くからね」
ジーク、それ面倒よ。
「ああ、分かった……カミラ達をこれからどうするのだ?」
「僕が受けた待遇を、そのまま受けてもらうそうだよ。まず、地下牢に僕が監禁された日数入ってもらう。<港街オース>からだから、結構な日数になるよ。後は、毒と媚薬入りの食事もね」
「そんなこと、出来るわけがない!」
ルーカス王子が、ムキになって言う。
「出来るかどうかなんて、見ていればいいよ。僕も、ミーチェがどうするのか楽しみにしているんだ。フフ」
「禍根は、残さない方が良いのだが……ミーチェは優しいな、私なら、すぐに息の根を止めるぞ」
『ニャ~ン(ミーチェは怒ったら怖いよ~)』
王子の相手はジーク達に任せて、私は王女の罰をどうするか考える……
ジークが囚われていた地下牢に来た。
「ジーク、誘拐犯の王女をジークの入っていた檻に入れて」
「ミーチェ、ここは穴が開いているけど、いいのかい?」
「うん。石壁を作るから、大丈夫よ」
王女を檻に入れてもらう。そして、隣に護衛達。土魔法で迷宮の小部屋のように石壁で部屋を覆う。3つの石壁の部屋を作り、顔だけ見える位の小窓を作って王女達の結界を解く。
「誘拐犯の王女、ここでジークに与えた痛みを味わってください」
「うぅ、痛い……な! ここは何処? 出しなさい! お前! 王女に、こんなことをしていいと思っているの!?」
「うるさいな。ミーチェの説明が聞けないではないか。黙れ」
ルシーが手を動かし、魔法を掛けたみたい……王女が静かになった。2人の護衛も、静かだと思って見たら気を失っている。
「……、……!」
王女は、何か言っているようだけど聞こえない。
「ル、魔人さん、凄いですね。難しそうな魔法を簡単に……」
『ミャ~オ!(主は、すごいんだよ~!)』
「ミーチェに褒められるのは、嬉しいぞ。フフフ」
ルシーは機嫌良く笑う。
「ルーカス王子、良く聞いてくださいね。誘拐犯の王女には、ここで犯した罪を償ってもらいます。他にも攫っていたようなので、1か月間ここで反省してもらいます」
「……! ……!!」
カミラ王女は、石壁を叩いて何かを訴えている。
「1か月だと!?」
ルーカス王子は、苦渋の色を浮かべる……
「ジークと違って、手足は自由にしてあげます。食事は、毒か媚薬の入った料理しか結界を通れないようにします」
「……! ……!」
「なんだと!」
王子は到底受け入れられないと、ムキになる。
「僕もさっきも言ったよ。聞いてなかったのかい?」
ジークが、ルーカス王子の前に立って威圧する。
「王女が、攫った者にして来たことです。王子、遠くの国には、目には目をという法律があるのですよ。人にした悪い行いを自分も同じに受けてもらう罰です。これでも、私の怒りは収まらないのに……これで、許してあげるんですよ」
「殺さぬと言ったではないか! 毒など入れたら……」
ルーカス王子が私を睨む。
「王子……王女は毎日ジークに毒入りを与えていたんですよ! ジークに毒を与えて良くて、誘拐犯にダメなんておかしいでしょ? 同じ命ですよ。私が納得する理由を言ってみて? ルーカス王子?」
「むぐぐ……」
王子は言い返す言葉が見つからないのか、ただ拳を握りしめていた。
「王子、良く考えて下さい。1~2滴の毒でも、毒入りの食事なのですよ? 毒の量を調節すれば、死なないでしょ? ただし、1日の食事の量は制限します。ジークに碌に食事を与えなかったから! どれ位の量かは、あの護衛達が知っているでしょう? それで、死んだらあなた達のせいですからね」
王子は目をパッと見開き、考え込む。
「なるほど、確かに1~2滴の毒でも毒入りの食事だな……」
「これは、罪を償って貰う為のものです。殺す為ではありません。ジークが受けた扱いに比べれば、遥かに良い待遇だと思いますよ」
王女は1日1,200カロリー、護衛は1,500カロリー位でいいかな。この世界の人に言っても分からないだろうし、鑑定さんに伝える。
「ミーチェ、それで許すのか? 優しすぎるぞ。番を引き裂く行為は、万死に値するのだぞ……」
「そうですね、ルシーの言う通りだと思います。でも、ジークを無事に助けることが出来たから……これでいいんです」
ルシーには、本当に感謝している。
「ミーチェは、優しいね。僕なら、ミーチェを攫った奴を生かしてはおかない」
ルシーもジークも、怖いことを言う。私が1番怒っていると思っていたけど、2人も結構怒っている?
「もし、また誘拐事件が起きたり、仕返しに来たら……魔人さんやジークの好きにしてください。その時は、止めませんから」
私の言葉に、ルーカス王子はハッと息をのむ……
「ミーチェ、分かったよ」
「好きにしていいのだな」
私は、2人に深く頷いた。
作った石壁に両手を触れて魔力を流し、鑑定さんとコアにお願いする。
1か月間ここに結界を張り続けて、毒か媚薬入りの食事しか通さないようにして! そして、1日の食事の量はカロリー制限を掛けてね! 細かい注文だけど、私の記憶を参考にして! お願いします。
【希望内容を確認し、実行します】
魔力が石壁に流れて行く……しばらくすると魔力の流れが止まり、鑑定さんが報告してくれた。
【結界魔法が、完了しました。後から、期間の延長・短縮が出来ます】
【眠い……もう寝てもいい?】
うん。鑑定さん、コア、手伝ってくれてありがとう。とても助かったよ。
【……うん】
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