第37話 呪い
目が覚めると、ジークに抱きしめられていた。
あぁ、ジーク、本当に記憶が戻ったのね。そっと、抜け出そうとすると、ぐふっ、抱きしめられた。
「ミーチェ、おはよう」
ジークは、優しく微笑む。
「ぐふっ、ジーク……苦しい……おはよう……」
ジークは、力強かった? ごめんねと言う。2回目だよ! 3回目かもしれない……うん、許してあげるけど……
ジークとの話が終わったのは夜遅く、魔力の使い過ぎで疲れていたのか、随分と遅い朝食になりました。
「ジーク、お腹空いた? 遅くなってごめんね~」
「いいよ、気にしないで。ねぇ、ミーチェのMPどうなっているかな?」
ジークに言われて、ステータスを見せた。
名前 ミーチェ
年齢 10歳
HP/MP 108/ 40(80)
「昨日の夜、食べた料理かな? やっぱり、魔素で回復しそうだね。食事が済んだら1回ダンジョン出ようか、昼前なら、ギルドにも人が少ないだろうしね」
「うん。分かった」
このまま、ダンジョンで籠ってもいいんだけど、あの魔法陣を何とかしないとね……他にも誰か飛ばされるかもしれない。
「入口の警備騎士に止められるかもしないけどね。子どもが、ダンジョンから出て来たら、おかしいからね」
私が、小さくなった経緯をまとめる。
・20階の部屋で野営しようとしたら、魔法陣で飛ばされた。
・飛ばされた先で、魔物に呪われて、魔力を取られ子どもになった。
・帰還石を使って戻って来た。
・魔物狩りをすれば、その内に戻るだろう。
「ジーク、凄い! 秘密の部分もちゃんと隠れているね」
「そうなんだけど……報告したら、20階の部屋に連れて行けと言われるね」
そうだよね~、調査するだろうね。
「私もだよね?」
「ミーチェを、置いてはいけないよ?」
ありがとう、ジーク。街に行ったら、服を買いに行かないと……ローブの裾を結びあげる。それでも、歩きにくい……
「ジーク! お願いがあるの。今着ている服が、ぶかぶかなの……子ども服を買いに行きたいの。はぁ……子ども服を早めに……」
ジークが愛おしそうに見つめて、
「うん。ミーチェ、すぐに買いに行こうね。フフ」
ジークが、歩きにくそうにしている私を抱き上げて、ダンジョンを出る。
ダンジョンの入口に、騎士のクライブさんがいた。
「えっ! 子どもが、ダンジョンから……? ジークだったかな、その子、どうしたんだい? まさか……?」
クライブさんと、もう1人の警備騎士が、慌てて近寄って来た。
「ああ、ジークだ。彼女は、僕のパーティーメンバーのミーチェなんだ」
「えっ! どういうことだい?」
「ギルドでも話さないといけないから、詳しい話はギルドでいいかな?」
「あぁ、分かった。一緒に向かう」
クライブさんは、後のことをもう1人の騎士さんに任せて、一緒に付いて来た。
3人で馬車に乗り、ギルドへ向かう。クライブさんは、私をジッと見ている……ジークに抱き上げられたまま、ギルドに入ると一斉に視線を浴びる。恥ずかしい~! 思わず、顔を隠す。
受付でクライブさんが、
「ダンジョンで、報告の義務が生じる事例が出た。詳しい話を聞きたいので、部屋を貸してもらえるかな? それと、ギルド長も呼んでくれ」
受付のお姉さんが慌てて、
「クライブ様、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
クライブさんて……偉い人だったのね。
2階にある、応接室に連れて行かれた。
「こちらで、少しお待ちください。ギルド長を呼んで参りますので」
バタバタと足音が聞こえる。ドアが勢いよく開かれ、顎髭を蓄えた、白髪交じりの40代かな? ギルド長らしき人が入って来た。
「クライブ殿、どうされました?」
「あぁ、ギルド長。忙しい所すまない。先ほど、ダンジョンから子どもが、出てきた。子どもがだ……」
「はあ? 子どもが、ダンジョンから?」
「そうだ。しかも、その子どもは、彼ジークのパーティーメンバーだと言う。詳しい話を聞く必要があるだろう? 本人達もキルドに報告すると言うから、一緒に付いて来た。ギルド長にも、話を聞いてもらおうと思ったんだよ」
「なるほど。それで、そちらの子どもが、ダンジョンから出て来たんですね。彼のパーティーメンバーだと……」
ギルド長は、私をまじまじと見る。ジークは頷き、ダンジョンでの経緯を話した。秘密のこと以外を……
ギルド長とクライブさんは、目を見開いて聞いている。
「なんだと! 魔物がいる部屋に飛ばされたのか!」
「魔法陣がある部屋なんて、聞いたこともないよ……」
魔法陣の部屋を知らないなら、封印されている魔人がいたことも知らないんだろうな……
「ミーチェが飛ばされた後、床を調べたけど、魔法陣なんてなかった。でも、発動したんだ……」
私は3人の様子をじっと見ていた。私に質問が来ると、ジークが答える。それに私は頷く。
「ミーチェは、魔物に魔力を奪われ、呪いを受けて子どもになってしまった。彼女は16歳だったが、今は、見ての通りだよ」
2人に、その魔物はどうしたのかと聞かれた。私は、走って逃げたから分からないと答える。
「彼女には、倒す力はないよ。ミーチェは、ランクEだからね」
ギルド長とクライブさんは、うーん、と腕を組んで考え込んでいる。
「取りあえず、魔法陣があった部屋を案内してくれるかな? 調査団を連れて行くから。ギルド長、高ランクのパーティーに、調査団の護衛依頼をお願いする。いいかな?」
「はい、クライブ殿。早速、2パーティー集めます。明日の出発でよろしいですか?」
「あぁ、頼む。20階の調査だと、ついでに騎士団も出して間引くか」
明日の朝、ダンジョン入口まで来るように言われ、解放された。
「私、ずっと緊張してたよ……ジーク、疲れたね~」
ずっと説明してくれたのは、ジークなんだけどね。
「フフ。ミーチェは、ずっと僕の袖を掴んでたね。さあ、ミーチェの服を買いに行こうか」
その後、ジークと服を買いに行った。10歳の女の子が、装備出来る防具なんてないし……取りあえず、白っぽい普通のワンピースを買いました。下着も買ったよ、ズレてくるし……
「ミーチェは、何でも似合うね。可愛いよ。あ! ミーチェ、着替えもいるよね?」
ジークは、なんだかご満悦です。
「ねぇ、ジーク。恥ずかしいから下ろして?手を繋ごうよ……」
「ダメだよ。消えちゃうかもしれないだろ?」
それを言われると、何も言えないです。
「……」
その日私は、宿屋に着くまで、ずっとジークに抱っこされたままでした……
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