第36話 見た目

 ルシーにお願いして、ジークの所に連れて行ってもらうことになった。抱っこされたままです……


「ルシー、下ろしてください。歩けますから」

「さっき、へたり込んでいたようだが?」

「うっ、お手数をおかけします……」


 壁の文字を通り過ぎて、そのまま行くと、魔法陣が現れた。反対に進んだのね。


「ミーチェ、そのパーティーメンバーが、残っていればいいな」

「ふふ、心配してくれるんですか? いなかったら、帰還石でダンジョンから出るので、問題ないんですよ?」


 ルシーの顔が、近い! 見慣れない美形は毒ですよ……イケメンジークには、最近やっと慣れてきたけど……


「ルシーは、この後どうされるんですか?」

「そうだな。しばらくは、<魔の森>でゆっくりする」

「ルシーは、<魔の森>に住んでいたんですね。ふふ。私は<魔の森>で生まれるように、転移して来たそうです。あ、私が迷い人ってことは、秘密にしています。知っているのは、私を拾ってくれた人だけなんですよ」


 私は、にっこり微笑む。


 ルシーが、そうかと言い、私を抱っこしたまま魔法陣に入った。そして、光に包まれ、眩しくて目を閉じる。フワッと、浮く感じがして目を開けると、そこにはジークが立ち尽くしていた……


 ジーク……


「ル……ありがとうございます。下ろしてください」


 ルシーに下ろしてもらい、ジークに近寄った。ジークは、突然現れた私達に戸惑っている。


「ジーク?」


 目が腫れている……泣いていたのかな? ごめんね……心配させて。


「ミーチェ……? ミーチェなのか!?」


 ジークは、目を見開き、走り寄ってきて私を抱きしめる。ふえ~、苦しい……ジーク、ちょっと力を緩めて……


「ミーチェ! 小さくなってる? 何故、どうしたの?」

「ジーク、ちょっ……放して。く、苦しい……」

「あっ、ごめん……」


 ジークが、腕の力を緩めてくれた。なんか、ジークの反応が……距離感が、おかしい?


 ルシーが、呆れたように見ている。


「ミーチェ、私は行くぞ。また、助けが欲しければ呼ぶがいい」

「あっ! はい、ありがとうございます。助かりました」


 ルシーは優しく微笑んで、霧になって消えた。凄いね、消えたよ……


「ミーチェ。どういうことなのか、話して欲しいんだけど……彼は、誰かな? ねえ、ミーチェ?」


 うん、ルシーのことはジークにだけ話す。封印を解いたって言ったら、怒られるかな?


「うん。ジークに相談したいんだけど、ここだとマズイの。起動しないと思うけど、さっきの魔法陣が動くと困るから。でも、この姿だと、ダンジョンを出た時、知ってる人に見られたら……どう言えばいいか……」


 帰還石を使って1階に飛び、ワープで5階に飛ぶことにした。そして、小部屋に入って、魔除け石と結界石を置きテントを張った。


 テントに入った途端に、ジークに優しく抱きしめられた。あれ? やっぱり、何だかおかしい?


「え? ジーク?」

「ミーチェ、ごめんね。やっと、記憶が戻った」


 ええっ! 記憶が? ジーク、嬉しい~!


「えっ! 記憶が戻ったの? 良かった~。ではジーク、質問です」

「うん?」

「私たちが、初めて出会った所は、どこでしょうか?」

「フフ、<魔の森>だよ。ミーチェは、0歳だったね」


 ジークが、愛おしそうに見つめる。


「嬉しい~!! ジークが、戻った!」


 だめだ。嬉しくて、涙が出て来る……そんな私を見て、ジークは抱きしめるが、ぐふっ、苦しい……ジーク、潰れちゃう……力を緩めて……ぐすっ。


「そうだ、ジークに報告? 話があるの。でも、すっごくお腹が空いていて……食べながらでもいい?」


 ジークが、愛おしそうに微笑んで、涙を拭いてくれる。


「ああ、いいよ」


 ソファーに座り、バッグに入っている料理を並べる。食べながら、光って飛ばされた後のことを話した。


 洞窟に飛ばされたこと。壁に迷い人のメッセージがあったこと。黒猫に付いて行ったこと。封印の間で魔人に出会ったこと。彼は1,000年も一人ぼっちだったこと。鑑定さんに手伝ってもらって、封印を解除したこと。契約したこと。迷い人ってバレたこと。子どもになっていたこと。魔力が無いこと。ジークに会いたいから、連れて来てもらったこと。


「そうか、アイツは、封印されていた魔人なのか……鑑定に手伝って……」


 ジークは、つぶやいていた。


「そうなの。ジーク、封印を解いたこと怒ってる?」

「いや、怒ってないよ。それよりミーチェ、大丈夫だった? 魔人に何かされてない?」


 うぅ、契約のキスのことは言えない……


「大丈夫よ、優しい魔人さんだったよ。そうだ! ジーク、またステータスが、おかしいのよ!」

「ミーチェ、興奮しないで。おいで……」


 ジークは、そう言って私を膝の上に乗せる。……えっ?


「ジーク、なぜ膝に乗せるの?」


 ジークは、どこかに消えないようにと言う……あぁ、ごめんね。あっちに帰ったと、思った? だから、泣いていたの? 目が腫れている……


 ジークに、ステータスを見せる。


 名前   ミーチェ

 年齢   10歳

 HP/MP 108/ 10(80)

 攻撃力   67

 防御力   63

 速度    90

 知力   155

 幸運    96

 スキル

 ・鑑定S ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法S

 ・火魔法A ・土魔法A ・風魔法A ・水魔法A

 ・光魔法S ・闇魔法A ・無属性魔法S 

 ・雷魔法A ・氷魔法A ・聖属性魔法S 

 ・短剣D  ・回復魔法A ・時空間魔法S


「これは……初めて会った時の0歳もビックリしたけど、これも凄いね。(80)ってなんだろうね。スキルSになってるのもあるし、う~ん、HPが5じゃないだけマシって考えようか……」


 ジークがいて良かった。相談できる人がいるって、心強いです。


「そうね、HP5に比べたらマシだよね。ねぇ、ジーク。子どもになったこの姿をどうしよう?」


 ステータスは隠せるけど、この姿はね~。


「そうだね……ミーチェ、その姿は隠せないから、呪いを受けたことにしようか」

「えっ! 呪い?」

「うん。呪いって、色んなのがあるからね、魔導士や魔術師、特有の呪いだってある。だから、魔物に呪いで魔力を盗られて、子どもになったことにしようか。その姿は隠せないしね」

「うん、この姿は隠せないよね……服も買わなきゃ……」


 なるほど~、ジークがいて良かった……


「鑑定が身体の魔素を使って、と言ったんだね。じゃぁ、また魔物を倒して、干し肉を食べたら戻りそうだね。フフ」

「ジーク! 私も、そうかなって思っていたのよ。この呪いは、その内に戻るってことにした方がいいのかな?」

「そうだね。ミーチェは今まで通り、余り喋らなくていいよ。ところで、ミーチェの10歳って、凄く可愛いね~、こっち向いて、顔をよく見せてよ……」


 ジークがフードを取って、まじまじと見てきた。うぅ、近い……恥ずかしい。


「そ、そんなことないから、あんまり見ないで~! 恥ずかしい! もう、今日は疲れたから寝ます。おやすみ、ジーク」


 ジーク、記憶が戻った途端に密着し過ぎ……ドキドキし過ぎて苦しいです。 


「ミーチェ、僕も今日から、一緒に寝るからね。そういえば、どうして、一緒に寝てるって言わなかったの?」


 ジークは、にっこり笑って、頭にキスをした。


 そんなの……


 恥ずかしいからに決まってるじゃない……




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