第7話 見た目が若く?

 ランクEになって、2ヵ月ぐらい経つけどまだランクEです。普通ランクDに昇級するには、4人パーティーで1年ぐらいかかるそうです。


 この2ヵ月で、かなり稼ぎましたよ。貯まったお金は、金貨70枚以上! 凄いでしょ。でも贅沢はしない、屋台を出すお金を貯めるんです。


 狩りの合間や寝る前に練習していた浄化魔法、回復魔法、紫外線や体に有害な物を弾く魔法が出来るようになりました。やった~! これは随時かけておく。


 そして、私のショルダーバッグが、遂にアイテムバックの空間を獲得しました!鑑定の小窓さんが、MPが少ないから、今はサイズ(小)しか出来ないと教えてくれた。MPが増えたら、また魔法かけてみよう。


 あ、リュックにも魔法かければいいのか。それともダミーとして、そのままがいいかな? ジークに聞いてみよう。


 ジークに聞くと、ダミーとして、そのままがいいんじゃないとのこと。そうします。ジークの顔が、呆れていたように見えた……。


 ある日、いつものように依頼を受けて狩りに出かける。南の大門に兵士のケビンさんがいた。


「ケビンさん、おはようございます」

「おう! お嬢ちゃん。今日も依頼かい?気を付けてな」

「はい、ありがとう。行ってきます」


 ジークは、片手を上げる。ケビンさんがいない時は、私を隠すように門を出る。ちゃんとフード被っているのに……。


 ここ1ヶ月ほど、アイテムの収集依頼で<魔の森>に行っている。今日も、2泊3日の予定で森に入ります。<魔の森>は、大陸の真ん中に広がる魔物の住む森で、奥に行くほど強い魔物が出るそうです。そして、私とジークが出会った森でもある。


 魔法の威力が上がって、サクサク狩りが出来るようになったのと、私のバッグの容量が増えたので、2泊3日だと効率よく狩りができる。


 毎回、金貨10枚ぐらいの換金額になる。時々、オークも出るんだけど、ジークが余裕で倒しちゃう。


 オークは魔石取り出して、そのままジークのアイテムバックに入れる。解体するのに時間がかかるから、そのまま持って帰ってギルドで解体してもらうんだって~。


 いつもギルドが混み合う前に、街に戻るようにしている。大門が見えて来ると、ケビンさんが見えた。


「よおジーク。お嬢ちゃんお帰り。んん? お嬢ちゃん、何かどんどん若く? 可愛くなってないかあ?」


 ジークが一瞬、目を見開いた。


「……」


 若い兵士さんも、こっちを見て頷いている。


「え~っ! ケビンさん本当ですか? お世辞でも嬉しいです。フフ」


 私はドキッとしたけど、笑顔で嬉しいと喜んだ。恥ずかしがっているフリをして、フードを深く被る。


「おいジーク、そんな怖い顔するなよ~。粉をかけてるんじゃないからな、怒るなよ。ハハハ」


 ケビンさんは、ジークをからかった。


「怒ってない……」


 ジークはそう言って、門を入って行った。


「あ、ジーク待って~」


 ペコリとケビンさん達に頭を下げ、ジークを追いかけた。


 ジークは振り返って、


「ミーチェ、先にギルドで換金するよ。その後、ステータス見せてね」


 と、優しく微笑んだ。


「はい……」


 ギルドで報奨金を貰った後、中央広場のベンチでステータスを開いた。


「ステータスオープン。ジークどうぞ~」


 名前  ミーチェ

 年齢   14歳

 HP/MP  60/300  

 攻撃力   30

 防御力   27

 速度    44

 知力    95

 幸運    94

 スキル

   ・鑑定A ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法B

   ・火魔法B ・風魔法B ・土魔法B ・水魔法B 

   ・光魔法B ・闇魔法C ・無属性魔法C 

   ・雷魔法E ・氷魔法E ・聖属性魔法E 

   ・短剣E  ・回復魔法E


「うん。14歳か、MPかなり上がったね。スキル鑑定A以上を持っている人は少ないけど、ステータスを隠せる魔法を覚えた方がいいかな」

「そんな魔法あるのね」

「うん、あるよ。ミーチェなら強く望めば覚えそうだから。近いうちに、覚えた方がいいかな」


 ジークは、画面を見ながら何か考えているよう……


「分かった、覚えるように頑張ります。それでジーク……私、若返っている?」

「うん、16歳ぐらいに見えるかな」

「えっ!はぁ~、ケビンさんに言われるのも仕方ないのかな」


 ステータス画面では14歳だから、最悪、見た目14歳になっちゃうのね……。う~ん、誰かにバレちゃうかな……。


「ねぇ、ミーチェ。このままだと、ミーチェの若返りに気付く人が出てくるかも知れない」

「うん、そうかもね……ねぇジーク、考えていたんだけど……」


 この際、考えていた屋台のことを言ってしまおう。


「ん? 何ミーチェ」

「ジークの昇級クエストが終わったら……私、冒険者を辞めて目立たない路地とかで屋台でもやろうかな~、って」

「ええ? ミーチェ! ……何で?」


 ジークが、びっくりした顔で私を見る。


「魔法は好きだけどね、ウサギとかゴブリンとか、解体が苦手なの。他の小さな街に行って、採集だけするのもいいかなって……」


 前々から考えていたことを、ジークに伝える。本当に、解体がダメなんですよ……


「待って、ミーチェ! 解体がイヤなら迷宮があるよ! 迷宮都市やダンジョンでは、魔物を倒すとアイテムを落として消えるんだ。解体しないし、魔石も取らないんだよ。勝手にドロップするんだ」


 ジークが慌てて私の話を止め、必死になって説明をする。


「迷宮って解体しなくていいんだ……ダンジョンも?」


 ちょっと心が動く、解体しないでいいなら冒険者のままでもいい。けっこう稼げるようになったしね。


「うん、そうだよ。ねえミーチェ、一緒に迷宮都市に行こう! 15歳になったらと思っていたんだけどね、決めた! 誰かに気付かれる前に、明日にでも行こう!」


 えぇ~、決定なの? ジーク、ちょっと強引ですよ。でも、若返りがバレる前に街を移動するのはいい判断かも……


「えっ! 明日って無理があるんじゃない? 街を出るにも、ギルドに届け出さないといけないって、説明書に書いてたよ?」

「異動届は、明日の朝一番ギルドに出しに行くよ。それと、迷路都市か王都行きの定期馬車の予約もするから、明日は無理でも、明後日、遅くて3日後には街を出るからね」


 ジークいつもと違って、どんどん話を進める。そんなに急いで決めなくても、どうしたんだろう……


「ジーク、決めるの急すぎ~、焦ってどうしたの?」


 いつものジークじゃない……


 ジークが私の顔を覗き込んで、思いつめた顔をして言う。


「ミーチェが、冒険者を辞めるって言うから……昇級クエストは、どうでもいいんだ。ランクBにも、なりたくない。ミーチェが……ミーチェが、僕から離れていくのがいやなんだ」


 うぅぅ、胸が痛い。キュンとした……これが、きっと急所突き……馬鹿言わなきゃ、お姉さん踏ん張れなーい。イケメン・ジーク恐るべし……


「ジークから、離れたいんじゃないよ。解体が慣れなくて、見るのもキツくて……悩んでて。解体しないで、私が出来る仕事って何かな~、って考えてたの」

「そっか……悩んでいたんだね」 


 ジークが優しく微笑む。


「ねえ、ミーチェ。悩みごとや考えごとがあったら、必ず、僕に話してね?」

「う、うん……分かった、相談するね」


 顔が赤くなる……まともにジークの顔が見られなくて、俯いてしまう……


 ジークは更に顔を近づけてきて言った。


「ねぇ、ミーチェ。今後、魔物の解体は全部僕がするからね。ミーチェはしなくていいからね」


 えっ! ジーク、面倒見のスキルがMAXになったんじゃないの?そんなに甘やかすのは、どうかと思うんですけど……そして、顔近すぎる……うぅ、殺しにかかっているでしょ……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る