第5話 ギルド登録・ランクFの新人

 大門を入るとすぐに広場になっていて、そこから大通りが延びている。馬車が余裕で2台通れる広さで、両側にお店が並び、行きかう人で賑わっている。


 まず、ギルド登録する為に冒険者ギルドに向かう。大通りを真っ直ぐ進むと中央広場がある。広場を中心に十字を描くように、大通りが通っている。広場手前の右角にある、大きな建物が冒険者ギルド。


 ジークに付いてギルドに入る。中は、2階建ての吹抜けになっていた。お昼だからか人は少なめで、のんびりとしている。右側にある酒場には、赤い顔の冒険者が何人かいた。そして、受付には数人並んでいる程度だった。


 ジークと並ぶと、すぐに順番が回ってきた。受付の綺麗なお姉さんが、ニッコリと笑顔で言う。


「あら、ジークさん。お久しぶりですね。今日はどうされました?」


 20代中頃で軽くウェーブのかかった金髪で水色の瞳。完璧な営業スマイル……お姉さん、素晴らしいです。


「やぁ、レイシアさん。彼女の、ミーチェの冒険者登録をお願いしたいんだけど」

「では、こちらの用紙に記入お願いします」


 レイシアさんが、差し出した用紙をジークが受け取った。


「ミーチェ、文字書ける? 僕が書こうか?」


 ジークが私の顔を覗き込んで小声で聞いてきた。 


「う~ん、ジークお願いします」


 何が書いてあるのか読めるんだけど、書くのは無理っぽい。文字が分からないです。


 ジークが、申込み用紙に記入する。

 名前:ミーチェ  年齢:15  出身地:西の共和国


 え、ジーク、年齢15って……さっき見た目20歳って、言っていたのに……ステータスは6歳だけど……西の共和国って、どこにあるんだろう。


 目が点になって登録用紙を見ていたら、ジークが私の視線に気付き、小声で教えてくれた。


「ギルドカードはね、名前とランク以外、見えないように出来るから」


 なるほど~、ギルドカードって上手く出来ているね。それなら若返っても、年齢が増えても問題ないね。


 レイシアさんが、出来上がったばかりのギルドカードと新規冒険者の説明書をくれた。


「初めはランクFからのスタートです。こちらのギルドカードに、ミーチェさんの血を一滴垂らしてください。これで、ミーチェさんしか使用できなくなります。こちらは説明書、新人の講習会もありますので是非、参加してください」

「はい。ありがとうございます」


 ギルドカードをもらった。クレジットカードぐらいの大きさで、鉄で出来た薄いカード。ランクが上がると色がかわるそうです。チェーンを通して首から下げるようにした。


 早速、年齢の隠し方をジークに教えてもらう。隠せるものは全部隠す。よし! これで大丈夫。


「それとレイシアさん、僕の昇級クエストなんだけど」

「はい、ジークさん。新人育成ですね」


 レイシアさん、ニッコリ答える。


「そう。それミーチェで受けるから、クエストの受注登録して欲しい。それと、ミーチェとパーティー組むから、その登録も一緒にお願い」


 ん~? なんかジーク、淡々と喋っている。変ですよ……いつもの人懐っこいジークじゃないですよ……


「えっ!? パーティー登録するんですか?」


 レイシアさん、凄くビックリしていますよ。新人と組むのは珍しいのかな?


「そう、パーティー登録するから。ミーチェ、ギルドカード貸して登録してもらう」

「はい」 


 ジークは振り返って、にっこり微笑み、私のギルドカードを受け取った。あれ~、私の勘違いかな? いつものジークだ……


 登録が終わり、返してもらったギルドカードの裏面を見ると、ジークの名前がパーティーメンバーとして記されていた。


 ジークのカードには、育成対象:ミーチェ パーティーメンバー:ミーチェと、表記されていた。


 次は、ジークと買取りのカウンターに向かう。


 薬草の束×5とスライムの魔石を出す。魔石は65個もあったよ。バッグが重いはずだぁ……アイテムの換金額は、全部で14,000エーツ 金貨1枚と銀貨4枚でした。おおぉ嬉しい!


 ジークも依頼のアイテムとか魔石を色々出していた。査定に少し時間がかかるようなので、ランクFの依頼ボードを見ていたら15歳ぐらいの片手剣を、腰から下げた男の子が近付いて来た。


「ねぇ、君。初心者? よかったら……」


 いつの間にかジークが来て、私を隠すように立った。


「僕のパーティーメンバーなんだ。勧誘はお断りだよ」


 男の子はビクッとして、それ以上は何も言わず離れて行った。


 えっ、ジーク……いつの間に……かっこいい! お姉さんキュンと……しちゃぁダメなんだけど。


 ギルドを出て、宿屋に向かう。ジークがいつも泊まっている宿屋。1泊朝食付で一人銀貨2枚、夜は食堂になって誰でも使える。安いよね~。


 一人部屋を並びで2部屋借りる。二人で銀貨4枚、取りあえず3泊分借りた。


 部屋に向かいながらジークが、


「宿代とか食事は、僕が面倒見るから。独り立ちするまでね。ミーチェが稼いだお金は、服とか自分の必要な物を買って」

「え、それはダメ。少しでも受け取ってほしいよ」

「ランクEに上がったらね。必要な物が買えなくなるからミーチェ、この話は終わりね」

「えっ、あっ、はい……」


 面倒見が良すぎるんですけど…。これは、頑張って早くランク上げないと……


 お昼を食べにジークと出かけて、最低限の必要な物を買いに行く。初心者用の装備とリュックと肌着、これで金貨飛んで行きました。武器が買えない……ジークにナイフまだ返せないです。はい、ジークの言う通りでした……


 夜は宿の食堂で薄いワインとオークの煮込み、これで700エーツ。オークの煮込み美味しかった~。トロみのないシチューって感じでした。一皿の量が多いので、これだけでお腹いっぱいになる。


 久しぶりのベッドです。藁の上にシーツ掛けた簡素なベッド。それでも、疲れているからか、ぐっすり眠れました。




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