第3話 始まりの街へ

 お昼から、ここから一番近い<始まりの街>へ向かう。ジークが、拠点としている街だそうです。


 川沿いをスライム狩りながら進む。初めはジークがスライムを押さえていて、私がナイフで5回ほど突き刺す。はい、とっても楽ちんです。それを10~11回繰り返したら、ステータスが4歳になりました。


「ジーク! 4歳になりました!」

「おぉ! HPと防御どれぐらい?」

「HP20! 防御力10! だいぶ増えましたよ。うれしい。一人でスライム狩れるかしら?」

「ん~~、やってみる?」


 ダメでした。結局、5歳になるまで一人で狩れなかった。ジークは文句も言わず付き合ってくれました。……感謝です。


 ジークは、ほんと面倒見がいい。背が高くて、イケメンで、人懐っこくて完璧じゃあないですか。ちなみに、背の高さは180cmぐらいです。


 街までは歩いて1日ほどの距離らしいけど、私のステータスだと2~3日かかると言われた。狩りしながらだし、ステータスは赤ちゃんだもんね……こまめに休憩してもらっています。


 日が暮れる前に、開けた場所でテントを張り、魔除け石を置いて野営の準備。魔除け石って、低レベルの魔物が近寄って来ない魔道具だそうです。


 ジークが狩ったウサギが数匹。解体を手伝だったけど、やっぱり向いてないなぁと思う。慣れなのかな……。


 私が、お礼に食事を作るとジークに言った。調味料が、塩ぐらいしかないのが不安だけど、頑張って作りますよ。


 生活魔法で、水と火がどれぐらい出るか、風で食材切ったり混ぜたり出来るか試してみる。


 干し肉とウサギの骨を使ってスープ作り。時間かかりそうなので、圧縮魔法使って時短。出来るのかって?


『魔法はイメージが大事』ってどっかに書いていました。そして、スキル空間魔法を獲得……はい、チートですね。逆とか言ってごめんね。助かります。


 仕上げに、鑑定スキルで見つけた山菜入れて煮込みました。


 夕食は、塩を振っておいたウサギ肉の串焼きと干し肉入りの山菜スープとパン。拾ってくれた感謝を込めて……


「出来ましたよ~、どうぞ」

「!」


 ジークが目を見開き、キラキラした目で私を見た。うん。お姉さんその瞳を見られて……満足です。


「ミーチェ! スープすごく美味しいよ! それに、このウサギの串焼き、なんでこんなに柔らかいの?」

「フフ、良かった~。串焼きは、下処理と焼き方かな。圧縮かけて、弱火でゆっくり焼いたの。面倒見てくれたお礼に、頑張りました」

「圧縮? 料理の専門用語かな? さすが、料理スキルAだ」


 片付けはジークに教えてもらいながら、生活魔法で簡単に手早く出来ちゃう。生活魔法ステキだ……


 生活魔法は、最低ランクの属性魔法が使える。ただし、個人の適性によって、使える魔法と使えない魔法があるそうです。


 私は、全部使えましたよ。はい、チートですね……ありがとうございます。


 今日は疲れたぁ~、長い一日でした。眠い……夜空を見上げると、月が2つある……えっ。ここは異世界なんだと、実感した。



「ミーチェ、テントで寝てね」

「え、ジークは?」

「僕は、焚火が消えないように番をする」

「そうですか、ありがとう……ジークおやすみ」


 私だけテントで寝るのは、申し訳ない。かと、言って一緒にテントで寝るのも抵抗があるし……お言葉に甘えよう。


「あ、ミーチェ待って。浄化魔法かけるから、スッキリするよ」


 ジークに浄化魔法をかけてもらいました。わぁ! これが……お風呂上がった後みたい。是非ともこの魔法、覚えたい!


「ジークありがとう。この魔法覚えたいなぁ……私でも覚えられますか?」

「浄化魔法は生活魔法の高位魔法なんだ。結構MPを使うから、MP増えたら覚えられると思うよ」 

「そっか、分かりました。ジーク、おやすみ」



 翌朝、朝食を簡単にすませて出発する。黙々とスライムを狩って、魔石を取る。かなりの確率で魔石がとれるんだけど、これはステータスの幸運が関係しているらしい。


「ミーチェ、魔石の獲得率すごいね。8割はあるんじゃない? 流石、幸運94だね」


 ジークは感心したような表情を浮かべ、雑談しながらいろんなことを教えてくれた。


「幸運が関係しているんですね。でも、もうバッグに余裕がないんですよ……」

「あぁ、いっぱいになったら僕のバックに入れようか。僕のバッグ、アイテムバックだから沢山入るしね」


 すごい、アイテムバックあるんだ……


「いっぱいになったら、お願いしますね」


 とは言いましたが、かなりバッグが重いんですよ……


 普通、魔石の出る割合はダンジョンで2~4割ぐらい、野外で1~2割なんだそうです。強いモンスターほど魔石は出やすくなるんだって。


 スライムの魔石を自分のショルダーバッグに入れる。この魔石、1個200エーツで売れるそうです。街でパン2つ買えるんだって。


 簡単に、この国の通貨を教えてもらった。通貨はエーツ。

・半銅貨 10エーツ  ・銅貨 100エーツ ・銀貨 1,000エーツ 

・金貨 10,000エーツ ・白金貨 100万エーツ


 ちなみに<始まりの街>では、パン1つ100エーツ、エール1杯300エーツ、屋台料理100~300エーツ、宿屋(普通の)素泊り2,000エーツ~、


 100エーツが、100円ぐらいの感覚かな? 宿が安いけど……こんな感じです。


 薬草も採集したいけど、鮮度が下がると買ってもらえないそうなので諦めた。お昼代わりに干し肉かじりながら、ひたすらスライム狩りを頑張っています。


 私のバッグが魔石でいっぱいになったので、ジークのアイテムバックに入れてもらっています。彼のアイテムバック(中)は、かなりの容量が入るそうで、馬車3台分ほど入るんだって。チートですね……


 ちなみに、アイテムバックはダンジョンのボスや宝箱から出るそうです。アイテムバック(小)で馬車1/2台分。売りに出れば、100万ぐらいで冒険者優先で買えるらしく、高ランクのパーティーなら、メンバーの1~2人は持っているそうです。


 (中)は、なかなか出ないらしく、1,000万からのオークションだそうです。(大)は聞いたことないとのこと。


 その日の夕食も私が作りました。と言っても食材は昨日と同じなので、あまり代わり映えしないけどね。


 昨日と同じ干し肉と山菜のスープと、ウサギ肉と香りの良い山菜を叩いて塩味濃いめのハンバーグを作り、堅いパンを蒸して、間に挟んでハンバーガーにしました。


「ミーチェ! これはミーチェの国の食べ物かい? こんなに美味しくて柔らかいお肉、初めて食べた。参った~、降参だよ」


 私が出来ることって、料理ぐらいだしね。


「フフフ、喜んでもらえて良かった~。今日も面倒を見てくれて、ありがとうジーク」


 ジークのキラキラした瞳が見られて嬉しいです。お姉さんも参ってしまいそうです……


「ねえ、ミーチェ。冒険者登録するなら、僕の育成対象になって欲しいんだけど」

「うん? 育成対象って何ですか?」

「B級に昇級するのに、新人の育成っていうのがあるんだ。ミーチェは初心者Fになるけど」

「へ~、昇級するのにそんな条件があるんですね。もちろんいいですよ。でも私、狩り下手だから育つのが遅いと思うんですけど、良いんですか?」

「急いで昇級したいわけじゃないから。ミーチェが独り立ち出来るまで教えるから、ついでに育成クエスト受けておこうかなと思ってね。のんびりでいいんだ」


 なんと! 独り立ち出来るまで面倒を見てくれるの? ジークなんていい人……すごく嬉しい。


「えぇ? ジーク面倒見てくれるんですか? とっても助かるけど……いいんですか? 私お荷物ですよ?」

「うん。僕が名前つけてテイムしたからね~、フフッ。これも何かの縁だと思うんだ。美味しい食事を食べさせてもらったし。あ! また、ミーチェの手料理食べたいかな」


 あ、ジークの胃袋を捕まえてしまったようです。いい人に巡り会えたなぁ…。あ! これが幸運94の効果なのかも。


「ねぇジーク。教えてもらっている間、ご主人様と呼びましょうか? それとも、先輩・師匠・パパ・お父さん? 何がいいですか?」


 嬉しくて、絡んでしまった。


「あははは! 普通にジークって呼んで。会話は、ため口希望だよ」


 ジークの笑顔に目が離せない……助けてくれるんだ……はぅ……嬉しくて、こみ上げてくる……泣きそうになるのを我慢して、笑顔で答える。


「はい、了解です。ため口ね、ありがとうジーク。よろしくね」


 この先の進む道が、独りぼっちじゃないのが嬉しい……


「うん。ミーチェよろしくね」


 ジークは、優しく微笑んだ。 

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