第68話 死体しか愛せない
「やっと目が覚めたか」
俺は哀れに思ってメラニーを吊るすようなまねはしなかった。俺は拷問されたことがあるから吊るすのはちょっと抵抗感があるなぁとも思う。
でも、腹に指を突っ込んで腸は抜き取ってやったんだ。
腸で本人を縛りつけるのも、もう手慣れてきて十秒ぐらいでできる。
「あ、あたし、どうなってるの」
可哀そうだな、マルセル。メラニーを拘束したつもりだが、中身はまだマルセルのままだ。これは、長く楽しめそうだな?
「くははは。まだ深夜二時だぞ、マルセル。眠ってた方がよかったかもなぁ。メラニーの身体から逃げないのか? もしかしてメラニーから身体を貸してもらってるだけじゃなくて、死ぬまでメラニーから離れられないんじゃないか?」
まぶたがぼうっとしているメラニー、いや、マルセルが目を見開いて後ずさった。
無理無理、後ろもだだっ広い荒野。
こんなところでテント張ってたメラニーを恨むんだな。
誰も助けに来ないぞ。周りは全て馬と騎馬騎士の死体しかない。
「い、嫌、やめなさい! このうじ虫が!」
まだ何もしてないのに、この怯えぶり。
このクソアマ、俺のことを魔王よりも恐ろしい存在だと認識している。
いいぞ。もっと吠えさせてやる。骨の髄まで恐怖を染み渡らせてやる。
「マルセルやめて! 拷問されるのは私の身体なんだよ。キーレを挑発してどうするのさ」
メラニーも意識があるのか。一人の身体に二人の意識。仲のいいことで。
「仲良く喧嘩してな」
腹を右から殴って左から殴る。それをしばらく繰り返して、口から血を吐いたところで足で蹴ることにする。
足の方が力も入りやすいし、何より苦し気に
「ぐぅ……ふぅ……ふぅ」
元々身体を売ってきた女だ。それがどうだ?
マルセルに自身の身体を売ったばかりにこんな拷問を俺から受けることになる。
メラニーが金への執着を捨てれば解放してやってもいいかもな。
「メラニー、マルセルに身体を売るだけの価値はあったか? ふはははははは!」
「この野蛮勇者!」
まだこの期に及んで俺の悪口か。救いの手を拒むか。
「金なんか貰ってもお前が死ぬんじゃ意味ないよな」
この暴行は俺を絶頂へと導く。骨折魔法で両足をとんと叩いて粉々に砕いてやる。
「ぎゃああああああああああああああああああ」
地獄。一言で表現するならそうだろうな。俺は何度も味わってきたぞ。こんなもので終わるか?
俺はお前がこの程度で更生するとは思えないな。なぁマルセル?
「人形に留まっていた方が楽だったなぁ、マルセル。メラニーの身体を借りてまで俺を傷つけたいって欲が出たか、強欲女?」
メラニーの姿をしたマルセルは吐息を吐いて、息を整えようと努力しているように見える。
「見苦しいな回復師。お前の腕なら自分の傷は自分で癒せよ。そしたらもう一度俺が傷つけてやる。何度でもな。お前がやめてくれと泣き叫ぶまで」
「あ、あんた頭おかしいわよ!」
「そりゃおかしくもなるよな」
俺は苦痛は舐めつくした。味わいつくした。今は痛みも苦痛もない。
何も感じないぞ。苦しみはお前から与えられた。そして、俺が与える側に回っただけのこと。
「さぁはじめようかマルセル! 俺はお前を愛したいんだ。そのためにはお前は俺の為に死ぬしかない。俺はお前の死体しか愛せないからな」
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