第42話 赤双竜の騎士様
第二騎士団長様は女だった。俺の後ろでさっき、瀕死の状態にしてやった赤いドラゴンのドレッドバーンレが目を覚まして
第二騎士団長を応援しているかのような声だな。
「俺が悪役だって?」
俺はドラゴンを睨みつけて鼻で笑う。
「それはヴァレリー様の母親のドラゴン」
「そう。あいつ第三騎士団から第一騎士団まで全員に、自分がマザコンって知らせて恥ずかしくないのかなぁ」
「そのドラゴンから今すぐ離れろ」
威勢がいい女って好きだな。ヴァレリーが来るまでなぶりものにしておこうか。
でも俺は優しいからチャンスをやることにする。
「俺のターゲットはマザコン竜騎士様だ。はっきり言って、そっちが攻撃して来ない限り俺はあんたには興味がない」
興味がないは言い過ぎかもな。最近は目に入ったものはみんな敵だから、俺にとっては全てが獲物で、餌なんだよな。
「いいか、元勇者。貴様は存在自体が悪だ」
「でも存在しちゃってるんだよな」
「貴様の触れたものや土地も全て焼き払ってくれたわ」
俺はにんまりと笑う。それは言ったらNGの単語じゃないか?
「自己申告どうも。やる気出てくるなぁ」
第二騎士団長様は、短剣の二刀流使い。素早く流れるように斬りつけてきた。右、左と見極めて後退する。
おっと、俺の足を狙って、踏みつけるような蹴り。格闘も上手い。
「それ以上は手出し無用だ」
第二騎士団長様を止める声。とうとう来たな、竜騎士ヴァレリー。でも、この女は俺にけしかけているんだよな。
ヴァレリーを振り返った第二騎士団長様の細い首に、深く食らいつくように噛みつく。歯に切断魔法をまとわせて首を切断する。
「っぐ」
お、これを堪えるなんてすごいな。歯茎に第二騎士団長様の甘い血肉がまとわりつく。
首が裂けるときに目を見開いて、ちゃんと死を感じてくれたな。
竜騎士ヴァレリーは俺のことを罵ったりしなかった。普通、ここは貴様このクズ勇者めとか、おのれえとか言うだろう?
「私よりも野生になったようだな。キーレ」
「久しぶりの挨拶にはもってこいだろ? 竜騎士ヴァレリー。今はおおげさに呼ぶべきか。
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