第37話 死者への冒涜
マルセルが言うには、勇者が悪魔だとか、変態だとかで取り乱した彼女の発言は何が言いたいのかさっぱり分からない。
「あたし、ずっと棺に閉じ込められたのよ。ほら、今も腐臭が身体についてる。あの変態うじ虫勇者は、あたしの身体をずっと……」
さすがの僕も顔を赤らめるような事案だった。勇者キーレは完全にイカレテいる!
マルセルの棺をこじ開けただけでも、死者への冒涜だというのに。
マ、マルセルの亡骸を、お、お、犯すだと!?
「エリク、何ですぐ来てくれなかったのよ!」
「今、君の肉体を選定していたんだよ。生き返るためには人間としての身体が必要だろう。ここずっと徹夜なんだよ」
「そんなの言い訳よ。じゃあ何で墓場にあたしの亡骸をずっと置いてたのよ」
「それは、もう君が死んでいるからで」
口が滑って血の気が引いた。マルセル蘇生は四天王ベフニリウスの力なくしては成し遂げることはできない。
だが、死体になった器は使えない。
僕はマルセルの死体からマルセルの蘇生をすることは考えていない。彼女にはさらに美しい器が必要だと思ったからだ。
「もういいわ。あんたはうじ虫キーレを痛い目に合わせることだけ考えときなさい。四天王ベフニリウスの力は、あたしには貸してもらえないのかしら?」
「君は身体が戻るまでは大人しくしていてほしい。心配なんだよ。今回みたいなこともあるしね」
「ふん。あたしだってあいつを倒す策ぐらいあるんだから。もう、みんなとは連絡取ったからね」
元勇者の仲間の処刑の必要はなくなった。元勇者キーレの残忍な行いの数々はファントアではもう周知の事実となっている。
元勇者の仲間は全員リフニア国に協力するという意思確認も取れている。中には、自らキーレ討伐に動く者もすでに出てきている。
各国で勇者討伐部隊も結成されることだろう。
「キーレが厄介だと思うのはきっと、竜騎士ヴァレリーよ。彼のところに援軍を手配しときましょ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます