第24話 公開処刑
魔弾の弓兵。その名の通り、弓兵であり、矢に魔法を付与して放ってくる、付与魔法の使い手。炎に、氷に、雷に、属性攻撃のフルコースだな。
でも「
「出たぞ! 元勇者だ!」
熱い声援に応えるべく俺は、ダンス前にお辞儀する。
足先をかすめる矢。燃える前に踏みつぶす。氷は寒いからステップでよけて。雷は当たると格好がつかないので、一回転してかわす。
楽しくなってきた。屋根の上のショーは楽しんでもらえるかな? 今からメインステージに行くまでお待ち下さいっと。
「兵が足りぬぞ! 全、
モルガンは出しゃばりだな。ノスリンジアの魔弾弓兵にまで命令してるよ。
弓が弧を描く。ざっと数える。千本以上あるな。走るか。
踵のすぐ後ろに矢継ぎ早に矢が刺さっていく。矢の量と魔法で足場の屋根が崩れていく前に処刑台に飛び降りる。
空間隔離魔法の結界が当然のように張ってあるので、着地前に指で切断する。
裁判官は突き飛ばして、空間隔離魔法の境界線で縦に真っ二つに割った。
処刑人の斧を持った大男に蹴りを放つと、同じく空間隔離魔法の境界線で横に真っ二つに割れた。
「ヴァネッサ。助けに来たよ」
「キーレ! まさか本当に生きていて、私の処刑を止めに来るなんて思いもしなかったわ。でも、あなたのせいで私はこうなっているのよ」
「まぁまぁ、これ外してやるから」
俺は満面の笑みで答える。ヴァネッサ、意外にいい奴かもしれないなぁ。俺を裏切ったけど、今こうして純粋に助けてもらえることに少し恥じらいすら感じているみたいだ。
「かかったわね」
ヴァネッサは、自らいとも簡単に鎖を振りほどいた。そして、俺に抱きついて束縛魔法をかけた。
ヴァネッサの束縛魔法、強力。見えない縄で巻かれる感じだけど、足までしっかりだ。
「嘘、騙されたじゃん。公開処刑自体が嘘だってこと?」
広場で公開処刑を心待ちにしている観衆がどうっと歓声に沸く。動けないので首だけ振り返ってみると、みな喜び勇んで処刑だと口々に叫んでいる。
俺が死ぬことを願っている。今ここで俺の命が尽きることを、みなが待ち望んでいる。
あのときと同じだ。あのときと……。
「嘘ってことじゃないわよ。見物人もいることだし、執り行うわ。キーレ。これはあなたの公開処刑よ?」
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