第13話 俺の回復師
温かい言葉を浴びて、温かい言葉を浴びせた。
ある日の俺。魔物や魔族に爪や剣で傷つけられて、傷だらけの俺の頬を、マルセルの
放たれた淡く白い光と、体温と同じ温もりが感じられる上級回復魔法であっという間に癒えていく。
俺は彼女の小さい手が好きだから、下級の回復魔法で、傷を一つずつ癒やして貰いたいなあとか、冗談を言いう。
「馬鹿じゃないの。そんなことして手遅れになって、出血多量で死んでも文句言わないでよね」
ちょうど、魔王の手下の四天王の一人に手酷くやられてたし、マルセルに
彼女の手を強く握りしめると、マルセルは小さい鼻を反らせて何が可笑しいのか笑ってから小さい指で握り返してくれたんだ。
ああ、俺のかわいい回復師。
戦闘中もいっつも俺の傷ばっか一番に治すから、ドロテ怒ってたっけな。そりゃそうだ。格闘家はいつも最前線で肉弾戦だもんな。
「ねぇ、キーレ。魔王を倒しても元のガッコウってところには、戻らないよね?」
「学校は、行きたくないなぁ。あ、戻るとしたら日本ってところ。でもさ、俺、マルセルとならこっちでも」
その続き、何て言おうとしたんだっけ? こっちでも暮らしていけるって? こっちでもお前がいるなら生きていけるって?
夢だと分かっているけど、正確に思い出せないときあるよなぁ?
俺の耳に例の自分の声が聞こえてくる。どす黒い感情と吐き捨てたい痛みを伴った怒り。
あいつはクソアマだぞ? マルセルとなら?
マルセルは
はい、残念。マルセルもう殺しちゃったんだよな。すごいもったいない。もったいないことをしたぞ!
俺は、自分の失態に気づいた。マルセルがいないとだめだ!
何とか生き返らせる方法を見つけて、もう一度殺さないとだめだぁ。
自分でも、どこまで本気なのか分からないプランを閃いて目が覚めたら、首元に銀色の刃が食い込んだ。
「指一本でも動かしてみろ。貴様は今ここで寝首をかき切られることになるぞ」
え、寝込みを襲われた? 誰この騎士のおっさん。
天気のよい午後だぞ。昼寝ぐらいゆっくりさせてくれよ。
俺は王子の処刑を二日間寝ずにぶっ通したんだ。目にくまだってできてるだろう?
「貴様は指で物を切断できるらしいからな」
「へー、ちゃんと調べてきてんじゃん」
何だか周囲も騒がしいな。白衣の衣をまとった団体様がいらっしゃる。距離を保っているが、すでに俺、取り囲まれてる?
「あれは、リフニア国の国家魔術師の
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