第5話 女神フロラ

「女神フロラ様に感謝しないとな」




 俺は処刑された後、この世界の神的な地位におわしまする女神フロラ様に、異空間にて謁見えっけんした。


 異空間は、味も匂いもしない空間で、俺本当に死んだんだなと思ったっけ。


 その代わり天国までとはいかないけれど、苦しみや悲しみも感じない不思議な空間だった。




 だけど、俺はもの足りないからぶらぶらとした学生気分で突っ立っていたんだ。


 幽霊って浮遊するものだと思っていたけど地に足ついている。


 だけど、地はなくて、だだっ広い真っ白な空間なんだ。




 女神フロラ様は二メートルはあろうかという高身長、モデルのように生足を出して裸足だった。え、その生足ってわざと見せてるの? 


 え、褐色美女? いや、美白にも見える。


 これは、会う人によって理想の姿を見せてくれるような魔法でもかかっているのではないだろうか。




 道理で素敵な生足。いただきます。




 俺が二人っきりの異空間で、ぼーっと足ばかり見ているというのに、フロラ様は俺のことを褒めちぎってくれた。




「あなたが死んでしまうなんて、わたしの失態です。あなたは、魔王をものの一年で倒してみせました。だのに、リフニア国の人たちったら、変態です」




 あ、女神様もあの潔癖腐れ王子のこと、変態だと思う?


「あなたが最初の勇者、魔王を倒したあなたが余生を幸せに暮らせるかどうかで、世界の危機が再び訪れたときにあなたの日本という世界と繋げるかの判断をしないといけません。最初の勇者である、あなたにかかっているのですよ。だから、特別に生き返らせるので、幸せになって下さいね」


「俺はモルモットかよ」




 てなわけで俺は生き返ったわけ。でも、女神フロラ様は余計なこともしてくれた。




「様々な魔法が使えなくなっていますね。特に大切な回復魔法が初級レベルでも使えないのは致命的ですね。生き返っても、道端の石に殺されてもおかしくありません」




 女神フロラ様の中では俺は何なの? アリ? アリ以下なの?


「では、首にチョーカーをつけて下さいね」


「っう」


 強制的に首にチョーカーが飛んできてきつく縛られた。あ、これ、やばい魔法じゃね?




「勇者様が二度も死んでしまっては格好がつかないので、がんばってかっこつけて下さいね」




「これはただのオシャレか!?」


「ちがいます。ほら、真ん中に漆黒の宝石がついているでしょう? その中にいます」


「いますって? 何が」


「勇者様のファンが」


「俺のファン!」




「嘘です」


「女神のくせに嘘つくなよ」


 ちょっと期待したし。俺って嫌われ者だから。



 フロラ様は頬を赤らめて屈託なく微笑んだ。




「でも、あなたの行いが正しければこの子もファンになるかもしれませんね?」




 漆黒の宝石からきらきらと出てきたのは、ピクシー妖精だ。服は真っ黒で邪悪な相棒に相応しいと、思ったが、何だか彼女は童話に出てくる妖精にそっくりでとてもかわいらしかった。


 使い魔として誰かにけし掛けるのは向いていない。



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