9.テンパるエミ
授業へ途中から参加したマモルに対して、先生や生徒、特に山田エミは一番同様していた。
授業は時間の流れと共に進み、ついに6限の終わりのチャイムが校内に鳴り響いた。すると生徒達は揃って歓喜の声をあげる。いつもの日常があった。だがその日常はみんなの日常であってマモルの日常ではない。
―――それはユミがこの場に居ないから。
「マモル君、ちょっといい?」
帰ろうとお尻を椅子から離した直後、毎度聞き覚えのある声が後ろからやって来る。
「やっさ……エミさん、どうしたんだ?」
「今やっさんって言いかけたのはひとまず置いておいて、ユミちゃん見なかった? 保健室から一度も帰ってないから早退したのかと思ったけど、そと履き玄関にあるし、かばんもここにあるし、何処行ったと思う?」
「それなら多分帰ったよ」
「どうやって?」
「うち履きで」
「うち履きで!? えっ……と、それって何か深い意味があるジョーク? それとも浅くて単純な方のジョークかな?」
「うん、まずジョークから離れようよ」
そうして一旦落ち着かせたマモルはアミに一つのプリントを渡す。
「数学のプリント? それ私貰ってるわよ? まさかやってこいって? と、友達になる代わりに? ど、どうしよう……、友達になりたいのはやまやまなんだけど、そういうなり方はちょっと………」
「アミさんって勝手に話広げる癖あるよな。安心して、アミさんとは一生友達になる予定はないから」
「いや一生かはまだ分からないでしょ!」
そうして出されたプリントを横に避けようとアミはするが、マモルは更に前に出してくる。
「これ、ユミのプリントだよ。数学の先生に持たされた今日の課題のやつ。良かったらこれアミさんがユミに届けてくれないかな? かばんと共に」
「やる! けど、マモル君も行かないの? 心配でしょ? うち履きで帰っちゃうし、それにそもそも私ユミちゃんの家何処にあるか分からないし」
「ユミの家はこれ見て行って。それじゃあ」
ユミの家までの道のりが書かれた紙を渡し、マモルはそのまま教室を出た。その行動はあまりにも早く何かから逃げる動きと似ていた。
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