7.大好きなんだ―――
勿論の事、その時のマモルは一瞬で信用の二文字を頭から消した。だがしかし、その信用は徐々に構築されていく。女が言う空想じみた話によって。
まず女の名前は天龍 亜光。職業探偵の年齢不明。女曰く、隠すのは理由があるからだそうだ。
そして信用を取り戻すきっかけとなったのが、アミが言った一言だった。
―――心鬼 守の父が『吸血鬼』である。と。
その一言は、マモルの疑問の全てを解決できる程完璧な物ではなかった。だがしかし、いくつかの疑問は解ける事となった。
一つ。父の頭からツノが生えていた事。
一つ。自分の身体能力が人間離れしている事。
その一言を信用する事は、その前に言ったことも肯定する事になる。
―――心鬼 守の両親を殺したのは『吸血鬼』である。
一つ。マモルの母の死体の首筋にあった二つの小さなアナ。
そして一つ。警察が信じてくれなかった証言。犯人の目撃証言。当時マモルが見た、化け物より恐ろしい容姿のした、犯人の人物像。ツノが生え、牙を生やし、マモルを睨めつけて去っていたアレ。
更にアミの言っている事を信用せざる負えなくなった。
あれから一週間である。
「恋人云々の話は置いといて、君はあの少女の事が好きじゃないのか? 見るからに………、と言うよりは明らかに茶髪の少女は君の事が好きそうだったぞ」
―――そんな事は知らない。まずユミの口からその言葉を聞いていない。
「―――そうか………」
「そうかって………、君も好きだったんだろ?」
「―――違う」
「………驚いた。私の勘が外れるとは」
―――だがこれだけははっきりと断言できよう。いや、断言しよう。
「大好きなんだ。俺は、ユミの事を―――」
そうして空を見上げて、雨と共に泣いた。泣く事しかできなかった。
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