ブレインダービーショウ

オマケ

アイ ノウ

第1話

 一面灰色で薄暗い無機質な部屋。その部屋には円柱状の大きな水槽が幾つも並び立っていた。

 その中の一つがごぽりこぽり、と水泡とともに音をたてる。水槽の中では溶液に包まれている男がいた。

 その男は少年といっていい年齢ながら溶液の中で胎児のように体を丸め、水族館のような円柱状の水槽に浮かんで納められていた。

 そんな無機質で不気味な部屋に突如として入ってくるものがいた。ただの壁に見えた灰色が開き、光指す向こう側から騒々しいまでの駆動音を響かせあっという間に部屋を満たす。

 水槽に眠る男を取り囲んだのは機械群だった。長く太い針や丸のこ、小型カメラ等が触手のように蠢いて近づいてくる。人間であるならば、いや生物ならば不安に叫びだしたくなる状況。

 しかし男はまだ目を覚ます気配がなく、無情にも恐ろしい凶器たちとの距離はなくなる。

 機械群は男のいるケースに穴を開けると、溶液が零れるのにも構わず男に無数の器具を突き刺していった。

 本来であれば激痛に目を覚ましてもよさそうなものを、それでも男は目覚めない。

 やがて男の全身は機械で包まれ、無機質な音が部屋に響いた。

 

 ――肉体強度、測定値Dマイナス。規定値を下回ったため強化歩兵化措置を棄却します。


 ――精神強度、測定値Bプラス。規定値を上回ったため生体ユニット化措置を実行します。


 下された判定に機械群は無慈悲に行動を開始した。

 無数に刺さっていた器具は取り外され、奥から新たに現れた機械が男の頭を固定する。そして固定された頭にあてがわれたのは、高速で回転する丸のこ。

 丸のこは甲高い音を鳴らしながら男の頭蓋骨を瞬く間に割った。空いた穴から血とも髄とも知れない液が溢れるのを、それでも機械群は躊躇しない。また現れた別の機械が穴の中へ器具を滑らせていく。

 そして男から取り出された脳は銀色に輝く小さな円柱のケースに納められ、満足したのか脳の入った銀缶を持って機械たちは去っていった。

 後に残ったのは溶液を垂れ流す水槽が一つ。そして無惨にも脳を抜かれて打ち捨てられた男の体のみだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る