【書籍化!】ぽんこつかわいい間宮さん~社内の美人広報がとなりの席に居座る件~

小狐ミナト@ダンキャン〜10月発売!

第1部 プロローグ 超美人広報 間宮さんと俺

第1話 美人広報の間宮さん

 俺は社内エンジニアとして結構有名なIT系の代理店で働いている。と言っても意識高い系のエンジニアじゃなく、ゴリゴリの陰キャだ。そもそも、エンジニアの俺が所属する開発部の奴らはほとんどがリモート勤務で、一番若くて下っ端の俺だけが出社させられている。


「おはようございまーす」


 そこそこ有名な企業なだけあって、うちの会社の女子はすこぶるレベルが高い。営業部の女子はほとんどがカメグラ(カメラグラムという写真投稿SNS)フォロワー3000人超えの素人カメグラマーだし、中にはミスコン出身者や元モデルっていう経歴の子もいるらしい。


「はよっす」


 俺は開発部の部長……つまりは俺の上長に挨拶をして席についた。俺たちが座るデスクの島は社内で一番落ち着いているのに営業部の女の子たちが拝める最高のゾーンだ。

 今日も眼福、眼福。


「あっ、おはようございます。三島さん、採用者の件なんですが〜」


 と俺の上司に声をかけてきたのは人事部の子だ。確かどこかの大学からインターンに来てる女子大生でこの子もインフルエンサーだったっけ?

 今は採用アシスタントとしてアルバイトをしているがゆくゆくは新卒採用されるらしい。

 若いっていいなぁ……そういう俺もまだ24だけど。でもまぁ、女子大生から見れば俺なんておっさんだよなぁ。


「おはよーございまーす」


 その声がすると会社の中の視線がぐっとその子に向いた。その子は片手に有名コーヒー店のテイクアウトカップ。何が入っているのかわからない小さなカバン、今日もナチュラルメイクなのにとても美人。

 いつ写真に撮られたって構わないといった自信満々の笑顔。


 ——広報の間宮さんだ


 イケイケな営業男子たちがざわつく。それもそうだ、彼女は某有名大学のミスコングランプリ、各大学のミスコン制覇者しか出られない大会でもファイナリストになった経歴のあるとっても美人な子なのだ。

 おまけに性格も良く、悪い噂を聞いたこともない。俺が言うんだから本当だ。


 開発部、ではあるが俺は法務部と人事部に頼まれて社員や採用予定者のSNSチェックをさせられている。プライベートのSNSに何かまずいことを書いていないか、社名を公表してSNSをしている以上ネガティブな投稿も避けたいということだった。

 ということで俺が勤務中の空き時間を使って社員たちのSNSを収集したのだ。表のアカウントから裏アカウントまで……。

 例えば、営業の美人な子はパパ活用のアカウントを持ってたし、採用アシスタントの子は裏垢で死ぬほど悪口を言ってたりする。


 広報の間宮さんだけはそう言うそぶりもない。それに間宮さんの周りの友達も彼女をのことを悪く言っている人はほとんどいない。


「おはようございます」


 俺と目があうと彼女はにっこりと微笑んで挨拶をしてくれる。俺みたいな陰キャにも分け隔てなく接してくれる女神様だ。


「ざっす」


 俺はそっけない挨拶をする。まぁ、誰にでもこんな感じだし、俺みたいなキモいのに見られても間宮さん怖いだろうし。

 間宮さんが過ぎ去るのを待つ。俺はPCに目を向けて特に予定がないのにソースコードを開いて読んでいるフリをする。


 ——あれ?


 横目で見える間宮さんが動いていないような?

 彼女は多分、俺に挨拶したまま止まってないか?


 コツコツとヒールの音が近づいてくる。え? 間宮さんの席に行くのにこっちを通る必要ないよね? あぁ、俺の上司に用か……。


「藤城さん」


 ほらね、うちの上司と広報関連の話で……って今俺の名前呼ばなかった??

 彼女が俺の名前を呼んだせいで社内の空気がピタリととまって、全視線が俺たちに集まる。

 えっと……


「は、はい?」


「ちょっと手伝って欲しいことがあるんです!」


 あぁ、仕事の話か!


 俺、社内エンジニアだし! 彼女は広報だから何かそのページの修正とかかな!


「お昼に話すので、今日のランチの予約させてくださいっ」


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