【WEB版】氷結系こそ最強です! ~小さくて可愛い師匠と結婚するために最強の魔術師を目指します~
日之影ソラ
第一章
1.氷結魔術は最低です?
十歳の誕生日を迎えると、魔術属性の適性検査を受けることになっている。
優れた魔術師を何人も排出している名門貴族ヘルメス家。
その三男に生まれた僕も、周囲から高い期待を向けられていた。
二つ上の兄は、検査で六つの属性に適性があり、その中から父と同じ炎属性を選んだ。
一つ上の兄も、五つの属性に適性があって、そこから雷属性を選んだ。
どちらも攻撃力が高く、貴族の中でもより優れた魔力量、術式センスを持つ二人は、一族でも一二を争う実力者になるだろうと言われている。
そして今日が僕の番だ。
会場に入ると、他の子たちが順番に並んで検査を受けていた。
俺は両親と一緒に、順番を待つ。
「ラルド様」
「おや? そちらも今日でしたか」
「はい。こら、ちゃんと挨拶せんか!」
「……こんにちは、ランド様……フレイ様」
父上の知り合いの貴族とバッタリ鉢合わせした。
同い年の子供も一緒だ。
彼の名前は知らないけど、僕のことをあまり快く思っていないのは伝わる。
「こんにちは、よろしくお願いします」
僕は元気よく挨拶をして、握手を求めた。
彼は少し嫌そうな顔をして、背中を父親に叩かれて、しぶしぶ手を差し伸べた。
い、痛い……
強く握ってきた。
父親は、僕の父上にヘコヘコと頭を下げている。
同じ貴族でも上下関係があって、彼のほうが下ではあった。
僕は気にしていなかったけど、大人たちは熱心で、彼はそれが嫌だったのだと思う。
二人と離れて、僕らも順番を待つことになった。
検査そのものは公平に行われる。
順番待ちは、基本的に貴族優先で、僕らが来た時にはたくさん並んでいたけど、優先的に近い方へ回してもらえた。
「どうした? 緊張しているのか?」
「ただの検査よ。何も心配はいらないわ」
「……はい。でも……兄さまたちみたいに僕もなれるのかわからなくて……」
「それこそ心配はいらない」
「どうしてですか?」
「お前は私たちの息子だ。才能がないなどありえない」
「父上……」
父上と母上は、優しく僕を見て微笑んでくれた。
二人の期待に応えたい。
強くて、格好良い兄様たちのようになりたい。
そう思っていた。
順番はまだ回ってこない。
簡単な検査ではあるけど、時間がかかっているようだ。
緊張しなくて良いと言われても、そう簡単に解れるわけじゃない。
そんな僕を見て、父上が気を紛らわせようと話をしれくれた。
「フレイ、お前はどの属性が良いんだ?」
「僕も父上と同じ炎が良いです!」
「そうかそうか、お前も炎が良いか。グレーも同じことを言って炎を選んでいたな。シルバは炎属性に適性がなくて落ち込んでいた。雷も十分に可能性を秘めているのに」
「ふふっ、子は親に憧れるものですからね」
父上は現役の魔術師で、王国内でも極わずかな人間しか選ばれない一級魔術師の一人だ。
炎魔術の第一人者でもあって、僕以外にも憧れている人は多くいると思う。
「僕も将来は一級魔術師になって、父上と一緒に働きたいです!」
「ああ、お前ならなれるとも」
「はい!」
話しているうちに時間が過ぎて、僕の順番が回ってくる。
「フレイ・ヘルメス様」
「ん、呼ばれたな」
「はい!」
僕は両親と一緒に、検査部屋に入る。
部屋の中心には自分の体の五倍は大きい水晶あって、金色の金具で固定してある。
この水晶に手をかざすと、適性のある魔術属性がわかる。
基本属性が七種、それ以外の特殊属性も合わせれば、その種類は二十を超える。
適性があった候補の中から一つを選び習得すると、他の候補の属性は使えなくなる。
何でも良いわけじゃない。
属性には当たりはずれがあって、選んだ時点で魔術師としての成功の七割は決まるとさえ言われていた。
父上と同じ炎属性がありますように。
もしもなかったら、僕も雷属性を選ぼう。
どちらか片方はあるだろう。
僕だって、父上の子供なんだから。
そう、思っていた。
水晶の輝きが弱まり、検査員が確認する。
どうやら検査は終わったようだ。
ただ……
「……た、大変申し上げにくいのですが……」
「どうした?」
不穏な空気が漂う。
検査をしてくれた男性が、言いづらそうに目を逸らす。
「何なのだ? ハッキリ言いたまえ」
「は、はい。フレイ様の適性属性は……氷のみです」
「……は?」
「で、ですから、氷属性にしか適性がないのです」
その場が凍り付いたように静まり返る。
冗談ではない。
僕も両親も、自分の耳を疑った。
検査員ですら、己の目を疑っているほどに。
「ふ、ふざけているのか? そんなはずがないだろう!」
「い、いえ検査に間違いはありません。残念ですが他の属性は浮かび上がってきませんでした」
「ありえん! 絶対にありえん! もう一度計り直せ!」
父上の怒鳴り声なんて、生まれて初めて聞いたと思う。
とても怖くて、僕の身体は震えていた。
鋭い目で僕を見る父上。
震える手をもう一度かざし、検査をし直す。
しかし、結果は変わらなかった。
「馬鹿な……」
絶望している父上を見て、僕は何も言えなかった。
背負っていた期待に穴が開いて、空っぽになっていく。
帰り道は一言も話さなかった。
僕は父上の顔も、母上の顔も、怖くて一瞬たりとも見れなかった。
見なくても、怒っているだろうとわかったからだ。
適性属性の少なさはもちろんだが、よりにもよってその一つが氷属性。
誰もが選ばない不遇属性だったのだから。
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