第38話 一丁そろそろ更新しないと

夜中の2時、3時というのは私にとって微妙な時間だ。

ちょうど薬(ヤク)が切れる時間で、起きてきて体内にそれを流し込むのだが、ついついカクヨムなどを開くと、そこで目が覚めてしまって、眠れなくなる。

1時間以内くらいに再び眠りにつかないと、次の日に影響するから、とじっと目を閉じるのだが、眠れない時はどんなに頑張っても眠気が来ない。


そこでたとえば学生時代に入っていた映画研究会などのサークルを、何の脈絡もなく思い出したりする。


すると、せっかく自分に好意を持ってくれた貴重な、殊勝な趣味の女の子などを思い出したりするわけだが、実は私には別に気に入ってる子がいて、その殊勝な女の子の貴重で,価値ある気持ちに応えてあげなかった悲しみなどを思い出したりするわけだ。


と、その気に入っていた女の子と組んで主役を務めた8ミリフィルムは、今誰が持っているだろう、ああ、キスシーンのひとつもあればよかったが、そんなのてんでない、色気のない作品だったなあ、など思い出す。


と、今あの子はどうしているだろう、法学部の、頭のいい子だったなあ、可愛かったなあ、あのフィルム、もう見ることはないだろうな、などと自分のたった一本の出演作品が、とても貴重なものに思えてくる。


学生の、下手の横好きが集まったサークルだから、作品も今思うとロクなもんじゃない。

しかし当人たちは当時真剣で、気絶して、覚醒するカットなども、一生懸命カッコつけて、カオの半分を影にしたりして、何時間もかかって撮影したのを思い出す。


私はそれこそ、アラン・ドロン(知らない方ごめんなさい)になったような気分で、ゆっくりと目を覚ますカットに、何度も挑戦したものだ。


そうして出来上がった30分くらいの作品は、コンテストで見事予選落ちし、落ち込んだ監督初め、助監督、カメラマン、照明、主役の2、3人、皆で煽るように飲むわけだ。


私の、日本での唯一青春と呼べるかもしれない一幕をそこでカットにして、私は寝なければならない。

明日があるから。

希望の明日ではなく、最低限の生活をするための、沈滞した明日だ。


「カット!」

私は思い出にフタをする。2度と訪れない時代に、さよならを言う。

あの記憶はこうしてさらに私のうちで擦り切れていくだろう。

栄光の、30分の8ミリフィルムは、もう見ることはないだろう。

ちっぽけな、それでも、自分にとっては輝かしい記憶。


もう一度「カット!」 さあ、寝ないと。

つらい明日が待っている。

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