第25話 素晴らしきかな、人生。

同僚に、仕事のことで色々頼み事をされた。


困ったな。もう、この歳で面倒なこと、大変なことはやりたくない。


咄嗟に出たのが病院通いの言い訳だ。


「実は甲状腺に大きな腫瘍が見つかりまして」


「あっ、そうなんですか」


「来週検査なんですよ。ちょっと病院通いしなくちゃならなくなりそうで」


「はあ」


「首にね、こう、針をですね、刺してですね、細胞の検査ですよ」


「それはイヤですね」


「イヤなんですよ、これが」


「ですよね。悪性じゃなきゃいいですね」


「ありがとうございます。まあ、病気は嫌ですね」


「でも、レネさんなら大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。でも、なので、そっちの方は・・・」


「分かりました。他の人に頼んでなんとかしてみます」


「すみません。お役に立てず」



何とか、急場をしのいだ。


でも、まさか、大丈夫だろうな。


勝手に大丈夫とたかをくくっているが、ほんとに検査イヤだな。


きょうはワクチンの1回目も打った。


色々面倒が続くなあ。


ま、いいか。

イヤな頼み事逃れられたし。


えっ、明日も大雨だって? 仕事なのに。


何だよ。やなことばかりじゃん。


しかし! 人生は素晴らしいのであった。

そう、思わなくちゃね。

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