サヨナラからはじまった特別個人レッスンで毎晩俺は美少女達にしごかれ日本一可愛い女子高生と同棲することに
逢坂こひる
第1話 運命の1球
この1球が運命の分かれ道だった。
もし、この1球が狙い通りに投げられていたら……俺の青春は全く違う物になっていたかもしれない。
——試合は9回裏、ツーアウト2、3塁、3対2で我が校が1点リード。
迎える打者は2安打2打点2四球、絶好調の敵4番。
ベンチからのサインは際どいコースを突いての歩かせ、もし振ってくれたら儲け物のボールゾーン勝負。
俺も同意見だ。
満塁策は置きに行って腕が振れなくなる可能性もある。1点とはいえウチがリードしているのだから、きっと相手の方が精神的に追い込まれている。
だから、いくら相手の調子が良くても振ってくるだろう。
そう考えていた。
——そして期待通り、絶好調の敵4番はボールゾーンの球に手を出してくれて、カウントは1ボール2ストライク。
あとアウトひとつ、いや、あとストライクひとつ取れば夢の甲子園というところまで来ていた。
焦るな……、
ストライクは必要ない。
俺は、次の1球を落ちるスライダーで外角低めにボール2個分外すつもりだった。
……しかし、
スライダーは曲がらず、力の無い甘い球がど真ん中に投じられた。
「しまった!」
絶好調の敵4番がこの棒球見逃すわけもなく、打球はぐんぐん伸びていき……、
我が校の応援で満員だった、レフトスタンドに消えた。
そしてその瞬間、マウンド上で呆然と立ち尽くす俺に、容赦なく割れんばかりの大歓声が浴びせられた。
痛恨の極みだ。
掴みかけていた夢が手のひらから
何でここなんだ……よりによって、何でここで失投したんだ。
頭の中を沢山の『何で』が支配した。
色んな感情が込み上げてきた。
……俺たちの夢はあと1歩届かなかった。
——誰の目にも明らかな失投だった。
なのにベンチへ帰っても、誰も俺の事を責めなかった。
むしろここ迄、よくひとりで投げ抜いたと称えてくれた。
目頭が熱くなった。
胸が張り裂けそうだった。
俺はいい……俺は1年だ。
まだチャンスはある。
……だけど、3年の先輩は。
***
俺たちは学校に戻り、先生の話しの後、部室で解散した。
……俺たちの夏は終わった。
俺は皆んなとは帰らず、部室に1人残った。
いつも一緒に帰る面子も察してくれたのか、先に帰ってくれた。
1人になり、俺は込み上げてくるものが抑えられなくなって声を上げて泣いた。
作戦は間違えていなかった。
配球も完璧だった。
だけど……俺は皆んなの期待に応えられなかった。
正直キツかった、誰か1人ぐらい俺の失投を責めて欲しかった。
そうしたら、少しぐらい自分を慰める事が出来たのに……これじゃ自分を責める事しかできない。
——散々泣いて、少し落ち着いたところで俺は部室を後にした。
「
部室を出ると1人の女子生徒に声を掛けられた。
ていうか、この人知ってるぞ……確か日本一可愛い女子高生大会に勝手にエントリーされて、優勝した2年の
とろんとしたパッチリ二重に、少し大人のイイ女感が漂うゆるふわロブヘアー。めっちゃ整った顔立ちなのに少し低めの鼻がチャームポイント。
胸は大きいんだけど、大き過ぎない。
パーフェクトスタイルだ。
さすが日本一可愛い女子高生……直視出来ない可愛さだ。
「はい……武田です」
「そう拓哉、あなた今まで部室で1人メソメソ泣いていたの?」
イキナリ下の名前で呼び捨てられた!
しかも、ど直球で胸を
「……メソメソなんてしてません」
「そう、でも拓哉が今しなくてはならない事はメソメソなんかじゃないわ」
は……話し聞いてねぇ。
「取り敢えず、部室に戻って」
「えっ……俺、今から帰るところなんですけど」
「奇遇ね、私もよ、時間は有限なの、早くして」
立花先輩に手を取られ、部室に連れ戻された。
あんなにもショックな出来事があった直後だと言うのに、俺は不覚にも少しドキッとしてしまった。
だって……16年間生きてきて、こんな風に女の子に手を取られたのなんて、はじめてだし。
しかも相手は日本一可愛い女子高生の立花先輩だし。
立花先輩……いい匂いだった。
「時間がないわ拓哉、早速脱いで」
「へ」
何を言ってるんだろ……この人。
「ぬ……脱いでって、どういう意味ですか?」
「……拓哉……そんな簡単な日本語も分からないほど、あなたのオムツは残念なの」
顔を手で押さえてめっちゃ残念そうにする立花先輩。何だろう突然現れて意味不明な事言い出して、この仕打ちは……。
「残念じゃないですよ! それに、それを言うならオムツじゃなくてオツムでしょ!」
謎の沈黙があった。その間、立花先輩は俺を直視していた。めっちゃ照れる。
「合格よ、拓哉の注意力をテストしてあげたの……嬉しいでしょ?」
……何でそうなる。
「嬉しいでしょ?」
めっちゃ睨みをきかされた。
「嬉しいです……」
俺は気圧されてしまい、これ以外の言葉をチョイスする事が出来なかった。
「拓哉、何をしているの、早く脱いで」
この人……可愛いけど主張が激しい。
「脱いで、何をするんですか?」
「イイことよ」
俺は一瞬にしてパンツ一丁になった。夢破れたばかりだが、もうひとつの夢が叶うかもしれないと期待する本能故の行動ってやつだ。
因みにもうひとつの夢は可愛い彼女を作ってイチャラブ高校生活を送る事だ。
「いい身体ね」
立花先輩が人差し指で首筋から下腹部辺りまでをなぞった。
「はうっ」
思わず声が出てしまった。
「敏感なのね……声を上げるにはまだ早いわ、本番はこれからよ」
そう言って立花先輩は長机を指差した。
「そこにうつ伏せになって」
うつ伏せ?
俺は言われるままに、長机にうつ伏せになった。
「やっぱりいい身体ね」
立花先輩は俺の全身を撫でるように触った。何とも言えない変な気分だ。
また、声が出そうだったけど我慢した。
そして立花先輩が俺の右側に周り、腕を取った瞬間、右腕に痺れるような激しい痛みが走った。投げてる時は全く何も感じていなかったのに。
「やっぱり……痛むのね」
やっぱり?
「もう服を着ていいわ」
え……まだ何もはじまっていないけど?
物欲しそうな顔で立花先輩を見ていると、
「どうしたの? 露出癖でもあるの?」
「違います!」
あらぬ疑いを掛けられた。
釈然としないまま服を着ると、立花先輩が手を差し出してきた。
「今日から拓哉のトレーナーになる、
えっ……トレーナー?
「拓哉あなた握手も出来ないの?」
握手も何も意味が分からない。
でも、俺は立花先輩に気圧されて、その手を取っていた。
「よろしく拓哉、結衣里でいいわ」
運命の1球がもたらした運命の出会いだった。
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