モニカとして私は生きる【2】
「モニカ! しっかりして下さい……!」
モニカが目を開けると、目の前にはマキウスが心配そうに覗き込んでいたのだった。
「旦那様……。マキウス様……」
モニカが起き上がろうとすると、マキウスは「まだ寝て下さい」とモニカをそっとベッドに押し戻したのだった。
「急に何があったんですか? 突然、苦しみ出したかと思うと、意識を失って」
モニカが意識を失った後、マキウスは屋敷の近くに住んでいる医師を呼んでモニカを診てもらったが原因がわからなかったらしい。強いて言えば、ニコラの育児疲れではないかというのが、医師の見立てだった。
「私は、今度こそ、貴方を失うかと思いました」
「マキウス様……」
マキウスはモニカの汗ばむ額を、そっと撫でたのだった。
「先程、お話しした通りです。貴方の様な素敵な女性を失いたくありません。私はまだ貴方の事を何も知らない。これから知りたいと思ったばかりです」
「私もです。マキウス様」
モニカはマキウスに微笑んだ。
「私もマキウス様の事をもっと知りたいです。貴方がどんな人なのか……。どんなに素敵な人なのかを」
「モニカ……」
「マキウス様」と、モニカはそっと呼びかけた。
「私の中にいた『モニカ』は旅立ちました」
マキウスはハッとした顔をした。
「旅立つ時に、『モニカ』は私に『みんなをよろしく』と言いました。そうして、私の意識は『モニカ』と混ざり合いました」
モニカは息を吐いた。
「そうして、私はモニカになりました」
「ようやく? いや、やっとなれたのかな?」とモニカは悩んだ。
先程までの、ここ数日悩まされていた割れるような頭の痛みは、今はすっかり治っていた。
そして、身体の中から聞こえてきた『モニカ』の声を消えていた。代わりに身体の中には、どこか喪失感だけが残っていたのだった。
頭の痛みは『モニカ』が持っていってくれたのだろうか。それとも、頭の痛みこそ『モニカ』だったのだろうか。
今では、もうわからないが。
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