大学の友達から聞いた話。3

 二つ目は渋谷にあるとある雑居ビルでの出来事だ。


 何か気になるカフェかレストランがあったので、そのビルへ向かった気がする。

 場所は多分最上階。階段で上り、行き止まりのようなところにそのお店はあった。もしかしたら他の階段で上に行けたかもしれないが、そう大きなビルではなかった記憶がある。

 まだ学生だったので、軽々と階段を上る。

 ただ生憎その日は定休日だったようで、店内は真っ暗。入り口のドアには鍵がかかり人影はなく、椅子もテーブルの上に片付けられていた。

 「残念だったねー」と話しながら階段を降りていたとき、踊り場で後ろにいた私の方を振り返ったNさんは、驚いたようにまた階段を上りその先を覗き込んだ。

 突然の行動に慌てて私も彼女の元に戻った。


 聞けば、Nさんは上っていく人を見たのだという。

 しかし、階段の先にあるお店は閉まっている。一応店前まで戻り中を見てみたが、先程と変わった様子はない。暗い店内が広がっている。

 そもそも私達は階段で誰ともすれ違っていないし、後ろにいた私には足音などは聞こえなかった。

 もしお店の人が帰ろうとする私達に気づいて追いかけてきたのだとしても、私達に声をかけずに戻るのはおかしい。

 これがただのNさんの見間違いならいいのだが、普段から何かを感じているような雰囲気のある彼女の言うことなら、と信じてしまう私である。


 帰りの階段は怖かったので先に降りさせてもらった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る