第110話 相変わらずのイケメン

「やあ、エル。帰ってたんだね」


フレデリカ姉様と稽古を終えて、お風呂に向かっているとマルクス兄様と出くわす。


相変わらずお疲れ気味でも、イケメン具合に陰りのない我が兄だが、それでも色々と仕事も多いのか隠しきれてない社畜オーラが出ていた。


「はい、兄様はご休憩ですか?」

「うん、僕も外の空気を吸いたくてね。エルも良ければ少し話さない?」

「はい、喜んで」


お風呂にも入りたいが、兄との会話も必要だろうと思って大人しく着いていく。


中庭に行くと、相変わらずの太陽の日差しが凄いが、それでも外の空気に違いはないので、眩しそうにしながらも兄様は少し落ち着いたように言った。


「ダルテシア王国と行き来してると、やっぱりここの過酷さを改めて実感するよね」

「ですね」


これでも、他の砂漠地帯に比べるとマシなのだが、それでも寒暖差などの過酷さで言えば我が国は圧倒的に過酷な部類に入るのであろう。


「エルの正妻になったレイナ様は、向こうのお屋敷に住むことになるのかな?」

「候補の一つではありますね」


ずっと俺が魔法でサポートするのも難しいし、あまり過酷な環境では厳しいだろうからね。


「でも、びっくりしたよ。ダルテシア王国にはレフィーア姉さんとその家族に会いに行ったのに、王女様を助けて婚約して、爵位を貰って、裏組織を潰してって、物語の英雄みたいな活躍するんだもの」


……言われてみると、確かにそうかも。


英雄とか、大変そうでなりたいとは思わないが、改めて事実を提示されると否定しずらい。


うーむ、まあ、レイナの件は後悔してないし、爵位もこれから出来る子供のためには貰っておきたい。


『狂犬』の件では、バルバンとセリィの優秀な二人を引き抜けたのでかなり良い事案と言えた。


やはり間違ったことはしてないかな。


「色々と、お手間をかけてすみません。マルクス兄様」

「気にしなくていいよ。可愛い弟のためだし、それに爵位の件は前々から父上と決めていたからね」


俺に貴族位を分けて、独立させるのは前から決まっていたらしい。


婿入りという選択肢もあったが、その相手よりも国内に居てもらった方が何かと便利だからだろう。


まあ、とはいえ、過去に貴族位として分けることはあまり前例が少なかったらしく、どうするか父様も色々と思案していたが……レイナの件でダルテシア王国の国王陛下と話し合ってそういう結論になったらしい。


「何にしても、エルのお陰でダルテシアと前よりも密な関係になれて良かったよ。遠い両国だけど、交友は続けられるし、密会もエルのお陰でスムーズだしね」


家族のために少しタクシーをしているのだが、お役に立てて何よりだ。


「そういえば、新しい子を側室に迎えるんだって?」

「えっと、そうなるかもしれませんね」


セリィのことまで知ってるようだ。


「アイリスさんは予想通りだったけど、三人目か……エルは意外と好色なのかもね」

「マルクス兄様の方が多く娶りそうですけどね」

「僕個人としては、一人で十分なんだけどね」


我が父に似て、やはりマルクス兄様としても妻は一人でいいようだ。


ただ、父様が妃に母様しか迎えなかったこともあるので、次の世代のマルクス兄様は二人くらいは娶らないといけない空気になりつつあるようだ。


何とも大変そうだが、マルクス兄様は自らこの大変な父様の跡継ぎとして王太子をしているのだから凄いものだ。


自慢の兄だよね。


「エルが仕事を斡旋してる、向こうのスラムの人達で、こっちでも住めて優秀そうな人達が居たら紹介してね」

「ええ、何人か候補も居ますので」


丈夫でその上有能そうな人も結構な数居たりする。


素性もバルバンが調べたが、問題ないどころか結構不遇な人達なので出来れば救いたいが……その辺はマルクス兄様にお任せしてもいいかもしれない。


うちの国は過酷で、人手不足もあるから、優秀な人材は大歓迎なのだろう。


まあ、俺としても何人かは確保しておきたい。


使用人とかは必要だしね。


謎に信仰してくる人達もかなり優秀なので助かるが、普通な人達も欲しいところ。


「何にしても、大変そうだけどよろしくね」

「ええ、兄様もお身体に気をつけて。何かお手伝い出来そうなことがあれば手伝いますので」

「向こうとの行き来だけでも十分に手伝って貰ってるよ」


それだけでは足りないくらいに苦労してそうだが……まあ、本人が楽しんでいるので、あまり水も差せない。


倒れないか心配になるが、父様も上手いことコントロールしてるだろうし、婚約者とかが決まればその人に頑張って貰うことになるだろう。


マルクス兄様の正妻か……かなり重圧のかかるイケメンの隣を射止めるのは果たしてどんな女性なのか興味はつきないが、俺も俺で婚約者が増えてきたので、そちらに注意を向けねば。


そうして、マルクス兄様の休憩が終わるまで色々と話すが、久しぶりの兄との会話も中々楽しかった。


最近は義兄のジーク義兄様の方が会う機会が多かったが、実兄もやはりイケメンであった。


この世界はイケメンの比率がおかしい気がするが……美少女、美女もそうなので、おかしいとは一概には言えなかった。







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