第108話 婚約者とまったり

「平和だなぁ……」


忙しく動き回る俺だったが、流石にそろそろゆっくりしたい気持ちになったので、本日は何もする気はなかった。


「ですね、お天気も良くて良かったです」

「エル様、これも美味しいですよ」

「……主、あーんして」


右側にアイリス、左側にレイナ、そして後ろから抱きつくようにセリィ。


美少女に囲まれてのティータイムだが、場所はダルテシア王国の王城の中庭のとある一角にシートをしいて、日傘を差しつつも四人でのんびりとお茶を楽しんでいた。


トールはクレアと買い物に出掛けており、バルバンは所用で席を外しているが、ここは王城内だし、俺が感知の魔法を常にして警戒もしてるので、婚約者達に危害が及ぶこともない。


もし、本当に危ないのに気づけないような相手なら、セリィの方が先に気づくしその辺も心配してなかった。


というか、トールとクレアが俺の感知を掻い潜るのがおかしいのであって、本来は俺には丸見えなのだ。


尚、そのトールはクレアに今頃振り回されているだろうが……モテる男というのも大変そうなものだ。


「セリィさん、抜けがけはダメです」

「……じゃあ、順番に」

「それなら良いですよ」


……まあ、俺も人の事言えなくなってきたけど。


三人にあーんと食べさせて貰うのだが、めちゃくちゃ三人とも張り付いてきて柔らかく心地よい感触と、女の子特有のいい匂いでなんとも楽園にでも居る気になってくる。


「ふふ、美味しいですか?エルダート様」

「うん、美味しい」

「それなら良かった」


あまり動ける範囲が大きくない中でも、積極的に甲斐甲斐しくアイリスと一緒に給仕してくれているレイナ。


清純派美少女の笑みは本当に素晴らしいものだ、


「エル様、エル様。こちらもどうぞ!」

「うん、ありがとうアイリス。アイリスにも食べさせてあげるよ」

「ふぇ!?え、えっと……先にレイナ様を……その……」


モジモジする、うさ耳美少女のアイリスは、婚約してから益々可愛さに拍車をかけていた。


レイナとも仲が良く、こういう場面で先にレイナをと立てることが出来るのもこの子らしくて良いと思う。


「……主、私にも」

「はいはい、順番にね」


そして、婚約者達に混じっているが、まだ婚約者ではないはずのセリィは、良くも悪くも婚約者達の和に馴染んでおり、当たり前のように俺に甘えてきていた。


正直、この手のタイプは初めてだが、何となくトールがクレアを断れない気持ちが理解出来てしまった。


なんというか、放っておけないんだよね。


そして、セリィのアプローチはかなり積極的なので、それに刺激されて純情な二人も俺に控えめながらもアプローチが強くなる。


実に好循環と言えた。


セリィが布団に潜り込んだ一件以来、アストレア公爵家で屋敷の完成まで俺と住み込むようになったレイナも添い寝に加わり、四人で寝ることが多くなったが、悪夢を見たりすることが無くなったのは良い事かな?


まあ、起きると誰かしらを抱いてたり揉んでたりするのだが……決して意図してやってるのではなく、不可抗力だと言いたい。


そもそも、寝てる時の寝相なんてどうしようも無いしね。


ただ、大体が手に感じる柔らかい感触と、どこか悩まし気な声で起こされるのは、遠慮したい。


イケないことをしてる気になるしね。


「しっかし、賑やかになったなぁ……」


前までは一人だったのが、アイリスとトールが増えて三人になって、クレアとレイナ、バルバンとセリィが加わって、益々俺の周りは賑やかに。


「……主の場合、多分もっと女の子増える」

「何人でも大丈夫ですよ。三人で頑張ってエルダート様を私達に夢中にさせましょう」

「はい!」


セリィの怖い予測にも、前向きな意見のレイナとアイリス。


にしても、本人の前でこんな会話をするのが凄いな。


そんな事しなくても、俺はもう既に夢中なのだが……まあ、微笑ましいし黙っていよう。


「レイナ、アイリス、セリィ」


三人がその声で俺を見てくるので、俺は改めて言うことにした。


「色々と足りないところもある俺だけど……三人ともこれからも側に居てほしい」


その言葉に照れる二人と、嬉しそうな一人。


前者がレイナとアイリス、後者はセリィだ。


セリィのそれは、嬉しいのと『言質を取った』みたいにも見えたが……まあ、この子ならいいかなと思える辺り、俺はこの子を気に入っているのだろうな。


毎日血を上げているのだが、それはもう幸せそうに飲むので、なんか和むんだよね。


アイリスやレイナの時にも思ったけど、こういう食べている時に幸せそうな女の子って素敵だよね。


そういうタイプに弱いのだろうか?


気持ちの良い風を感じながら、婚約者達とまったり楽しむ。


シンフォニア王国の気温やオアシスが恋しくもなるので、次は向こうでお茶でもと考えておこう。


レイナやセリィは向こうに慣れてないだろうし、アイリスも久しぶりなので、思い出すまでは魔法でのサポートは必須だが、オアシスは綺麗なので気に入ってくれるはず。


色んな楽しみを想像しながらも、婚約者達にあれこれと世話をされて癒される。


うむ、本当にいい時間だ。








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