第88話 晩餐の時に
「エルダート様」
「エル様!」
色々あってから、アストレア公爵家に戻ると、レイナとアイリスが出迎えてくれる。
美少女2人が出迎えてくれる今世……我ながら、夢のようなシチュエーションと言えよう。
「ただいま、レイナ、アイリス。姉様とは楽しく過ごせた?」
「はい、エルダート様と同じくとても優しい方ですね」
そうかな?
俺よりも圧倒的に姉様の方が優しい気もするけど……
「そうそう、色々あって屋敷を貰ってね。2人も後日見に行くといいよ」
「お屋敷ですか?エルダート様はこちらに住むのですか?」
どこか期待するような視線を向けてくるレイナ。
「まだ未定だけどね。一応屋敷はあって損は無いし、本拠地か別荘かはもう少し色々と決めてからになるかな。でも、どこに住むとしてもレイナとアイリスは連れてくつもりだけど」
そう言うと2人は少し照れたように嬉しそうに微笑む。
なんか、見てて癒させるコンビだな。
うむうむ、これはいいなぁ。
「えー!もっとここに居ればいいのにー!」
「姉様、ただいま戻りました」
「うん、おかえりエル。じゃなくて!ずっとウチに居ていいのにー!」
レフィーア姉様も話に加わってきたが、どうやらレイナとアイリスのことを相当お気に召したようだ。
あとは、末っ子の弟の俺のことも気に入ってくれているのだろう。
「それじゃあ、ラブラブなお二人に申し訳ないですし。それに、屋敷といってもこの屋敷の隣の屋敷なので距離的にはご近所ですよ」
「ならいいかな」
「えっと……もしかして、あの大きな御屋敷ですか?」
納得したレフィーア姉様の代わりに、アイリスが驚いたように尋ねてくる。
来る途中、馬車でその大きさに驚き、さらに隣にあるアストレア公爵家に驚いたのは記憶に新しかったのでアイリスとしてはびっくりだろう。
「まあね。屋敷の人の手配と改装のための工事、色々必要なものを買って……準備には少し時間が居るけど、なるべく早めに手配しないとね」
最も、そこまで急ぐ必要もないけど。
二週間後に、俺はシンフォニア王国とダルテシア王国の両国から爵位を貰う。
とはいえ、この爵位というは俺のためと言うよりは、俺の子供のためという意味合いが強い。
爵位を貰っても、シンフォニア王国の第2王子という元の肩書きが消えることはない。
男爵位との兼任という形で、俺の子供が爵位を持てるようになるというのが一番意味合い的には強かったりする。
王位を継げない王子というのは、いくつかのパターンがあるが、王族の子供という地位自体はその本人だけの代で終わることが多い。
むしろ、王族から出て他の貴族家に入ったり、何かしらの道を見つけて自立する人も居るらしい。
まあ、王族に残り続けて当たり障りのない仕事をする人も居るらしいが、あまりに王族が増えすぎても困るので、その辺は上手いことコントロールするのが国王の義務でもある。
基本的には他の貴族家に婿入りすれば、その家が優先になるのだが、俺の場合は新設した貴族家の初代当主……しかも、二つの国の二重襲名なので、ややこしくならないように、シンフォニア王国の第2王子という元の肩書きが優先されるだろう。
その辺はケースバイケースだが、男爵位でもシンフォニア王国の第2王子という肩書きも加味されて結果としてほどほどの地位という特別な見方になると思われる。
うむ、実に貴族とは面倒だ。
まあ、一番大変なのは俺の跡を継ぐ子供たちかもしれないが。
代が変わる事に俺の持っている影響は薄くなるだろうが、それでも大変なのは間違いない。
なお、マルクス兄様に跡継ぎやその後にも子供達が出来てくると、俺の立場は父様の代の第2王子という感じになるのだが、影響力的にはそこまで変化はない。
気楽な第2王子のはずが、思えば遠くにきたものだ……
「そうなんですか。楽しみですね!」
「ええ、そうですね」
……まあ、目の前で微笑み合う天使達を見てるとなんか頑張れる気になるけど。
アイリスもレイナも可愛すぎじゃない?
その後、まだ仕事があり王城に残っていたジーク義兄様も帰還して、皆で夕飯を食べることになったが、俺がイケメン達と話してる間にレイナもすっかりとレフィーア姉様やアイリスと仲良くなってたようで楽しそうに話していた。
クレアとも打ち解けてたようだし、これから仲良く出来そうで良かったよ。
まあ、クレア的には外堀を上手いこと埋めていく気なのだろうが……その辺はトールの管轄なので俺は知らない。
その事に気づいているであろうトールは苦笑していたが、嫌な顔ではなく苦笑なのが本心を物語っていた。
というか、多分、情熱的に迫られるよりは、徐々に外堀を埋められる方が精神的な負担が少ないと判断して悟ったのだろう。
トールにとって、クレアは好みの女性なのだが、トールは真面目なのでそういう関係になるのはもう少ししてからと決めているから、この方が穏便に2人はくっつきそうだ。
何にしても、ガンバとエールを送っておく。
そんな感じで、和やかな夕飯を過ごせたが……レイナもアイリスも楽しそうで何よりだ。
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