第68話 ダルテシア王国国王陛下

国王陛下との表面上の謁見は直ぐに終わった。


一応、これでも第2王子だし、そこそこマナーとか礼儀作法も習っていたので、父様達の顔に泥を塗らないように精一杯、それっぽく振舞ったが、無難に終わってホッとする。


そして、謁見を終えると、俺とジーク義兄様はダルテシア王国の国王陛下と一緒の部屋にいた。


「さて、まずは良く来てくれた。私がダルテシア王国の国王、デウス・ダルテシアだ」


威厳タップリな、なんとも頼り甲斐のありそうな国王陛下はそう挨拶を簡潔に述べる。


「シンフォニア王国、第2王子のエルダート・シンフォニアです。本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます」

「いや、私も貴殿の噂は耳にしていてな。会ってみたかったのだよ」


先に、父様とマルクス兄様を呼んでこようと思ったのだが……とりあえず、まずは俺と話したいという国王陛下の言葉によって、保護者であるジーク義兄様同伴で少し話すことになった。


「アルバスからは自慢の息子と聞いていたが……なるほど、長男のマルクスといい、貴殿といい、中々に頼もしい息子を持ったようだ」


この言葉から、薄々分かってはいたが、父様とこの人はかなり親密なのだと思われる。


マルクス兄様のことも何度か会ってるからか、随分と分かってるような口振りだ。


まあ、こんな呼び方をするのも、プライベートに近いからこその内容なのだろう。


少なくとも、俺が謁見した時には固い呼び方をしてたはずだし。


「畏れいります」

「それでだ……転移の魔法が使えるというのは、誠か?」

「はい」

「ふむ……アルバスから聞いた時には冗談かと思っていたが……」


冗談かと思われるほどに数の少ない魔法だったらしい。


知ってはいても、大国の王様ですらそんな認識だとすると、下手に他国に行って偉い人に会うのは躊躇われるかな。


その辺は神様も考慮してなかっただろうが……まあ、神様は俺の希望通り、素敵な今世をくれたので、文句など微塵もない。


むしろ、サービスでくれた魔法の適性は普通に嬉しいものだ。


ただ、希少な魔法を使えるのは考えものでもあるかもだけど。


まあ、便利なのでその辺は気にしたら負けかな?


「何にしても、連絡が取りやすくなるなら有り難い」

「陛下、恐れながら……」

「分かっている。親友の息子を道具のように使う気はない」


……凄い、俺は今2人のイケメンに同時に感動してしまった。


ジーク義兄様は馬車での言葉通り、陛下に釘をさしてくれて、その国王陛下も分かっているとばかりに鷹揚に頷く。


ぐっ……俺とは住む次元が違う……


これが、ハイレベルの世界……


「まあ、でも、本当なら娘を嫁に出して縁を繋ぎたいところだがな。アルバスの話が本当なら、是が非でも親睦は深めておきたい。とはいえ、生憎と、ウチの娘は皆、難しいだろうからな。第1王女のリーンは既に他国に嫁いだし、第2王女のレベッカと第3王女のルベルカは婚約が決まっている。第4王女のサリナと第5王女のカリナも先日縁談を結んだばかり、第7王女のロレインと第8王女のハーメルンの双子も生まれたばかりだが、既に婚約を決めてしまった後……見事にタイミングが悪い。これでは難しいだろう」


凄いな、生まれたばかりなのにもう婚約が決まってるとか……まあ、大国ともなると、その辺は色々大変なのだろう。


しかし、第8王女まで居るとか……王子もそのくらい居るのかな?


側室もありとなると、子供の規模がおかしいよね。


ん?1、2、3、4、5、7、8……あれ?


「あの……第6王女様は?」


何故か飛ばされた第6王女の存在、あまり触れるべきでは無いような気もしたが、気になって思わず尋ねてしまう。


その問いに、国王陛下どころか、ジーク義兄様も少し悩ましげな表情を浮かべた。


……やぶ蛇だったかな?


この場合は地雷の方が正しいかもだが。


「うむ……あの子は少し特殊でな。嫁に出すのが難しいのだ」


嫁に出せない……なんか、引っかかる言い方をされてしまう。


病気とかってこと?


それとも、先天的な体の障害とか?


アレルギー持ちだった俺からしたら、それらの要因は他人事ではないので、先天的なものだったりすると、本当に辛いものだ。


生んだ親を恨みたくもなるかもだが……両親が俺の事を嫌いだろうと、俺をあの世界に生んでくれて、一応無視されて疎まれていても体裁を気にして育ててはくれたので、感謝はしている。


その前世がなければ、今世は無かったからね。


だから、親を恨むのは筋違いだろうし、そんな理不尽を受け入れて生きるのが人生なのだろうと、前世の短い期間に俺は学んだのだった。


今世がある分、俺はマシだけどね。


「そうなんですか」


うーん、何にしても詳しく聞いてもあんまり良い話は聞けそうにないかな。


そう思って、何となく申し訳なく思いながら相槌を打つ。


「だが……もしかしたら、貴殿なら……」


しばらくそうして、考えるように沈黙をしていると、ふと、真剣な表情を浮かべて国王陛下は俺に頭を下げた。


「頼む……娘を救っては貰えないだろうか」









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