第41話 チーズと牛乳
「おお!これは!」
夕飯の時間になり、宿屋の一階にある共用の食堂に行くと俺はその品を見て思わずはしゃいでしまった。
本日は幸いなことに俺達しか客が居ないそうで、自動的に貸切だが、食事に関してはよく食べる2人が居るので俺が多めにお金を出しており、机には様々な料理が並べられていた。
そして、その中でも特に俺が気になったもの。
「やったー!チーズだ!」
「ちーず?」
可愛らしく首を傾げるアイリスは、俺の視線の先を見て興味津々のご様子。
「あら?王子様は知ってるのかい?」
配膳をしている、さっきの看板娘さんのお母さんは俺の言葉に驚いたような表情を浮かべるが、無論知らないわけがない。
「もちろん。このチーズってこの村で作ったものなの?」
「ああ、そうだよ」
聞くと、数は少ないが牛を飼育してるそうだ。
ということは……牛乳もあるのか!
それは凄い!
ウチの国では入手が困難なものが早々に発見出来て俺は嬉しくなる。
聞けば、特産という訳でないが、伝統のようなもので作っており、割とこの村ではメジャーな食べ物だそうだ。
まあ、調理はあまりしないそうだが。
パンのオカズとして食べるのがポピュラーなのだそうだ。
勿体ない。
チーズがあれば、ピザとかも作れるし、カレーに入れて食べるのもいい。
他にも色々と食べたいものが浮かんでくるが、風呂上がりの牛乳も捨て難い。
俺は皆に先に食べてるように伝えて、女将さんに定期的に買いに来るために仕入れるルートの確保に移る。
食べてみて分かったが、かなり美味しいチーズなのでこれを入手出来れば俺はますます幸せな食事を食べれるというもの。
しばらく話して、今ある分で出来るだけ買い取っておく。
他にも作ってることがあるそうで、案内して貰って買える分だけ買う。
無論、その時に手間賃として多めにお金を出すのは忘れない。
皆、害獣の駆除で感謝してくれてるのか、割り引いてくれると言っていたが、意外と手間の掛かるチーズを買うのだから当然値段で妥協はしない。
「殿下は本当に変わってますね」
唯一、食事をお預けて護衛として着いてきたトールは俺の熱心な行動に大変呆れていが……君だってこれからお世話になるものなんだからいいでしょ?
料理にお菓子類と幅が広がって、家族にも美味しいものを食べさせてあげられる。
うんうん、素晴らしいねぇ。
そうして、少し色々と交渉しつつチーズを買い取り終わって食堂に戻ると、アイリスがまだ美味しそうにお代わりをしているところだった。
「あ、エル様。お帰りなさい」
「ただいま。ここの料理はどう?」
「とっても美味しいです!」
その言葉に厨房の奥の渋い料理人がガッツポーズをしてるのが見えた。
まあ、こんな可愛い女の子に美味いと言わせるのは料理人冥利につきるよね。
少し遅れたが、俺とトールも食事を始める。
「お、このスープ美味しい」
「野菜もいいですね」
普段食べないようなものが並んでると、やはり旅の良さを更に感じるもの。
野菜もかなり美味しいし、この村から仕入れるために明日は出発前に野菜の仕入先も確保せねば。
トールとアイリスがどんどんとお代わりをする中で、程々に食べてお腹を膨らませた俺は2人の食べっぷりを見守る。
にしても、トールもアイリスもこれだけ食べてるのに一向に太る気配がないよね。
元々亜人は代謝が良いのだろうが……トールもアイリスも俺が引き取ってからかなり食べる量が増えてるのに成長期というのもあってか、横に伸びることはなかった。
むしろ、トールは日々背丈が増して大人っぽくなってて若干男として負けた気になる。
俺なんて、あんまり伸びてないのに……マルクス兄様もそこそこ身長高いし、やっぱりイケメンは背丈が高いという法則でもあるのだろうか?
いや、俺はまだまだ子供。
年齢的には小学生くらいだし、伸びるのは中学生頃になるだろう。
男子の成長期は大体中学生前後だし、その辺で一気に伸びればセーフだ。
「殿下、何故に僕を見て勝ち誇ってるような表情してるんです?」
「気のせいだよ。たーんとおあがりよ」
「はぁ……」
またアホなこと考えて……みたいな顔するのはやめない?
トールも良い食べっぷりだけど、やはり見てて面白いのはアイリスだろう。
俺たちが交渉してる間も食べてたのだろうが、まだ入るようで美味しそうに食べている。
アイリスは特にお肉が好きなので、肉食系なうさ耳美少女として美味しそうに食べていた。
そんなアイリスとトールが微笑ましいのか、サービスしてくれる店主。
まあ、元々かなり多めに食事代は払ってるのだが、それにしてもこういうサービスをして貰えるとは、やはり美形はお得なのだろう。
俺もそこまで悪くはないはずだが……家族や2人と比べるとどうしても質が劣ってるのは致し方ない。
そもそも、比べる対象のレベルが高すぎるのだ。
前世に比べたらかなりマシな顔だし、それに俺はアレルギーが消えたことが最も大きいので気にしてはいけない。
2人を見ながら先程仕入れた牛乳を一口。
うむ、美味しい。
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