第40話 思わぬ歓迎

熊狩りなどをしていると、予想以上に時間を使ってしまい、気がつくと夕方近くになっていた。


時間的にもそろそろ潮時だし、とりあえず、近くの村に行って宿屋にでも泊まろうと、俺たちは向かってみることにした。


野宿でも良いのだが、先程念の為熊狩りの許可を貰いにその村へと俺の使いとして行って貰っていた騎士さんから、宿屋もあると聞いたのでそちらに興味があったのだ。


馬車で向かうこと少し、少し大きめの村はそこそこ賑わっており、馬車で通る俺達は結構目立っていた。


道はある程度整備されてるし、恐らく領主とかの貴族がたまに来るのでそこまで珍しい光景でもないだろうが、いつもと違う家紋と装飾の馬車だとやはり気づく人は気づくようだ。


「うーん、これは少し遠慮した方が良かったかもなぁ」


宿屋の前に止まると、俺は苦笑しながら馬車から降りる。


そこそこ目立つ見た目のせいか、好奇の視線を感じつつも、アイリスに手を貸して馬車から降りるのをさりげなく手伝う。


ちなみにトールは、外の護衛の馬に乗っており、村人のお嬢様方達の視線を独占していた。


イケメンは相変わらずそうで何より。


「お疲れのところ、失礼致します。異国の王子様とお見受け致しますが」


さて、宿屋にチェックインしようかと思って中に入ろうとすると、集まっていた村人達の中から村長らしき人が声をかけてきた。


「うん、この村の村長さんかな?」

「はい、この度は村の周囲の害獣を間引いて頂きありがとうございました」

「気にしなくていいよ。それよりこんな時間に来ちゃってすまないね」


何とも視線が集まっているので、苦笑気味にそう言うと、村長さんは優しげな笑みを浮かべて言った。


「とんでもないです。むしろ、最近問題になっていた害獣の駆除をして頂いて本当に感謝しております。長旅でお疲れでしょうし、何もない村ですがごゆっくりして頂ければと」

「うん、ありがとう」


別に感謝されるようなことはしてないつもりだったんだけど……確かに、異常に凶暴な動物が多いように感じた。


熊の数も予想以上だったし、お陰で空間魔法の別空間には熊肉のストックがたんまりと入っていた。


まあ、予定の距離は進んでるし、時間的なロスもそんなでも無いので、食材のストックを増やせたのは十分に有意義であったと言えるだろう。


村長さんと話してから、馬車を専用の小屋に案内して貰って俺達は宿屋に入っていた。


村長さんが別で泊まれる場所を用意すると言ってくれたが、せっかくだしこういう所の宿屋を体験してみたいと言ってやんわり辞退した。


自国だったら、村長達の面目もあってそちらにご厄介になるだろうが、俺は異国の王子だし、そういう庶民的な場所に憧れてるのだろうと勝手に納得されるだろうしね。


ちなみに、宿屋の代金に関しては村長さんが負担すると言ってくれた。


それも辞退しようと思ったのだが、他の村人達からもせめてものお礼と言ってグイグイと主張されたので折れることにした。


本当にただ熊を狩っただけでこんなに感謝されると申し訳なくなるが……せっかくの好意だし受け入れるべきだろう。


「では、こちらのお部屋にどうぞ」

「うん、ありがとう」


可愛らしい看板娘さんに案内されたのは、少し大きめの部屋。


貴族的な感覚では少し小さめに思えるが、俺としてはそこまで気にすることでもないで、看板娘さんにお礼を言って鍵を受け取ると、ベッドに腰掛ける。


少し硬めではあるが、そこその良さそうな材質で、寝るには支障はなさそうだ。


「エル様、大人気でしたね」


隣の部屋に荷物を置いたアイリスとトールがやって来て、嬉しそうにそう言うアイリス。


「そう?トールやアイリスの方が人気だったみたいだけどね 」

「そうですか?」


ここの人たちもあまり亜人とかに嫌悪感などがないのか、2人に対しても好意的な視線を感じた。


まあ、それにうさ耳美少女とうさ耳美少年というのはどこに居ても必ず目立つだろうし。


トールに至っては、肉食な村娘さんからの視線が集まっていたが……夜這いとかされたら、ちゃんと責任は取りなよ?


俺の場合も、自国であるシンフォニア王国では黒髪褐色の中で目立つ、白い髪と真っ白な肌という特徴だが、金髪や茶髪が多い国でもやはり白くて目立つのだろう。


「それで、トールは馬の方はどうだった?」

「ええ、大丈夫そうです」

「それは何より」


酔わないのなら、明日からも馬での移動は問題ないだろう。


今日の馬車でのグロッキーなトールの姿はなかなかに新鮮ではあったが、俺の騎士には常に万全でいて貰わないと。


特に旅先だし何が起こるか分からないからね。


それと、俺としても、アイリスと2人きりの馬車というのは悪くは無かった。


なんか和むので良い。


トールをイジって遊ぶもの楽しいが、アイリスで和むのもいいものだ。


「もう少ししたら夕飯か……何が出るか楽しみだね」

「はい!」


大変元気に返事をするアイリス。


まあ、アイリスも森の恵みを集めてくれたしお腹は空いてるのだろう。


うんうん、好きなだけ食べるといいよ。













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