第23話 最良とは得てして

亜人であるアイリスとトールは、この国に居ながらも亜人故なのか、どれだけ炎天下にいても肌が白いままらしい。


アイリスのモチモチスベスベの白い肌を見てると、お餅を食べたくなるくらいには柔らかいのだから、やはり皮膚はノーダメージなのだろう。


だとすると、同じく肌が白いままの俺も亜人なのだろうか?


「ケモ耳が欲しい……」


でも、そこまで顔面偏差値高くない俺がケモ耳を付けたら……暴動がおこるね。


「革命はご勘弁を……」


どれだけ不細工でも、少しくらい憧れてもバチはあたるまい。


これが、うちの家族の場合だと、ケモ耳がプラスになるのだろうが、ゼロには何を掛けてもゼロにしかならないという法則は世の絶対の理のようだ。


人間とは、なんと愚かな生き物なのだろう。


「さっきから、どうしたんです?」

「トールよ。俺とケモ耳の相性はどうだと思う?」

「微妙かと」


グサリと俺の心を八つ裂きにするトール。


「わ、私は可愛いと思います!」


そして、それを癒そうとするアイリス。


うん、やっぱり俺の味方はアイリスだけだ。


「分かったので、とりあえず終わらせちゃいましょうよ」

「「はーい」」


本日は、孤児院にて炊き出しを行っていた。


公務と言うには些細な、ボランティアみたいなものだが、こうしてある程度王族が自ら現場に出向くことで対内外的にもアピールをするのだ。


この手の行事は、俺のような暇な王族にたまに回ってくるのだが、マルクス兄様も忙しい中たまにこの手のイベントをするらしい。


なんとも勤勉な兄上に頭が上がりませんが、怠惰な弟はのんびりと暇を楽しんでおります。


クレームはトールが受け付けておりますれば。


「いえ、そこは自身で受けてください」

「心を読むでない、美少年」

「殿下の場合、アホなこと考えてると顔に出ますから」


涼しい顔でそんなことを言うトール。


前より遠慮が無くなった分、辛辣な気もするが、この位の距離が丁度いいだろう。


ちなみに、小声なので孤児院の子供たちには届いておらず、表面上はニコニコしてる第2王子とその従者という感じになってるはず。


「本日は、ありがとうございました」


一通り終わると、挨拶をしに来た院長先生。


チラッと後ろに控える2人を見てから、微笑ましそうに俺に言った。


「2人の顔が、前よりずっと輝いてます。やはり、殿下の元に居るのがこの子達にとって最良でしたね」

「さて、その辺は二人次第でしょうけどね」

「少しづつですが、私も子供達に優しさを教えています。優しさは貰ってこそ、誰かに渡したくなるもの。あの子たちの未来が少しでも明るくなるように、私も頑張っていきます」


なんとも教育者といったような、それで居ながら親のような院長先生。


こういう人こそ、親の居ない子供達にとって大切な存在になるのだろう。


俺には難しいかな?


こんな風に、複数の命を育てるなんて真似は。


やっぱり、育んでこその命だよね。


「アイリス、トール。殿下の側はどうですか?」

「はい、凄く幸せです。私は、エル様とずっと一緒に居たいってそう思ってます」


えへへ、と微笑むアイリス。


なんか勘違いしちゃうから、そんな顔で見ないでぇ……


チョロい俺はその程度の誘惑でころりと堕ちちゃうから。


うさ耳美少女からの告白紛いのセリフにドキドキする転生マセガキ……うん、傍から見たら事案の匂いだよね。


今のところは妹みたいな可愛さがあるけど、女の子はあっという間に大人になっているものだし、油断は出来ないかな?


十年後には本気で惚れてても不思議はないけど、まあ、それはその時の俺が考えればいい話だろう。


「トールはどうですか?」

「ええ、まあ、少し変わった方ですが、悪くないです。それに、俺は殿下の騎士になると決めたので」

「トールよりは普通な気もするけどね」

「いえ、殿下の方が明らかに変わってますから」


そんな風に互いに慈しみの心を持って譲り合あう(押し付けとも言う)。


なんというか、友人みたいな感じで話しやすいんだよね。


そういえば、同年代の友達ってあんまり前世でも出来たこと無かったしなぁ……高校時代に唯一友達が出来たけど、ドッキリで殺されるとはその時は思ってなかったし。


恨み?まあ、実はそんなに無い。


水アレルギー的にも、家庭環境的にも、今世が圧倒的に良いのでそんな気持ちは微塵も湧かなかった。


それに、少しでも後悔してくれたということは、俺の事を友だと思ってくれてたのだろうし、その後に奮起したのなら何も言うまい。


俺の大切なものを奪った訳でもないし、許し合う試も時には必要だろう。


そうして、その日の公務というかボランティアはすぐに終わったのだが、微笑ましそうに俺たち3人を見つめる院長先生と、困惑気味の孤児院の子供達のギャップはなかなかに面白かった。


中には、少し気まずそうな子達もいて、それぞれに2人に対してのこれまでの態度を反省してるのだろう。


それを許せるかは二人次第だが……まあ、不思議と大丈夫な気がするのは俺だけだろうか?


さて、帰ってオアシスでも見て和みますか。











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