第37話 対決後
「お前も頑張った方だが、残念だったな。俺の勝ちだ。」
「……。」
兵士の言葉に対して怒るわけでもなく、タイロンはただ前をじっと見ていた。
「わぁはっは、よくやった。実に愉快だ。」
「ありがとうございます。」
マネースキーが喜んでいる。
そして、マネースキーからの言葉を聞いて、兵士は感謝をしている。
すると、闘技場まで案内した門番がタイロンのもとにやって来た。
「そういえば思い出したが、負けた時のことを話していなかったな。お前たちには、これから捕まってもらう。牢獄も用意してあるから安心しろ。」
何をどう思えば、安心できるといえるのだろうか。
この王国の考え方だと、捕まってしまうと何をされるか不安だ。
「お願いだ。捕まえるのは俺だけで、許してくれないか。2人は関係ないだろう?」
「それは、駄目だ。対戦をすると言った時点で決まったことだ! お前も、席に座っているあいつら……も……?」
門番は観客席に目をやると、ミーナの姿がないことに気がついた。
慌てた様子だ。
「やっぱり気付かれてしまったか……でも、ミーナは逃げれたかな? 大丈夫かな?」
カイルは、ミーナのことを心配している。
だが、自分達も危ない状況にあることは間違いない。
「大変です、マネースキー様。仲間の1人を逃がしてしまいました。どういたしましょう?」
「慌てるな。まだ、遠くには逃げてはいないだろう。兵を集結させて、探すのだ! それと、わしは城に戻る。そいつらは早く牢獄にぶちこんでおけ。」
リッチ王国から逃がさないという、絶対の自信があるのだろう。
門番は言葉を聞いた後に、闘技場を出ていった。
マネースキーも護衛の者を連れて、城へと帰っていった。
残されたカイルとタイロンは、対決をした兵士の指示を待つ。
「そこで観ていたお前、ここまで来い!」
「分かりました。」
カイルは返事をすると、兵士の命令でタイロンと合流する。
「カイル……すまなかった……負けてしまった」
「気にしないでよ、タイロン! 必死に戦ってくれたのは、試合を観ていれば分かったから!」
タイロンからの謝罪を、当然のように受け入れる。
そして、兵士からの指示を待つ。
「マネースキー様の命令で、お前たちを牢獄に入れる。悪く思うなよ!」
兵士の言葉を聞いて、闘技場を後にする。
闘技場を出ていくと、すぐに兵士が立ち止まる。
どうやら、近い距離にあったみたいだ。
捕まった人が晒されているわけではなかったので、見た感じは牢獄とは思わなかった。
けれども、見張りの兵士が入り口に居たことから奥の方に続いていることが分かった。
「また、連れてきたのか?」
「あぁ、今回はこいつらだ! 頼んだぞ。」
兵士同士で話をして、タイロンと戦った兵士は去っていった。
残った見張りの兵士は、面倒くさそうに話す。
「お前たちがここにいるということは、対決に負けたということで良いのだな?」
「はい、そうです……」
「これから、牢獄に入ってもらう。だが、牢獄といっても手錠はつけない。城下町の建築や清掃作業をこなしてもらうからだ。」
「あの、いつまで続くのでしょうか?」
「マネースキー様の気がすむまでだな。すぐ解放されるかもしれないし、ずっとこのままかもな。」
カイルは、辛い気持ちになった。
それと同時に、牢獄から逃げ出したい気持ちが強くなった。
「逃げようとしても無駄だからな。王国の入り口から警備する者がいる。それに、お前たちの武器はマネースキー様の所に持っていくこととなっている! 今すぐ渡すのだ!」
「分かりました……」
今すぐにでも、反撃しようと思った。
だが、王国の場所を把握しきれていないことや、兵士の数という面において、素直に従う。
その結果、武器となる剣と斧まで、取られてしまった。
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