第35話 理不尽な説明

 門番に連れられて城下町に入っていく。


 派手でとても華やかな印象を受けた。



 立派な家が多く建ち並んでいて、歩いている人の服装も式典などで着るような高級感のあるものだった。


 武器屋や、道具屋の近くに円形の建物が見えた。



「ここだ。入れ。」



 建物まで歩くと、門番の言葉でその建物に入っていく。


 普段からパフォーマンスとして使われているのか、中には観客席もあった。


 思っていた以上に、広く感じた。


 日頃から、本格的な対戦が行われているのかもしれない。



「お前たちは、席に座ってろ。」



 カイルとミーナは、門番の言葉で席につく。


 タイロンは指示をされた場所に立つ。



「まさか、その斧を使うのではないだろうな?」



 門番は、タイロンが持っている斧に注目した。



「武器を使っては、駄目なのか?」


「当たり前だろ。公平ではないからな。」



 門番の言葉を聞くと、斧をカイルに預ける。



「すまないが、少しの間預かってくれるか?」


「分かったよ。頑張ってねタイロン!」



 斧を預けると、元の場所に戻る。



「では、対戦相手を連れてくる。そこで待ってろ。」



 門番はその場から離れると、大柄な男を連れてきた。


 タイロンも大きな体だが、それを遥かに越える大きさであった。



「おかしくないか? 確か、相手の体格は同じくらいの相手が選ばれるはずだろ?」



 タイロンは問いかける。



「そんな話はどうでも良いだろう。他に手が空いている兵士は居ないのだ。」



 強引に話をまとめる。


 それに加えて、相手の姿を見てあることに気付く。



「防具はつけて良いのか? 武器を使ってはいけないのではないのか?」



「それは、挑戦する者に対しての対応だ。こちらが駄目だとは伝えていない。」



 言い訳のような説明を受ける。


 到底、すぐには納得できるものではない。



「では、少しの間待ってくれないか? 戦略を考える時間がほしい。」



「その提案は、受け入れられない。こちらも、暇ではないのだ。今から始める。」



 こちらの提案は受け入れてもらえないようだ。


 勝手に進行しようとしている。


 その時、観客席に小太りの男が入ってきた。



「誰だあいつは?」


「お前、誰に向かってそのような態度をとっている……」



 門番は、タイロンの態度に動揺しているようだ



「まあ、よい。わしは、このリッチ王国の国王、マネースキーである。」


「マネースキー様、どうされたのですか?」


「また、馬鹿な奴らが現れたと連絡があってな! 無謀なことをするのを見に来ただけだ。」



 門番の様子が、あからさまに変わった。


 マネースキー様と呼ばれている男の周りには、護衛と思われる者もついていた。



「これから、ルールを説明する。対決の時間は3分間だ。その間に、膝をついた方が負けだ。もちろん、降参をしても敗北の扱いとする。」



「3分間の間に決着がつかなかったらどうなる?」



「もちろん、お前の負けだ。これ以上、マネースキー様を待たせるわけにはいかない。もう始めるぞ。」



 半ば急かされるようにして、合図とともに試合開始が告げられた。

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