第36話 ヤマカワ死す。デュエルスタート! 後編

 で……ナターシャは一人で任せて大丈夫そうだな。最初は互角だったが、今は優勢のようだ。


 そうして俺は太公望に向けて剣を構えて、ゆっくりと歩み寄る。


「このおおおおっ!」


 雄叫びをあげながら、得物を大上段に構えた太公望がこちらに迫ってくる。


「エリス、アカネ! 下がっておけ!」


 そうして俺は真上から振り落とされる方天画戟をミスリルソードで受ける。


 と、その時、太公望は両手で持っていた方天画戟から手を離した。


 かなりの重量なのか、ズシンと音を立てて地面に方天画戟が落ちる。


 何故に武器を手放した?


 予想外の行動に一瞬だけ生じた俺の隙を、太公望は見逃さない。


 そのまま太公望は右掌を向けて突き出して、その掌が俺の腹に接着したんだ。



「――仙術奥義:四神発勁っ!」



 腹から背中に、物凄い衝撃が駆け抜けていく。


「くっ……」


「この技は一撃必殺にして私の最強の奥義です。これを食らって生きているものなどいません」


「くっ……」


「ふふ、そうなのです。この技は一撃必殺。これを食らって生きているものなどいません」


「確かに凄い技だ。こんなに痛いのは……柱の角に足の小指をぶつけた時以来だ」


「……そうなのです。この技は一撃必殺。これを食らって生きているものなど……え? 柱?」


 うん。


 確かに俺は、柱の角に足の指をぶつけたくらいのダメージを受けた。


 その証拠に、事実として俺はちょっと涙目になってる。


「そ、そんな……何かの間違いですっ!」


 そう言いながら、太公望は俺に向けて拳を握り、物凄い勢いで連打を仕掛けてきた。



 ――刻み突き。


 ――猿臂。


 ――右下段蹴り。


 ――左フック。


「ぬおりゃああああああっ!」


 ――垂直蹴り上げ。


 ――踵落とし。


 ――弧爪。


 ――垂直蹴り上げ。


 ――踵落とし。


 ――弧爪。


 ――くるりと回って裏拳(バックブロー)。




 なんか滅茶苦茶殴られてるけどあんまし痛くないな。


 いや、痛いのは痛いよ? 例えるなら3歳児のグルグルパンチの猛攻を受けてる感じの痛さかな。


 ってか、さて、どうすっかな?

 

 覚醒のおかげで力量差も凄いみたいだし、サクっとアゴを殴って失神させるか?


 あー、でもなー。


 女の子殴るのは……流石に不味いよな。


 何て言うか、俺の精神衛生的にさ……やっぱ良くないよ。そもそも太公望は操られてるだけだしな。



 ――スキル:老師が発動しました。



 ――お困りなら、是非ともアーマーブレイクを発動しましょう


 アーマーブレイク?

 それなら太公望を傷つけない感じで何とかなるのか?



 ――回答:この場合はアーマーブレイクが最適解です。


 良し、分かった。

 どうすりゃアーマーブレイクを使えるんだ?



 ――右手を突き出して「アーマーブレイク」と言葉を発しましょう。



 ってことで、俺は言われた通りに右手を突き出した。




「アーマーブレイク!」



 すると、俺に手から光が迸った。


「何ですか……この光は!?」


 続けざま、太公望の体が光に包まれる。


 で、魔法少女とかセーラー〇ーンとかの変身シーンの逆再生のような状態になって、最終的には太公望の服が消えたんだ。つまりは――



 ――全てが丸出しになったわけだ。



 と、そこで太公望のレイプ目に光が戻り、彼女は一瞬小首を傾げる。


 そうして、彼女は自分が全裸であることを理解して――



「いやーん」



 と、胸と股間を両手で隠して、その場で顔を真っ赤にしたのだ。


「見ないで! 裸を見ないで!」

 

 いや、何かめっちゃ恥ずかしがってる感じだけどさ。


 でも、あんた普段からオッパイ丸出しだよね?


 まあ、そこを突っ込んでも仕方ない……か。だって、ここは――



 ――エロゲ世界だからな。



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