ヤリサーの大学生を懲らしめたり、振動するオモチャを開発して辺境の森の女の子に流行ったりする編

第20話 平和的な性的外交で辺境の森……獲ったどー! その1

※ ニコニコ漫画さんでコミック連載中です。   小説版・コミック版共に白石が書いてますが、あっちはコミックとしての面白さを追求した脚本にしているので内容は大きく異なります。







 サキュバスをやっつけた俺は、その後すぐに鬼人族の人たちと一緒に公衆浴場で風呂に入ったんだ。


 まあ、嫁二人には「風俗や一夜限りの浮気は全然オッケー」と言われているんだけど、さすがにこっちとしても最低限の気は使ったってことだな。


 と、いうのもサキュバスの香水のキツいことと言ったら……。


 そこは現代日本の夜の街の商売の人たちと共通するといえば、大体の状況は分かるだろうか。

 

 そうして宿屋に戻って、エリスとアカネが合流したところで、俺たちは夜の飲み屋街に繰り出した。


『旦那様は風俗に行っていたのですか?』


『通い詰めて情が移るようなことでもなければ問題ありませんのに……湯浴みまでしていただき、お心遣い感謝します』


 と、そこはまあ……流石は女の勘だ。


 そんな感じでバレバレだったんだけど、本当に俺の嫁たちは懐が深いというかなんというか……。


 で、酒場も決定して飲み会が始まったわけだ。


 ホロホロ鳥のステーキやら、ミスティ芋のフライ、変わったところではサラマンダーの舌のソテーってのもあったな。


 酒の種類も豊富で、コメーラの火酒っていうのが焼酎っぽくて、俺のお気に入りだった。


 この世界の住人は酒を冷やして飲むという習慣がないらしく、エリスに作ってもらった氷で作った……蒸留酒のロックはすこぶるに評判が良かった。


 そんでもって、その日は大いに盛り上がったわけで、全員がベロンベロンになった。


 そりゃあもう、ベロンベロンのグデングデンで、グッダグダの状態だった。


 最終的にはフラフラで嫁たちとベッドに戻ったんだけど、すぐに寝てしまったんだよな。


 つまりは、覚醒マーラ様を使えなかったわけだ……。


 嫁たちがどういう反応をするのか楽しみだったので、ここはちょっと……いや、かなり残念かな。


 これについては次回の決戦の時までお預けということにする。




 ☆★☆★☆★




 そして翌日。


 街での用事を全て終えた俺たちは、解体屋さんへと向かった。


 と、言うのもギルドの受付嬢からサンダーバードの肉を持ち帰りたいなら、自分で解体屋に持ち込んでほしいということだった。


 ちなみに解体費用として銀貨35枚(日本円で35000円)取られるということだ。


 それと、別途、肉の代金として金貨30枚(30万円)を支払うことになった。


 それで、街を出てすぐのところにある解体小屋に俺たちは足を踏み入れたんだよな。


 で、アイテムボックスからサンダーバードを取り出した俺たちに、解体屋さんは少し驚きこう言ったんだ。


「サンダーバードだと? 見ない顔だが……お前らが狩ったのか?」


「はい、そうですけど」


「なるほど、人は見かけによらねえようだな」


 と、解体小屋の親方さんは「ガハハ」と笑って俺の肩をバシバシと叩いてきた。



「ともかく、凄腕の冒険者がいてこその俺らの稼業だ。これからも上級の魔物を卸してくれるように頑張ってくれや!」



 で、その時、羅刹鳥の福次郎が外から小屋の中に入ってきたんだよな。


 それで、そのまま俺の肩に福次郎は止まって――



「フ、フクロウ? いや、これは……羅刹鳥……っ!?」



 そんな感じで解体屋さんはお約束どおりに失神していたのだった。


 と、まあそんなこんなで、街での仕事を終えて、俺たちは森に帰ることになったのだ。






 しかし――。

 この時の俺たちは知る由もなかった。


 鬼獣王とオーガキングを倒したことによって、この周辺地域に……ヤリサーの連中とか、その他の権力者に大きな波紋が広がっているとは。




 ☆★☆★☆★





 驚いたことに俺のアイテムボックスには時間停止機能がついていた。


 これは肉を保存するのに向いている機能で、異世界どころか現代地球でもぶっ壊れ性能なのは間違いない。


 まあ、時間停止可能な分は1トンくらいって話なんだけどな。


 それで俺たちは森の道を戻り、それぞれの里に帰ることになったわけだ。


 鬼人族の里は、猫耳族の里への帰り道の途中にあるという話なので、とりあえずは俺たちは鬼人族の里に向かうことになった。


 族長を務めるアカネの父親に、結婚の顛末も説明せんといかんしな。







 と、そんな感じで鬼人族の里に辿り着き、俺たちはアカネが住んでいる家に宿泊することになった。


 ちなみに、ここは本宅の屋敷の離れという扱いらしく、住んでいるのはアカネとその従者たちとなる。


 間取りは6畳の3間に台所。


 そして庭に従者用の雑魚寝小屋がついているって感じだな。


 姫様といっても人口数千人の集落の話で、なおかつ離れの一人暮らしということなので、そんなに大きな家ではない。


 暮らし向きは……まあ、内装を見る限りは、普通よりはかなり良い程度っていうところだろうか。


 華美と言った感じはなく、かといって窮乏しているという様子は欠片も無い。


 質実剛健って言葉が一番適切な感じかな。


 で、俺たちがアカネの家に辿り着いたのは夕暮れで、父親への挨拶は明日にしようってことになって……自然の流れとして、晩飯の時間となった。


 台所に立つのは俺なんだが、帰り道の途中、福次郎がどこかの池で鴨を捕まえてきていたんだよな。

 

 家の庭では家庭菜園をやっていて、そこに長ネギがあったので、味噌と醤油と酒で「鴨鍋」を作ってみたんだ。



「もう2品作るから、鍋を先に食べておいてくれ」



 それだけ言って、俺は台所に入って次の料理を作り始める。


「旦那様は本当に料理がお上手ですね」


「うむ。我らが夫のサトル様は本当に凄い。この料理にしても美味いだけではなく、50%のバフ効果がつくしな」


「エリス殿、実は鬼人族の調味料は東方をルーツとしています。独特の調味料のはずなのですが……どうして貴方の旦那様はこんなに完璧に使いこなしているのでしょうか?」


 そんな声が向こうの部屋から聞こえてくる。


 ちなみに鴨鍋については、俺が自分で食べてもちょっと引くくらいの味だった。


 鴨の脂が甘くて、すっごい良い出汁が出てて……味付けを上品にすれば、ひょっとすると料亭とかでも出てくるレベルかもしれない。


 と、そこで俺は鴨肉を軽くあぶった「鴨のタタキ」を、ショウガ醤油と一緒に出してみた。


「もう一品作るから。先に食べてても良いからな」


 しかし、鬼人族は体育会系だけあって、本当に良く食べる。


 瞬間で鍋の中の具材が蒸発するように消えているのを見て、俺は苦笑いした。


 いや、美味しく食べてくれるなら良いんだけどね。


 と、俺は台所に入って次の料理を作り始める。


「旦那様……半分生のお肉って……こんなに美味しいのですか!?」


「これは凄い! 本場の東方ではサシミなる料理があると聞くが……」


「これは本当に美味い! お酒が欲しくなりますよ、サトル殿!」


 喜んでくれたようで何よりだ。


 それと、福次郎は鴨のタタキが気に入ったようで、調理する俺の横で、皿に盛った肉の塊を物凄い勢いで食べている。


 そうして最後に、台所から大皿を持って、俺もみんなが囲んでいる食卓に座ったんだ。


「はい、お待たせ。これが本日のメインディッシュのカラアゲっていう料理だ」


「カラアゲとは何の料理なのですか、旦那様?」


「サンダーバードの肉を醤油と酒とショウガとニンニクで漬け込んだものを、小麦粉でカラっとあげたものだ」


 ニンニクの香りが胃を刺激し、みんな我慢ができないといった様子だ。そうしてバクバクと食べ始めたんだけど――


「美味しすぎますよ、旦那様!」


「このような料理は食べたことがありません、サトル殿!」


「我々の使っている調味料で……本当にこんな味が出せるのですか!」


 涙まで浮かべて食べているみんなに「大袈裟なんだよ」と苦笑し、俺もカラアゲを一口。



「こりゃ美味い!」



 サクっとジュワっと、甘い脂が口の中に広がっていく。


 いや、これは味付けの問題とかじゃなく、純粋に肉がヤベエな。


 サンダーバードの肉は高値で取引されるとは聞いていたが、なるほど……と納得する。と、その時――


「サトル殿! 大変なことが!」


 アカネがステータスプレートを見せてきたんだけど、「おいおいマジかよ」と俺は絶句した。


 と、いうのも前回のバフ効果は50%だったのに、今回は75%の効果がついているんだ。


 これは間違いなく、食材のグレードが上がったことからの効能だろう。


 


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