第9話 マヨネーズのついでにローションも作りました。嫁も大喜びです。


 さて、オーガの大討伐を終えたわけだ。

 里はてんやわんやの大騒ぎとなり、黒鬼王(オーガキング)を討伐した俺のために祭りまで開いてくれることになった。

 里の広場にはお花見ヨロシクの状態でゴザが敷かれ、美味い酒と御馳走が並べらている状態。

 マジで大宴会という風情だった。

 そんでもって、その中央には俺とエリスの二人が据えられたわけだな。

「里のみんなに囲まれて何だか結婚式みたいだな」

「っていうか、コレって結婚式なんですけどね」

「え? そうだったの!?」

「猫耳族の風習ですよ。祭りの中央で男女がいるって言うのは……つまりはそういうことなんです」

「ふーむ。いつの間にやら正式に結婚しちゃったってことか」

「ご迷惑でした?」

「いや、全然嫌じゃないけどな」

 と、そんな感じでイチャついていると、里の他の猫耳たちが俺にお酌をしにやってきた。

「サトル様、ずっとこの里にいても良いんですよ!」

「いや、むしろサトル様、ずっとこの里にいてくださいませ!」

 そんな感じで、どうやら里の人たちの俺に対する評価は鰻昇りらしい。

 それを見て、エリスは満足そうに微笑を浮かべている。

「旦那様は本当に凄いですよね」

「ん? 凄いって何が?」

「1か月もしない内にいつの間にか里の英雄みたいになってるんですもん。さすがは私の旦那様です!」

「お前は俺のことを褒めすぎなんだよ」

 まあエロゲの世界ってことで、惚れた異世界勇者には全肯定ってことなんだろうけど。

 でも、そうだと分かっていてもやっぱりそういう風に言われると、照れくさいのは前提にあるけども悪い気はしない。

 その時、広場の隅の方から普段俺が面倒を見ている子供たちがやってきた。

「サトル兄ちゃんー! 今度、剣を教えてよ!」

「にいちゃー! わたしにはまほうをおしえてー!」

 本当に獣人の子供は可愛い。

 そんなことを思っていると、いつの間にやらあぐらをかいて座っている俺の膝の上には、子供たちが3人という状態になってしまっていた。

 ただでさえ可愛いってのに、懐かれているもんだから余計に可愛い思えるのは仕方がないだろう。

 で、エリスもそんな様子を見てニコニコしている。

「エリス、えらく上機嫌みたいだな?」

「ええ。将来的には私の子供が旦那様の膝の上に座るわけですよね? そう考えるとどうにも幸せな気持ちになってしまって……ふふふ」

 屈託がなく笑うエリスを見ると、思わず俺の頬も緩んでしまった。

 と、そこで俺はあらかじめ用意しておいた大きな瓶の口を開いた。

 今日は宴会だと聞いていたし、材料もあったので試しに作った逸品だ。

「旦那様、それは何ですか?」

「材料があったから作ったんだけど、マヨネーズっていう食べ物でな」

「まよねーず?」

 はてな? という感じでエリスは小首を傾げる。

「まあ異世界転移といえばお約束だからな」

 って言っても、エリスには全くわからないことだろう。

 ちなみに卵黄と油と酢、それと塩があればマヨネーズっぽいものを作るのは簡単である。

 で、獣人族は人間とはほとんど交流はしないわけだ。

 こういっちゃアレだが、生活レベルも文化レベルも俺が最初にいた王様のいる都市に比べて低いように見受けられる。

 まあ、そこは田舎ってことなんだろうけど、もちろん食文化のレベルも低いのは実体験済みだ。

 新鮮な素材が手に入るからそういう意味では美味いっちゃ美味い。

 だけど、調味料関係は素朴なものが多いんだよ。

「ってことで、これは俺からのプレゼントだ」

 そんな感じで異世界転移でお約束のマヨネーズをみんなに振舞うことにした。

「ねえねえにいちゃ? これはなに?」

「白くて酸っぱい匂いがするねー。美味しくなさそうだよ?」

「まあまあそう言わずに食ってみろよ」

「えー? にいちゃがいうなら……」

「僕も食べてみるけど絶対不味いよね」

 アスパラガスのフライにマヨネーズをつけるように促したみた。

 すると彼らはマヨネーズをつけてから、おっかなビックリという風にアスパラガスを口の中に放り込んだ。

 そしてパクリと一口食べた瞬間に、目をまんまるにして口々に騒ぎ始めた。

「美味しいーっ!」

「にいちゃー! 美味しいー! とっても美味しいー!」

「お兄ちゃん! 野菜ってこんなに美味しかったんだね!」

 うんうん。

 みんな喜んでくれているな。

 なら、これも出してみようか。

 調子に乗った俺は今度は自作のランプを取り出してみた。

 菜種油に紐を浸して灯芯とした、原始的なものだ。

 っていうか、ずっと俺は気になってたんだよな。この里で光源と言えば、かがり火とかキャンプファイアー的なものだけだ。

 夜は家の中は真っ暗で、エリスとの情事も月明かりを頼りにみたいな感じで少し困っていたのもあった。

「これで夜の明かりになるぞ。少しの油で数時間はもつからな!」

 その言葉を聞いて、子供たちは「ポカン」とした表情をしていたが、大人たちはしばらく固まって――

「本当ですか!?」

「少しの油で夜も明るいですって!? 織物の作業がはかどりますよ!」

「うわーっ!」とばかりに歓声が起きた。

 しまいには胴上げされそうな勢いになってしまったので、俺はあまりにもお約束の展開に半笑いになってしまう。

 でも、色んな異世界転移モノの主人公が次から次に現代知識を披露する気持ちも分かった。

 この反応を知ってしまったら、楽しくて辞められるわけがない。

 まあ今日はこんなもんで打ち止めで、村のみんなに対する現代知識の披露はここまでだ。

 だけどエリスよ。

 お前には夜の現代知識にも付き合ってもらうかな。



 ☆★☆★☆★



 宴会も終わり、俺とエリスは部屋に戻った。

 エリスがベッドに転がり込んで、いつものように服を脱ごうとしたので慌てて制止する。

「どうしたのですか、旦那様?」

「いや、今日はちょっと趣向を変えようと思ってな」

「趣向?」

 そうして俺はササっと手際よくベッドに布を敷き始めた。

「ふむ、布……ですか?」

「ああ」と頷き、俺は昼間に作っておいた液体の詰まった壺を取り出した。

「それは何でしょうか?」

「ローションだ」

 いや一度やってみたかったんだよな、ローションプレイ。

 と、いうのも実はローションって、作り方自体はすっごい簡単なんだ。

 具体的に言うと、材料は水と小麦粉。

 それを鍋に入れてかき混ぜる。あとは弱火で煮詰めるだけという簡単な作り方となっている。

 そして冷めるとローションっぽいヌルヌルの液体が出来上がるわけだ。

 もちろん、原材料は小麦粉と水だけだ。体にもお肌にも優しいのは言うまでもない。

「ヌルヌルですね……? で、これはどうやって使うのですか旦那様?」

「使い方は簡単だ。まあとりあえず服を脱ごうか」

 俺たちは二人して服を脱いで、生まれたままの姿となった。

「な、なんなんですかコレは!? ヌルヌル……ヌルヌルですよ!?」

「このヌルヌルで交わり方に幅が出てくるんだよ」

 っていっても、ここから先はどうすればいいのかぶっちゃけ俺も良く分からん。

 だがしかし、覚えたての猿状態の俺たちの好奇心は無限大だ。

 証拠にエリスは「これから自分は何を去れるんだ?」と、期待と不安で艶っぽい感じになってるし、俺も完全に臨戦モードとなっている。

 夜は長い。

 今日はローションで何ができるか色々と試してみようと思う。


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