エロゲの世界でスローライフ ~一緒に異世界転移してきたヤリサーの大学生たちに追放されたので、辺境で無敵になって真のヒロインたちとヨロシクやります~

白石新

頭を一ミリも使わない、お股も頭もゆるゆるスローライフ爆誕! 編

第1話 おっぱいと出会う



「テメエは追放だ! このインポ野郎!」

 そんなことを言われたのは昨日の話だ。

「恨むなら、全年齢版のインポ補正を恨むんだな!」

「お前は戦力外だ! このクソ雑魚が! インポを直してから出直してこい!」

 夕暮れの森の中を彷徨い歩く俺の脳裏に、ヤリサーの大学生達の顔と罵声の言葉が駆け巡っていく。


 ――ここは魔獣がひしめく大森林


 装備もなければ食料もない。

 せめて方位磁石があれば人里へ戻ることもできるんだが……。

 と、そこで遠くから白狼(ホワイトファング)の遠吠えが聞こえてきた。

 俺のレベルは1だ。

 親愛度ボーナスも取得していない状態では、Cランク相当の魔物はあまりにも危険。

「どうしてこんなことになったんだよ……」

 物音を極力立てず、白狼の遠吠えとは反対の方向に歩き始める。

 俺は半泣きになりながら、この世界に来てからのことを思い返し始めたのだった。



 ☆★☆★☆★



 俺の名前は飯島悟。

 日本では派遣社員のアラサーだった。

 事件が起きたのは渋谷の街を歩いている時だ。

 その時突然、地面に幾何学文様の魔方陣が現れたんだ。

 そうして、お約束通りに俺は異世界転移をすることになった。

「おお、よくぞ現れた伝説の勇者よ」

 と、やはりお決まりのセリフと共に、俺は玉座の間の王様の前にいたって訳だ。

 そこは毛の長いフカフカの赤絨毯の部屋だった。

 豪華な調度品が所狭しと並んでいて、甲冑を着込んだ兵士が壁際に何人も控えていた。

 そして茶髪やら金髪の大学生の不良グループっぽいのがいたんだ。

 こいつらも俺と同じ境遇なんだろうか?

 そんなことを思いつつ、俺は王様に質問をしてみた、

「どういうことなんですか? 伝説の勇者とはなんなんですか?」

「それはな――」

 王様の話を聞いて、それはそれは驚いた。

 と、いうのも俺たちは異世界転移って奴に巻き込まれたんだ。

 そして驚くことにその世界はエロゲ―の世界だったんだよな。


 ――往年の異世界ファンタジーエロゲ―【フェアリーテイルプリンセス】


 いわゆる馬鹿ゲーに分類されるソレは本当に飽きれるほどにアホな設定だった。


・いつもクールだけど胸部にだけ布がない、おっぱい丸出し仙人

・正面は普通なのに、後ろは全裸のTバッグ女神


 つまりは、ヒロインの立ち絵からしてもうアレな感じで、このゲームは終始そんな感じなのである。

 んでもって、ゲームの主人公にはお約束通りにエッチをすれば強くなるというお馬鹿な設定が採用されていた。

 で、王様曰く剣と魔法で世界の危機を救ってくれということだ。

 もちろん強くなる方法は可能な限り王様が準備してくれるらしい。


 ――ヤればヤるほど強くなる


 この言葉を聞いて、女までも用意すると言われた大学生連中は「ヒャッホーイ!」と大騒ぎして、ハイタッチまで始めてしまった。

 ちなみに後で知った話だが、こいつらは四流大学のイベントサークルの連中とのことだ。

 主な活動内容は合コンを開いて女の子を飲ませて、パクっと食べちゃうことらしい。

「異世界勇者はこの世界に来るまでの性経験によって時空を渡った特典を得ることができるのじゃ」

 王様はそんなことも言ったが、異世界転生とか転移モノによくある転生ボーナスみたいなものなのだろうか?

 そんなことを思っているとヤリサーの連中の一人がニヤリと笑った。

「まあ俺たちはやりまくりだがよ。ってことは、このオッサンも見た目によらずにヤリチンなわけなの?」

「いや、俺は童貞だが?」

 言いたくもないことだが、この場合は黙っていても仕方ない。

 なんせ世界の命運がかかってるって話で、重要な情報を隠し立てしても仕方ない。

「ヒャハハっ! ど、ど、童貞! マジウケる!」

「アラサーなのにマジ童貞っ!?」

「いや、アレじゃね? 30歳まで童貞だったら職業:賢者とかいうオチじゃね? それで実は強かったとか? まさかのオッサン強キャラだったとか?」

 ギャハハという笑い声。

 ガラも育ちも悪いと一瞬と分かるヤリサーの面々の笑顔に、若干俺はイラっと来る。

「職業とな? ならば、このステータスプレートを見てみよ。お主たちの職業適正が書いておろう」

 王様の言葉に従い、俺たちは手渡されたステータスプレートをマジマジと眺める。

 すると金属の盤面に文字が浮かび上がってきた。

「職業適性……これか……? お? 俺は武神だな。100人斬り達成ボーナスの職業適性と書いているぞ」

「ああ、そういやお前、いっつも100人とやったって自慢してたもんな……うん、こっちは剣皇って書いてるぜ。俺は70人斬り達成ボーナスだ」

「俺は賢者だな。50人斬りボーナスだ。ってなると、オッサンは?」

 と、そこで俺はステータスプレートに浮かんだ職業の文字に戸惑いつつも、ヤケクソ気味にこう答えた。

「俺の職業は……素人童貞って書いてる」

 その言葉を発した瞬間、玉座の間は爆笑の渦に包まれた。

「マジウケるー!」

「おっさん半端ねえな!」

「ただの童貞より更にひでえっ! こいつサバ読んでやがったぞ!」

「ブヒャヒャっ! あー、ダメだわ。腹筋崩壊だわ! マジやべえ!」

 いや、そこまで笑うことじゃねーだろ?

 仕事の付き合いで上司に無理やり一回だけ連れていかれただけなんだって。

 それで困ってしまった俺は王様に視線を向けると――


 ――王様も下を向いて笑ってた。


 肩を震わせて笑ってた

 くっそ、何なんだコイツ等……っ!

 と、俺の異世界転移の最初のシーンは最悪な感じで終わったのだった。



 ☆★☆★☆★



 それから色々あって、俺たちはゲームで言うところの親愛度強化を行うことになった。

 つまりは、王様が用意した女とそういうことをするという話だ。

 で、俺たちの最初の相手は娼館に勤務する女性ということになった。

 それを聞いた瞬間、ヤリサーの連中はまやもや俺を馬鹿にしてきた。

「ギャハハ! プロ相手じゃ素人童貞は卒業できねーな!」

「ドンマイドンマイ!」

「ってか、マジでやべえなオッサン。しかし、オッサンの相手が素人だったとしてもさ、それって王様が用意した女だろ? 思うんだがその場合って……素人童貞卒業になるのか?」

 と、そんな感じでヤリサー大学生は俺を馬鹿にしまくってきたわけだ。

 で、娼館に入った俺たちはそれぞれ個室に入ることになる。

 俺も一応は男だ。

 出てきた娼婦の女の人は物凄い美人さんだったので、もちろん臨戦態勢になってしまうわけで。

 ってことでちょっと頑張ってみようかと思ったんだが、そこで驚愕の事実が判明した。それはつまり――


 ――勃(た)たない。


 何をどう頑張っても、俺のムスコには一切の反応がなかったんだ。

 娼館で色々と頑張ったんだが、何もできないままにお姉さんに見送られて部屋から出ることになる。

「一体どういうことなんだよ?」

 そう呟きつつ、俺は廊下うなだれる。

 すると、ポケットに入れていたステータスプレートが光り輝きだしたんだ。

「なんだコレ? ひょっとしてこれが原因なのか?」

 ステータスプレートを見ると、これまでに記載されていた文字以外に特記事項の項目が浮かび上がっていた。

 つまりは、ステータスプレートの下の方にデカデカと書かれていたのはこんな感じの文言だったのだ。



 名前 飯島悟


 レベル1


 職業 素人童貞

 HP 15/15

 MP 0/0

 魔力 1

 筋力 5


※ 特記事項:全年齢版のルールが適用されます



 ☆★☆★☆★



 で、話は冒頭に戻る。

 一連の出来事で俺は親愛度ボーナスを得られないということが判明したわけだ。

 そして当然ながらそのことはヤリサーの大学生たちも知ることになる。

 つまりは、役立たずであると。

 そうして――。

 初めての魔物討伐の任務の最中に、俺を魔獣ひしめく大森林に置きざりにされることになったんだ。

 要は、戦力外だから消えろってことだな。

 と、いうのも、王様から支給される勇者としての報酬はみんなで分割していたんだよな。

 で、配分制度ということで、それがたまらなく頭に来たらしい。

 まあ、配分は連中が3人で98で俺が一人で2だったんだが、それでも奴らはお気に召さなかったらしい。 

 かといって、流石に同じ日本人を直接自分の手で殺すというのも気がひけるみたいで、装備品を奪った挙句に置き去りにされたというわけだ。

 要は野垂れ死にするか、あるいは魔物に食われて死ね……と。

 と、まあこれが今までの顛末となる。

「くっそ……」

 実際問題、色々ヤバい。食料も無ければ装備もない。

 オマケに、さっきからそこかしこで白狼の遠吠えが聞こえてくる。

 いつの間にやら日は暮れてるし、マジでヤバいな。

 このままじゃ朝まで生きている自信すらない。

 どうしたもんかと思ったその時、森の樹木が途切れて開けた場所に出た。

「これは幻想的だな」

 そこは森の湖畔と言った感じの場所だった。

 正面には月明かりに照らされた静かな森の湖。

 見上げれば空を煌めく星々が埋め尽くし、二つの月の浮かんでいる光景にに思わず息を呑む。

「……女?」

 ふと見上げた夜空。

 俺の視線の先――月夜に空から舞い降りてくるのは、天女としか表現のできないような美人さんだった。

 黒髪に紅を基調としたチャイナドレス。

 ご丁寧なことに天女の羽衣までを背にしている少女。

 その瞳は閉じられていて、東洋版の美しき眠り姫という言葉が脳裏をかすめる。

 はたしてその少女は眠りながら空中浮遊をし、ゆっくりゆっくりと湖に向けて降りてきていたのだ。そして、その天女は――


 ――おっぱい丸出しだった

 

 こうして俺はおっぱい丸出しの仙人と出会ったのだった



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