「「戦線」シリーズ:第1部〈処刑戦線エクタデオ〉」
メルメア
第1話 新しい時代と転校生と委員長
2064年春。
VRMMORPGがアニメや漫画、ライトノベルの中だけのものであったのは今はもう昔の話。
世界中のゲーム企業は我先にと開発を競い合い、ゲームとは何ら関係ない企業であっても、この莫大な利益が見込める新たな市場に何らかの形で関わろうと道を模索していた。
そんな中、日本の最大手ゲーム企業である「Magic Games」がこんな発表をする。
「当企業が開発を進めてきたVRMMORPG『6-D WORLD』は最終試験の段階に入りました。この最終試験が成功すれば、2068年には製品化して発売することができます。」
夢にまで見たフィクションの世界がもう手の届くところまで来ている。この発表で「Magic Games」への期待度は一気に高まり、株価も急上昇。世界中の人々が『6-D WORLD』の発売を心待ちにしていた。
人類が新たなステージに踏み出そうとしているこの時代。
茨城県の北浦高校に
「初めまして!神栖零斗と言います。香川から転校してきました。よろしくお願いします!!」
心臓がバクバク言ってる。初対面の人と話すのはさほど得意ではない。29人の新たなクラスメイトの前とあってはなおさらだ。
「よろしく〜」
「よろしくね〜」
拍手の音に混ざってクラスメイトが声を掛けてくれている。
どうやら歓迎してもらえてるみたいだ。良かった良かった。
「はい。神栖君よろしくね。じゃあ次は、明日の日程について話します。」
先生の一言で拍手が止まった。
この北浦高校ではクラス替えがない。つまり、自分を除いた2年5組の29人の生徒は、既にもう1年を共に過ごしているわけだ。
果たしてその輪に入って行けるだろうか。
とりあえず誰に話しかけたらいいんだろう。
部活は何をしようか。
そんなことを考えているうちに、先生の話が終わって放課となった。
「神栖君。よろしく〜。」
さっぱりした髪型で、黒い眼鏡をかけている男子生徒がにこやかに話しかけてきた。背は俺より少し高いくらいだろうか。
「よろしく。えっと…」
「俺は
「そうなんだ。あれ?委員長なんか決めたっけ?」
今日は始業式の後、教室で俺が自己紹介をして先生の話を聞いただけだ。
「あ〜この学校にクラス替えがないのは知ってる?」
俺が頷くと一也が続けた。
「それと一緒で委員長も変わらないんだよ。だから1年の時に委員長になったら3年までずっとなわけ。」
なるほど。納得した。
「神栖君はさぁ。」
「あ、零斗でいいよ。前の学校でもそう呼ばれてたし。」
同世代に君付けされるのはなんか違和感がある。
「オッケー。じゃあ俺も一也でいいから。」
「分かった。一也ね。覚えた。」
俺がそう言うと、一也は笑顔で大きく頷いた。
「じゃあ改めて零斗。この後は予定ある?」
「いや。特にないかな。」
本当なら近くに桜の名所があるらしく、家族で見に行く予定だったのだが、母が急に熱を出してキャンセルになったのだ。
「それは良かった!この後みんなで零斗の歓迎会をしたいんだけどいいかな?」
「それは嬉しいなぁ。ぜひ!!」
さっきの自己紹介の時といい、どうやら温かく迎えられているようだ。
「じゃあ、近くにカラオケがあるからそこに行こう!案内するよ。」
一也はにっこり微笑むと、クラス全体に呼びかけた。
「みんな〜。零斗も行けるそうなのでカラオケ『SING』に集合〜!」
クラスメイトも答える。
「了解!!」
「よーし。歌うぞ〜!」
「バカ!今日は零斗が主役なんだから!!」
どうやら、程よく賑やかでみんな仲の良い理想的なクラスのようだ。
「じゃ、行こっか。」
一也に連れられて、俺は教室を後にした。
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