悪の指導者

長月 音色

第一章 宜しくね

あぁ、今日も世界は平和だ。

当たり前に迎える朝、いつも通りの人通り、笑顔が耐えない子供達ー…

うん、最悪だ。反吐が出る。

何故なら、昨日無惨にも身内や愛する人を殺された者、もしくは人を殺めた者、今日自殺を図ろうという者…など世界は残酷であると感じているだろう。

けれど、大抵のくだらない人間達は今日も幸せを噛み締めながらー…いや、それが当たり前になってスマホを眺め、娯楽に浸り、時間に命が削られているというのに愚かに生きている。

あぁ、くだらない。いっそ、このホームで爆破テロでも起こしてやるか、電車が来れば背中を押してやろうか、ナイフで刺してやろうか…

僕「ははっ…(そんな馬鹿な事はしない。もっと、もっと面白い事をしてやる)」

ニヤリと僕は笑った。

……そうだ、『教師』になろうか。


これが僕の全ての始まりだ。


〜〜〜〜〜

キーンコーンカーンコーン

一限目の始まりのチャイムの音が鳴り響く学校内。

生徒達はザワザワと今日も楽しそうに囲いの中で伸び伸びと過ごしている。

副担任「はーい、皆さん聞いてくださーい。先週話した通り、今日から新しい担任の先生が来て下さいました!」

一部の生徒はすぐに黙って彼女の話を聞き、一部の生徒はだらしない姿勢のまま大声で笑いあっていた。

副担任「……じゃ、じゃあどうぞ!『工藤』先生!」

ガラッッ。

カッカッカッカ…

私は全ての始まりの教室の扉を開け、教壇の前に立ち彼らを見渡した。

そうすると、大声で笑いあっていた女生徒の一人がこちらを向いた。

女生徒A「え〜結構カッコイイじゃん。せんせー!!エロい事好きですかぁ??私いつでもいけますよ!あはははっ」

女生徒B「顔だけで実はDTだったりして(笑笑)なんか陰湿な雰囲気だし」

女生徒達は愉快な様子だった

青春真っ只中だもんなぁ…

男生徒A「…きっしょ」

男生徒B「雄二くん、あいつ締める??」

とコソコソと私を敵対視する男生徒達。

お年頃だからか…これは『教育』が必要だな。

私の傍で副担任の先生が心配そうに見ている。いや、心配そうというよりも女の目だ。まぁ、支障はきたさないだろう。むしろ…

私「やぁ、私は『工藤 響(くどう ひびき)』と言います。教師は初めてで、国語科を担当します。よろしくね」

そして、哀れに微笑んだ。

女生徒B「え、バカカッコいいんですけど。こりゃ女慣れしてるやつじゃん」

女生徒A「……せーんせっ!」

と、僕の目の前まで彼女が近寄ってきた。

女生徒A「先生、彼女はいる??」

と少し小さな声で囁いた。

これは、よろしくないな…教育がなってなさすぎる。まぁいい。

先生「んーと、ここは学校だよね?」

ギロッ。

先程とは違い、鋭い目付きと口元は笑っているが、顔全体笑っていない。

女生徒Aは一瞬、体が凍りつくような悪寒に襲われた。

女生徒A「ひっ……つまんねぇ男!」

そして、彼女は席に戻った。

女生徒B「ぶっ、」

女生徒A「お前笑った?は?」

女生徒B「だって杏奈フラレてんじゃん」

女生徒A「…次言ったら、髪切り刻むから」

女生徒B「っっ!じょ、冗談だよ」

私「(んー…あの二人、少々大変そうだな………)」

と考え込んでいると、前十時の方向から先端が尖った筆箱が私に向かって飛んでくる。

咄嗟に避けた私は、首を傾げた。

私「危なかったなー」

男生徒A「さーせーん、なんかムカつくなって思ってたら手が…」

その子の話を遮って

私「手が滑っちゃったんだよね〜いいよいいよ、『悪気がない』なら。」

そう笑って言った時、生徒達の大半が凍りついた。

私「(あちゃー…ちょっと怖がらせちゃったかな。)」

女委員長「…!(今の…すごい殺気だったわ…さっきの辻本 杏奈といい、今の佐藤 裕二といい…この先生一体…)」

佐藤「…はっはははは!んなわけねぇだろ!ばっかじゃねぇの!?お前まじ『死ねば』??」

ピキっ

私「あぁ…残念です…」

カッカッカッと佐藤君に歩み寄る。

佐藤「あぁ??んだよ、やんのか?教師のくせに??」

男生徒B「雄二君に近寄るな!エセ教師!」

私「悲しいなぁ…私は君達の担任ですよ…」

そして、殴りかかってくる男生徒Bの拳を優しく包み込み、『少し』強く握りしめた。

男生徒B「ったぁ!…ひぃっ!(ボクシング部の僕の拳を!?)」

私「このクラスで暴力は無くそうね。」佐藤「使えねぇなぁ!」

すぐに、ガタンっっっと佐藤が拳をあげ、立ち上がろうとした時、

ガガガガン!!!

女生徒C「きっきゃぁっっ!!!」

佐藤君の席の隣の女子が悲鳴を挙げた

佐藤「っっっっ!!」

女委員長「!!?(正気…??この先生…だって…)」

私は、立ち上がろうとした佐藤君の上から先程投げられた筆箱の中身のハサミやボールペンなどを使い、上から椅子に3箇所、机の上にある彼の手の指の隙間に2箇所差し込んだ。

私「おっと…もう少しで怪我させちゃうところだったよ…大丈夫大丈夫。このクラスのルールを守っていれば打ち解けるよ!…ね?」

と囁いた。

佐藤「っっ!!(なん…だよ…コイツ…早すぎて見えなかった…しかも、この殺気…)」

私はカッカッカッと、教壇へ再び戻った。

私「コホンっ…えーー私は清く、真っ直ぐに自分の道を『善』だと思い、進んでいく生徒に育てたいと思っています。その為に、全力で君達を肯定するよ?

勿論、このクラスのルールは後ろのポスターに従って下さいね。

これは社会に出た時の秩序の準備です!誤れば、『罰』は与えます。では、これからよろしくね。」

そして、新しい私達の工藤先生は教壇で微笑んだ。

悪魔のように…

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