ドラゴンを連れた鍵師は鳥使いと再会する5
「……で、こんなところでなにやってんだよ? トゥーシー」
「見ればわかるじゃないの。ダッサドリを捕まえに来たのよ」
そういいながら、先ほど捕まえたダッサドリの首に縄を結ぶ。先ほどまで暴れていたダッサドリは観念したように大人しくなり、涙目でトゥーシーをみている。
「なに? なに? お姉さん食うの?」
ムメイジンがよだれを流しながら、ダッサドリとトゥーシーを交互に見る。
「ダッサアアア」
しばらくおとなしくしていたはずのダッサドリが羽を広げて暴れだそうとする。
「安心して食べないわよ」
トゥーシーがそういいながらダッサドリの体を撫でるとダッサドリはトゥーシーのほうへ顔を近づけた。
「よしよし、お利口さん」
トゥーシーが顔を撫でると「コッコッコ」と安心しきったような声をあげる。
その様子を見ていたアイシアはキイに「あの人ってもしかして鳥使い?」と尋ねる。
「そうだよ。トゥーシーは鳥使いなんたよ。でも、なぜこんなところでダッサドリ捕まえにきてるんだ? たしか飼ってたよな?」
「最近死んじゃったのよ。だから、新しく調達することになったの」
「だったらこんなところに来なくても確保できるんじゃねえの?」
「まあ、確かに近くの森でも捕まえることはできるわ。でも、ナムルの森のダッサドリは質がいいのよ」
トゥーシーが撫でてやるとダッサドリはすり寄った。
「それに人懐っこい」
キイは先ほどまでのダッサドリの暴れぶりをみると、どちらかというとトゥーシーが無理やり従わせているのではないかと疑いの目でみる。
そのせいか、ダッサドリの顔がどうみても歪んでいるように見える。早く解放しろといっているっぽいのだが、あばれることはなかった。
(ああ、まだ鍵かけっぱなしだな)
キイはダッサドリの胸元に錠前の形をした印をみつめる。それは先ほど襲ってくるダッサドリたちからトゥーシーを守るために使った“鍵魔法”の印だ。印がついているものはある一定の範囲内から出ることができなくなる。それとともに外部からの進入も防ぐことができるというものであった。
(うーん。開けた方がいいかなあ)
“鍵魔法”をかけられたダッサドリに密着しているトゥーシーもその範囲内にいるためにそれ以上動くことができない。かといって解除したならば、ダッサドリは暴れるのかもしれない。またトゥーシーが捕まえようと躍起になり、否応なくキイたちはその手伝いをさせられる。トゥーシーはそんな女だ。
思い付いたら真夜中でもお構い無く人を巻き込む。
ゆえに本名は別なのだが、キイは“
(うーん。えーい! どうにかなるさ)
キイは“錠前”を外すことにした。
だれにも聞こえないように呪文を唱えると錠前の印が消えていく。その直後、ダッサドリがダッサーー!!と叫び声をあげながら暴れだそうとする。しかし、トゥーシーが縄を引っ張るとあっけなくおとなしくなってしまったのだ。
「ありがとう! キイ! おかげで調教しやすくなったわ! はい! お礼」
そういいながら、トゥーシーは懐から小さな巾着袋を取り出してキイに渡す。
「お礼といいたいけど、これはおじさんに預かったものよ」
「父さんが?」
「どうせ首都にいくなら、キイに渡すようにって頼まれたのよ。こっちが私からのお礼」
今度は自分の財布を取り出して、お金を渡す。
「これで足りるかしら。じゃあ、私いくね。バイバイ」
そういいながら、先ほど捕まえたばかりのダッサドリに股がる。
「ダッサアアア!!」
ダッサドリは声をあげるとトゥーシーを乗せたまま走り去っていった。
「なんだったの?」
「パワフルなねえちゃんじゃん」
「ほええ。ついていけませ~ん」
「それよりもキイ。なにをもらったのですか?」
「
ショセイの質問に対して先ほどトゥーシーからもらったお金を見せた。
確かにお金だ。しかも金貨3つ
「おおおお」
だれもが感嘆する。
「それでその袋は?」
アイシアがキイのもう片方の手にもっている巾着袋を指差した。
「こっちも
「なんだよ。父さんのやつ。そんなに信頼してねえのかよ。確かに仕送りしてないけどさ」
と愚痴りながら、巾着袋をあける。
案の定、お金だった。お金ときれいに畳まれた手紙が入っている。
「手紙?」
「どうせ下らねえこと書いてあるんだろう」
キイは手紙を取り出すと巾着袋と金貨をアイシアに預けと、丁寧にたたまれた紙をひろげていく。
「けっこう大きいですね。文字がぎっしりかいてあるんですか?」
ショセイが尋ねるとキイは首を横にふりながら、手紙を見せた。
するとそこにはデカデカと
“金貨十枚! 父より”
と書かれているだけだったのだ。
「キイのお父さんって豪快な人?」
アイシアが思わず尋ねると、キイは困惑の色を浮かべた。
「豪快な人というか……うーん」
ぐるるるる
「腹減った~~」
ムメイジンの腹の虫が盛大になり始める。
「せっかくお金ゲットしたから、街に戻って飯にしようぜ」
キイは手紙を再び畳む。
「そうですね。さすがの僕もお腹すきました」
そういうわけでキイたちはナムルの森をあとにした。
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