ドラゴンを連れた鍵師は鳥使いと再会する3
「鳥使いってなんだ?」
ムメイジンが率直に質問をすると、キイたちはきょとんとした顔でみるもすぐに彼がこの世界の人間ではないことに気づく。
「鳥使いというのは言葉の通り、鳥を扱う人間のことよ」
「鳥を扱う? どんなふうに?」
ムメイジンは好奇心丸出しにアイシアの顔を見ていたのだが、彼女は困惑したまま視線を上へと向けた。
「アイシアもそれぐらいしかわかっていないようですね」
「しょうがないじゃないの。私も直接みたことないもの。だいたい鳥使いなんて山のなかに住んでいてめったに降りてこないというし」
「たしかにそうですね。ぼくもみたことありませんし、噂程度です」
そういいながら、ショセイは本をめくっている。
「わっわたしもうっ噂程度ですう。なんか、その~実態がないというか~」
ペルセレムがおろおろと答える。
「なぞよね」
「なぞです」
「なっなぞなんですう」
「なぞなぞわーい」
最後にリデルが楽しそうに翼を羽ばたかせる。
なぜか真剣に鳥使いについて考えを巡らせる三人の姿にムメイジンはおもわず、「結局わからないじゃないかよ!」と突っ込みをいれる。
「ぶっ、あははははは!」
すると、いつになく静かだったキイが堰を切ったように笑いだしたのだ。
どうしたのだろうかとムメイジンたちがキイのほうを見る。
「悪い。悪い。ついおかしくてさ」
「はあ? あんたの笑いのつばが一番なぞよ」
アイシアは目を細めながらいう。
「アイシアはともかく」
「はあ? なによ。その言い方」
アイシアはむっとする。
「ショセイが知らないとは以外だったなあ」
「僕は万能じゃありませんよ。知らないことだってやまほどあります。それに鳥使いについてはくわしく本にかかれてませんし」
そういいながら、本をめくっているのだが、どうも「鳥使い」のことは取り上げているページはないらしい。
「まあ、本に乗るようなものでもないからねえ。単純に鳥を用いて稲作なんかを行うことが彼らの役割だし、冒険者が扱うことはめったにないもんなあ」
たまにそういうやつもいるんだけどねと最後に付け加えながら、キイは懐かしそうな顔をする。
「稲作ってどんな感じに?」
ムメイジンが尋ねる。
「そうだなあ。せっかく育てた稲作を奪われないように監視したり、ときには撃退したりすることがおもとしてる。あとは収穫したものを運ぶなどを鳥に指示して働かせるんだ」
「へえ、そうなんだ」
「あとは馬車のように扱う場合もある」
「キイって詳しいのね。実はキイが鳥使いだったりするの?」
「いやいや、俺には無理。ただ俺のうまれ故郷が農業している家が多かったからさ。鳥使いもいただけさ」
「キイの故郷には何人もいるの? っていうかキイの故郷って山のなか?」
「ああ、ウォーリアー山のガンロック村だ」
「ウォーリアー山ってアメシスト王国との国境にある山よね」
「そうだよ。すぐ向こうがアメシスト王国」
「アメシスト王国ううう!」
その言葉にいち早く反応したペルセレムはいままでにない歓喜の声をあげた。いつもボソボソとしゃべりがちな彼女の声にだれもが驚いたのはいうまでもない。
自分に視線が集中したことに気づいたペルセレムは「ひえええ」となぞの悲鳴をあげながら木陰に隠れてしまった。
「すみません。すみません」
なぜか謝るペルセレム。
「ペルセレム。こっちおいで、べつに怒ってるわけじゃないからね」
というか怒る必要もないよなあと思いながらもアイシアはペルセレムのほうへと近づいて彼女を宥める。
ようやく落ち着いた彼女とともにパーティーに戻った。
「話は戻すけど、何人もいるわけじゃない。少なくとも俺の知っているのはひとりだけだぞ」
そういいながら、キイは困惑の表情を浮かべながら後頭部をなでる。
「どんなひと?」
アイシアが尋ねると、キイはなぜかため息をつく。
「うーん。なんつうか、変な姉ちゃん」
その言葉をつげた直後に突然鳥の羽ばたく音が静かだった森にこだました。
なんだろうと音のしたほうをみると、一匹のダッサドリが「ダッサ!ダッサ!」と鳴き声をあげながらこちらへと突進してくるではないか。
「なっ、なんだ!?」
「とにかく、逃げたほうがいいぞおおお!」
キイの叫び声と同時にダッサドリに道をつくるかのように他方へと散っていった。
「まてえええ! まちなさーい」
ダッサドリが通過するのと同時にその背後から女性の怒鳴り声が響いたのである。
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